表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大食の侵襲 -異世界からの肉食獣-  作者: 林海
第一章 相馬県立鷹ケ楸高校

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

111/278

第110話 暗闇のコミュニケーション


 ここで僕は、思考の尻尾をしっかり掴まえていた。

 蒼貂熊はここを襲ってはこない。そして僕たち、蒼貂熊は逃げたと判断したら地域防災センターに移動することになる。おそらくは、その移動経路ですら襲ってはこない。

 だけど、僕たちが地域防災センターに着いた瞬間、いきなり襲ってきて好きほど喰い散らかすつもりなんだ。なんか、この考えは腑に落ちて、これはもう間違いないという気がした。


「ごめん。作戦を変える。僕たちは、地域防災センターまで逃げない」

 僕の宣言に、暗闇の中でみんなが息を呑むのがわかった。

「どういうことだよ。逃げて、地域防災センターでみんなと合流するのが作戦の基本じゃなかったのか?」

 そう僕に聞いたのは吹上だ。びっくりしてだろうけど、声が大きい。誰かが吹上の背中かどこかを叩いて、声を低めさせた。


「説明する。おそらく蒼貂熊は保健室(ここ)を襲ってはこないと思った。ここに僕たちがいることはモロバレだけどね。そして、地域防災センターまでの移動途中でも襲われない」

 そこまで言ったところで、再び複数の息を呑む気配。

 全員ではないけれど、僕の考え、何人かにはわかったらしい。


「蒼貂熊は、地域防災センターまで私たちを泳がせるってこと?

 それが並榎の考えた蒼貂熊のやりたいことだと?」

 宮原の声は、嫌悪と疲労に満ちていた。

 わかるよ。

 僕だって、執念深い蒼貂熊の考えを読むのにも、読んだ考えに打ちのめされるのにも、もう疲労感しか感じない。


「ああ。

 蒼貂熊の一番の目的は、ひたすらに喰うことだろ。その喰うという欲望を最大限に開放しようと思ったら、そうするのが一番いいってことになるだろ?」

 僕の答えに、宮原はさらに聞いてきた。

「だけど、地域防災センターの大きな搬送口はシャッターで守られていて、その横の小さなアルミのドアで人間は出入りするんだって言っていたよね。そこからは蒼貂熊は絶対に入れないから、だから地域防災センターに逃げるんだって。

 だから、上手く地域防災センターまで逃げられたら、私たちの勝ちなんじゃないの?」

「それはそうなんだよ。だけど……」

 僕そうが言いかけるのを、奥が引き取った。


「よほど上手く逃げられないと、俺たち自身が人質になるってことだな?

 1年生と3年生の目の前で、俺たちの何人かが喰い散らかされたあとで。

 地域防災センターに小さなドアから入るとなれば、全員同時には入れない。そこはどうしてもボトルネックのピンポイントになる。そこで蒼貂熊に立ち塞がれたら、いいようにやられちまうし、塞がれるタイミングによっては全滅だ、と」

「ああ。赤羽の悲劇が繰り返されるんだ。坂本の言うとおりだ。僕たちは、その悲劇を繰り返してはならない」

 僕の声が暗闇に消えていく。だけど、その暗闇には仲間がいるんだ。そう、決して遠くはないところにね。


「蒼貂熊の嗅覚は鋭い。

 私たちを放っておいて、ニオイを辿って自分だけ地域防災センターに走るってことは考えられないの?」

 そう聞いたのは北本だ。


「可能性は捨てきれない。だけど、蒼貂熊は賢い。みんなが走り去った場所が、ここより守りが脆弱ってことはありえないだろ。そこは考えるんじゃないかな。で、バリケードに対して、蒼貂熊も学習してきた。つまり、行った先で城門を開けさせるには道具が必要だ。そして俺たちはその道具になりうるんだ」

 坂本が北本に答え、暗闇の中でみんなの納得の気配がした。

第111話 総力戦

に続きます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ