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大食の侵襲 -異世界からの肉食獣-  作者: 林海
第一章 相馬県立鷹ケ楸高校

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第108話 日没


 坂本は続ける。

「結局のところ、まとめるならば、蒼貂熊の並榎に対して喰うという執着、並榎のそうさせなかった気力、そしてその硬直状態の中での俺の漁夫の利!」

 ったく、男子ってやつは……。

 それは違うからな、坂本。オマエの勇気と身のこなしに僕は助けられたんだ。それを漁夫の利なんて言葉で片付けるのは間違っている。 

 でも、この坂本の言葉で、暗がりの中でもみんなの雰囲気は少し明るくなった気がした。       


「で、これからどうするの?

 もう日は沈んだ。外は暗い。逃げた蒼貂熊は退散しているはずがない。残り1頭かもしれないけど、虎視眈々とここをを狙っているはずだよね」

 佐野の言葉に、改めて保健室の中の暗さに気がつく。

 電気は点ければ点けられる。だけど、それは僕たちがここにいることを、蒼貂熊に公表してしまうようものだ。相変わらず息を潜め、暗さがどんどん増していく中、小声で話すしかない。


「1年生たち、3年の連中、全員地域防災センターまで走れたかな?」

 宮原の言葉に、坂本が答える。

「行けたんじゃないかな。みんなそこで無事だと信じるしかない。たどりつけさえすれば、文字どおり生活できるだけの基盤があるんだから。

 あと、救急車は来たみたいだから、負傷者はみんな病院に行けただろうな。俺たちの窮状はそこからあちこちに伝わっているはずだ。生徒だけでなく、職員室もやられているから救助は絶対に来る」

「そうだね。でも……」

 と、言いにくそうに口を開いたのは北本だ。


「でも、なに?」

「地域防災センターに助けは来るでしょ。でも、私たちが全滅してしまったと思われたら、ここは後回しにされちゃうよ。警察とか来てくれるのが3日後とか、普通にあり得るんですけど」

 北本の言葉に、誰も反応しない。

 きっと、全員でうすうす怯えていたことを、北本ははっきりと突きつけちゃったんだ。


 僕、ベッドから上半身を起こし、足は床に下ろした。めまいは……、ない。

 全身、どこもかしこも漏れなくなく痛い。手打ちであっても、ドア越しであっても、蒼貂熊に殴られ続けたんだから無理もない。きっと物理部の行田がいたら、僕がぺちゃんこにされなかった理由を教えてくれていたに違いない。


 とはいえ、身体は動きそうだ。つまり、もう少し戦えそうってことだ。そしてまだ戦えるなら、みんなに伝えなきゃいけないことがある。遺言としてではなく、戦いのリーダーとしてだ。

「北本。それは考えちゃダメだ。助けが来るか来ないかは、ね。来てくれると信じて、でもそれに頼らずにこれからどうするか、なにができるかを考えよう。

 僕は戦うよ。残り1頭、だけどソレ、絶対とんでもない奴だしね」

「神頼みはしても、神に依存はしないってことだね。よくわかるよ。

 で、その蒼貂熊、とんでもない奴なの?」

 そう聞き返してきたのは宮原だ。


「僕たちの学校を襲ってきた蒼貂熊の群れのボスだからな。一番強いヤツなのは間違いないよ。それに今の話だと、みんなの攻撃に逃げたんだよな?

 これ、今までのどの個体より、明らかに頭が良いってことなんじゃないか?

 力押しに押してくるからそこに付け込めたってパターンもあったけど、この個体にはその作戦は通用しないんじゃないかな?

 ということは、逃げた真意を推測し違えると、とんでもないことになりそうな気がする」

 僕の言葉に、みんな息を呑んだ気配がした。

第109話 失敗から学ぶ

に続きます。

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