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大食の侵襲 -異世界からの肉食獣-  作者: 林海
第一章 相馬県立鷹ケ楸高校

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第100話 生きている間は戦い続ける


 僕は、こんなときにはあまりに大きい弓を諦めて、頭を低くして蒼貂熊に向けて2歩走った。もちろん、弓は蒼貂熊の顔に向けて高く放っている。こんな場合だからこそ、蒼貂熊が速度の違う2つのものを見分けられないという可能性に掛けたんだ。


 逃げ場は1つしかない。女子トイレだ。トイレの出入り口の幅は1.5mほどしかない。蒼貂熊の筋肉質の巨大な下半身は、この幅を通り抜けられないはずだ。

 僕は思い切り姿勢を低くして、ヘッドスライディングで蒼貂熊の脇を通り抜けた。床に叩きつけられた全身に加えて折れた肋骨が激しい痛みを訴えたけど、そのまま一回転して立ち上がって、壁を蹴りトイレの奥に駆け込む。


 背中に衝撃が走った。

 息ができなくなるほど強い。小学生のころ、思い切り高く漕いだブランコから落ちて背中を強打したときのことを一瞬思い出した。

 走り出す体勢だった僕は、そのまま空を飛んで女子トイレの奥の個室の扉まで吹き飛ばされていた。扉の板がクッションになってくれなかったら、再びどこかを骨折していてもおかしくなかった。


 こんなときだとはいえ、女子トイレに入る抵抗感がなかったわけじゃない。だけど、そんなものは物理的に吹き飛ばされちゃったってことだ。

 さっきのヘッドスライディングのときとは比べ物にならないほどの衝撃で床に叩きつけられた僕は、あまりの痛みに気絶も許されなかった。

 口の中を切ったのか、唾が鉄臭い。それを吐き出して、奥の校庭側の窓に飛びつく。だけど……。


 くそっ、さすがは女子トイレだ。

 窓には鉄格子が嵌まっていて、僕の力じゃびくともしない。ここから逃げるのは無理だ。トイレの入口からは、蒼貂熊の長いアナコンダのような腕がのたうっている。

 半ばパニックになった僕はあちこちに視線を走らせ、ロッカーに飛びつく。女子トイレに入ったのは初めてだけど、男子トイレと同じ清掃道具があるはずだ。


 生きている間は戦う。戦い続ける。

 鴻巣、罪の意識からでなくても人は戦えるんだからな。僕は自分の生命を投げ出したりはしない。

 それに、女子トイレ(ここ)で死にたくはないな。あとで変態だっただなんて言われたくはない。


 ロッカーから長柄のブラシを取り出して、僕は再びトイレの入口を見た。

 蒼貂熊、下半身がトイレの入口に挟まっている。だけど、構わずこちらに来ようと身を捩っていた。口から生えた牙は何度も僕に向かって伸び、巨大なアナコンダのような腕はむやみやたらと振り回されていて、でも、あとわずかなところで僕には届いていない。だけど、その腕は洗面の水栓の1つを吹き飛ばし、水柱を天井まで吹き上がらせた。その圧倒的な力は、僕を小動物のようなパニックに落とし込んでいた。


 ブラシを構えて、敵わぬまでもこちらに伸びた腕を打ち落とそうとして……。

 僕は、ぐらっとめまいを感じた。そして、なぜか呼吸がとても楽なことにも気がついた。


 ブラシを振って戦えなかったことで、逆に僕は少しだけだけど落ち着いた。身体を動かし始めてしまったら、考えなんか浮かばないところだった。怯えで狭まっていた僕の視界がようやく広がってきて、床にのたくっているベルトを見ることができた。そして、血溜まりも。

 あ、僕の背中から血が流れ出しているんだ。気がついたら、上靴の中には血が溜まっていて、足を動かすたびに水音がした。


 僕は歯を食いしばって、めまいに耐えた。

 突然、視界がカラーから白黒になった。ヤバい。出血量が多すぎるのかもしれない。

 僕はブラシの柄を杖代わりにして、膝をつく。

 血圧が戻ったためか、視界が再びカラーに戻った。


第101話 死ぬ前提はなし

に続きます。


なお、18話に校舎の構造があります。ご参考までに。

https://ncode.syosetu.com/n3896jp/18/

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