099 し、死ぬかと思った……
「た……倒した……」
俺は声を漏らす。
場の雰囲気が、緊張から安堵へと変わる。
「討伐成功だ!!」
ツユが、嬉々として告げた。
「やったぁーー♡」
メロエ師匠が、ロイの両手を掴んで飛び跳ねる。
「ちょ、は、離せメロエ、おい……」
少し顔を赤らめてまんざらでも無さそうなロイが、申し訳程度の反抗を見せていた。
「ふぅ……危なかったぜ結構……」
「し、死ぬかと思った……」
俺とカゲトは、互いに背中を合わせてその場に座り込む。
「ミツルちゃんカゲトちゃん! 良い活躍だったわよ!」
オネエさんがやってくると、俺達に抱きついた。
「ありがとうございま……っ……く、苦しい……」
「は……離してくれ……」
「あら、ごめんなさい」
オネエさんは慌てて離れる。
「怪我人無しとは、最高だな!」
ツユが俺とカゲトの間に入って、肩を組んできた。
「そ、そうだね……」
「照れんなってミツル」
「そういうカゲトだって」
カゲトは鼻を擦って笑う。
「リメアも来い、私が褒めてやる…………リメア?」
ツユがリメアに問いかける。
しかしリメアは、神妙な面持ちでダンジョンの奥を眺めていた。
「あっちからちょっとだけ、神聖力を感じる……」
そのままリメアは、吸い込まれるように奥へと進んでゆく。
「おい、ちょっと待てよ」
懐中電灯を手にしたロイが、リメアの隣に並んだ。
二人を先頭に、奥へと進む。
少し歩いたところで、二つの魔法陣を発見した。
ここが突き当たりのようだ。
それより奥に道はない。
「私としたことがつい忘れていた。召喚獣がいれば、召喚の魔法陣もあるのが当たり前か。すまない。ありがとうリメア」
ツユが魔法陣消去のポーションを持って言うが。
「ツユちゃん、待って」
リメアに引き止められた。
ただならぬ雰囲気に、ツユは足を留める。
リメアは魔法陣に近づくと、屈んでそれを覗き込む。
「神聖術階位六・神聖解析」
リメアが唱えた。
二つの魔法陣が淡く輝き出す。
「やっぱり……」
「ね、ねぇ、やっぱりって、何?」
俺は恐る恐る尋ねる。
「この国に来たのは、間違って無かったんだよ」
リメアが続ける。
魔法陣は神聖な光に包まれると、消滅した。
「ポーション以外の方法で魔法陣を消去する魔法なんて、どこで覚えたのだ」
ツユが驚愕の声を上げた。
「ううん、違うよ、ツユちゃん。これは魔法じゃない」
リメアはゆっくりと告げる。
「これは神聖術。そしてこの魔法陣も、神聖術。さっきの召喚獣が使ってた身体制御の魔法にも、神聖力で手が加えられてた」
リメアは続ける。
「皆、覚えてる? アドベルンのダンジョンで、召喚獣と戦った時の事」
…………もちろん覚えてる。
あの日、あの召喚獣が創り出した魔法陣から、カゲトが飛び出してきたんだ。
「俺が"こっち"に来た時のか?」
カゲトの問いかけに、リメアが頷く。
「うん。あの時の召喚獣は、地球とこっちを繋げた。神聖力こそ漏れていなかったけれど、何かその関連があったのは確かなんだ」
リメアは真剣な面持ちで続けた。
「今回の魔法陣は、アンデッドを吸い込む"入口"だった。接続が切れてたから、出口は特定できなかったけど」
リメアはもう片方の魔法陣を指差す。
「こっちは出口の魔法陣。これも入口は特定できなかった。でもどっちも、神聖力が漏れてた」
「ち、ちょっと待って」
オネエさんが話を遮った。
「えっと、神聖術って、一体なんなのかしら? 地球って、どこの話?」
「俺達もさっぱりだ」
ロイとメロエ師匠も、肩をすくめる。
「そうだね。皆にはちゃんと話さないといけない」
リメアはこちらを振り向き、顔を上げて笑顔を作った。
「本当の、事を──」




