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098 異変

 その後もどんどん湧いて出る魔物を駆除しながら、先へ進んで行った。


「ミツル。悪いが、脚力増強の支援魔法を常時発動で頼めるか?」

「え、わかった」


 俺はツユに頼まれ、脚力増強の支援魔法をかけた。


「ありがとう。何せ今回は()()だからな」


 ツユが自身のバッグを指さす。

 ……確かに、ただでさえ大きなバッグがより一層膨れ上がってるな。

 しかしまあよく詰めたものだ。

 このダンジョンの魔物はよく物を落とす。

 さっきのネズミの双剣とか、バンシーモドキの涙とか、他にも色々。

 美味しいダンジョンと言ったところだろうか。

 とにかくドロップアイテムの数が凄い。


「ツユ、ちょっと持とうか?」


 見かねた俺はツユに問う。


「大丈夫だ。このくらいなら」


 このくらいって言ってもなぁ。

 体の半分くらいの大きさなんだけど。


「無理すんなよ?」

「あぁ、それよりお主は前を見ていてくれ。このパーティー唯一の防衛職なのだから」

「へいへい」


 ツユがなんだか辛そうなので、少し陣形を変えて歩く。

 オネエさんとカゲトが先頭、回復役のロイとリメア、ツユが中間、そして俺とメロエ師匠が最後尾である。


「ツユちゃん? 本当に持とっか?」

「大丈夫だと言っているだろう」


 ちょっと持たせてくれたって良いのに。

 全く変なところで意地っ張りなんだから。


「ヒヒィィィィィィン!!!」


 突然、前方から二足歩行の馬頭が飛び出す。


「俺がやる。喰らえ! スラァァァァッシュ──!」


 馬頭の魔物は、首を刎ねられ瞬殺された。


「やるわね」

「柔道やってたおかげ、だな」


 ニカッって笑ってるけどもさ、柔道マジで関係ないと思うぞ。

 てか久々に聞いたな、カゲトの柔道ボケ。


「ん? なんか落としたぞこいつ」


 カゲトの呟きを聞きつけ、ツユが飛び出す。


「おお! これは……尻尾か!」


 馬の尻尾なんか持って何に使うねん。


「てかもう入らないんじゃない?」

「いや、こうすれば……入っ……るっ!」


 おぉ……無理やり詰めた……。


「よし……行くぞ……」

「お、おいちょっとお前、無理すんなよ」


 今度はロイがツユに言った。


「無理などしていない……!」

「でもぉ、ミツル君の支援魔法かかってて、それでしょぉ?」


 メロエ師匠が心配そうにツユを見る。

 ……脚がプルプルしてて子鹿みたいだな、今のツユ。


「ツユちゃん。やっぱり分けて」

「だ、だが……」

「拒否権は無いわよ。ほら、皆で持つから」


 オネエさんの命令に、ツユは渋々中身を出した。


「お、おぉ……」

「この数一人で持ってたのかよ……」


 俺とカゲトは驚嘆の声を上げた。

 てか、そもそもどうやって入れてたんだこれ。

 俺達はそれぞれ、持てる量を自身の物入れに入れた。


「七分の一でこれ……?」

「結構重いね……」


 俺とリメアは顔を見合わせる。


「だろう? やはり私が……」

「だーめ! ツユちゃんにはいつもお世話になってるんだから、たまには私達にも手伝わせて!」

「そうさ、助け合いは大事だよ」

「俺達を頼らないなんて水臭いぜ」

「お主ら……」


 ツユの顔が少し緩む。


「和んでる所悪いけど、皆戦闘準備は良い? 前に何かいるわ」


 オネエさんに言われ、皆それぞれ武器を構える。


「グルルルル……」


 低い唸り声が響いてくる。

 少しずつ近づくシルエットは、やがて懐中電灯にあてられ、姿を顕にした。


「召喚獣……!」


 ツユの声。

 前方には、あの時見た召喚獣とおそらく同じ種の魔物が対峙していた。


「グルルルルルルルル……」


 でも、何か様子がおかしい。


「何……? なんだか、魔力の流れがおかしい……」


 オネエさんも気づいたようだ。


「やっぱりそうですか……? 僕もそう思ってました」


 俺はオネエさんの隣に立った。

 どうやらこの異変を感じる事ができているのは、魔法持久力の高い俺とオネエさんだけらしい。


「とりあえず俺が……」

「待って、カゲトちゃん」


 オネエさんの静止に、カゲトが動きを止めた。

 前方の召喚獣がさらに近づき、徐々に詳細が明らかになる。

 ──見た目は同じ、だが、何かが違う。


「グルルルル……グルァァァァァァ!!!」


 そいつが大きな雄叫びを上げると、何かの力を纏ったような気配がした。


「魔力……じゃないの……?」

「あれは……! 神聖力だよ! 二人とも気をつけて!」


 背後からリメアの声がする。

 召喚獣は、まるで人の様に立ち上がった。


「なんだあれは……! 召喚獣が立ち上がるなど……聞いた事がないぞ……!」


 ツユの怯える様な、覚悟を感じる様な声。

 張り詰める空気、僅かな静寂。


「グラァァアアア!!!」


 先手を仕掛けたのは、召喚獣の方だった。

 鋭い爪をギラつかせ、全速力でこちらに向かってくる。


「私が! 滅殺──闘、拳!!」


 オネエさんのスキルは直撃したものの。


「耐えた……!?」


 腕をクロスし、その衝撃に耐える召喚獣。

 スキルの反動で大きくのけ反るオネエさんに、召喚獣の一撃が迫る。


「プロテクト!!!」


 間一髪、ツユの魔法が攻撃を防いだ。

 しかし、プロテクトは一撃で粉砕してしまう。


「一撃が重すぎる!! 私では防ぎきれない!!!」


 ツユが全員にプロテクトを張りながら、そう嘆いた。


「グルァァァァアア!!!」


 召喚獣は間髪入れず、オネエさんに二度目の斬撃を放とうとする。


「喰らぇぇぇえええ!!」


 ──キュルキュルキュルキュル!!!


「グラァァ!?」


 間一髪、リメアのマジックボールが命中し、召喚獣は吹っ飛んだ。


「メロエ、次、行くよ!!」

「はいどんど〜ん」


 リメアがマジックボールの次弾を生成し、メロエ師匠が属性を付与する。


「グルルルルル……グルァァアア!!」


 怒り狂った召喚獣が標的をリメアへと変える。


「まずい! 待ちなさい……」


 大きく踏み込み、オネエさんの横をすり抜けると、召喚獣は一瞬でリメアの懐へ──。


「リメアちゃん!」

「させねぇよ!!」


 誰もがリメアの大怪我を覚悟したが、その攻撃は間に割り込んだカゲトによって防がれた。

 左手にはめた盾が、爪と衝突し嫌な音を立てる。


「ぐっ……強ぇな……」


 受け止めたは良いものの、カゲトよりも先に盾が割れてしまいそうだ。

 俺は杖の先にありったけの魔力を込める。


「うおりゃぁぁ!!」


 俺の放ったマジックボールは、狙い通り召喚獣のこめかみに命中。


「グラァ!?」


 少しのけ反ると、再び標的を変え、俺に迫ってきた。


「ったく……脳筋め……!」


 俺は、対象をコロコロ変える召喚獣に対し吐き捨てる様に言うと、杖を構えた。


「グラァァ!!」


 最初の一撃で、プロテクトが粉砕する。


「ウルァァ!!」


 隙のない動きで、反対の腕が飛んできた。


「くっ……!」


 杖に魔力を循環させ、スラッシュのスキルで受け止める。


「グラァァ!!」


 再びもう片側の腕が振り下ろされるが、杖を水平にして受け止めた。

 召喚獣の両爪と、杖とか擦れる音。


「ロイちゃん! デバフは!?」


 オネエさんがこちらに駆けながら、言った。


「もうかけてる!! 奴が速すぎるんだ!!」


 ロイの苦しそうな表情が返ってくる。


「滅殺闘拳!!」


 俺の相手で手一杯だった召喚獣を、オネエさんが吹き飛ばす。


「……できた! 皆、道を開けろ!」


 ツユの掛け声に、皆召喚獣から離れる。

 ツユと召喚獣の間に、一直線の隙間が生まれた。


「いけぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」


 ツユの右腕から、マジックアイテムが投擲される。

 支援魔法によって強化された腕から、豪速球で放たれたそれは。


「ギャッッ!!!?」


 召喚獣に命中すると、ドロドロと性質を変えた。

 とりもちのように地面と接着すると、召喚獣の身動きを封じる。


「かかれぇぇぇぇぇぇ!!」


 ツユの一声と同時、皆で一斉に攻撃を仕掛けた。


「キャン……!」


 ──シュゥゥゥゥゥ……。


 最後の一撃を与えたのは、カゲトだった。

 召喚獣は黒い煙となって消滅。

 ドロップアイテムは無く、その場にはただ僅かな緊張感だけが残っていた。

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