097 ドロップアイテム
それからも俺達は、現れる魔物を狩っていった。
「マジックボール!!」
「ヂュー………」
正面から飛び出してきた、両手に双剣を携えるネズミは、俺の魔法によって消滅する。
「ふぅ……」
鍛えた成果もあって、雑魚ならなんとか応戦できるようになった。
しかしまさか、俺のマジックボールで魔物が倒せるとは……。
いや、一回だけ倒せた事あったっけか。確かスケルトン。
……あのスケルトン、どんだけ弱かったんだよ。
「お、ドロップアイテムだぞ! 良くやったミツル!」
ツユが嬉々として、ネズミの消滅地点へ駆け出す。
「双剣か……。刃こぼれはしているが、まだ十分使えるな。売れるぞこれは……!」
無邪気に喜ぶツユも珍しいな。
「ミツルミツル」
と、リメアに呼びかけられる。
「ん、どうした?」
「あのネズミってさ、ベルンの地下遺跡にも居たよね」
「そうだね」
「こっちに二足歩行の獣型が増えて、あっちでアンデッドが大量発生したって、なんか関連がありそうじゃない?」
「確かに、言われてみれば……」
「いや、偶然だと思うぞ」
ツユは双剣をバッグにしまうと、続けた。
「すぐ隣の国同士なのだから、魔物の生態系も似ているに決まっておるだろう」
まぁ、そうかもしれないけども。
「なんだったかしら? 貴方達って、何かの事件を調べにディテクに来たんだったわよね」
「はい。ゾンビみたいな男を追っているんですが……」
俺がオネエさんの問いに答えていると。
「!! 皆避けろ!!」
ツユが突然声を張り上げた。
皆、その声に応じて左右に回避する。
直後、大きな水の塊が横切った。
「水魔法……! よく気付いたわね、ツユちゃん」
「水面知覚のスキルに反応があった」
全員、水の飛んできた方向を見る。
ロイの懐中電灯によって、敵の正体が露わになる。
「バンシーモドキ……!」
ロイが静かに呟いた。
長い髪に痩せこけた頬。
赤い瞳からは、絶えず涙を流している。
足元にはだらだらと水が滴り、水たまりを形成していた。
「ギャァァアアアアアアアアア!!!!」
俺達に気づくや否や、バンシーモドキと呼ばれた魔物は、耳を劈く金切り声を上げる。
「まずい! 散弾が飛んでくるぞ!」
ツユが叫ぶと同時、自身の前方にプロテクトが展開される。
どうやらツユが掛けてくれたようだ。
よくみると全員に展開しているのがわかる。
バンシーモドキの周囲に魔法陣が幾つも展開されると、そこからマシンガンのように水弾が放たれた。
「うおっ危なっ!」
俺は左方向に回避するが、すぐに別の水弾が正面からやってきた。
咄嗟にマジックボールを生成し放つと、それを相殺する。
「おお……俺、エイム良すぎ……」
俺は僅かな間自身に感心するが、すぐに我に帰る。
あれだけの数が放たれていた水弾の内、俺に向かってきたのは僅か二発。
ということは……。
俺はすぐさま前方に目を向ける。ツユとオネエさんが集中砲火を喰らっていたとしたら、かなり危ない。
「ふぅ……三つも当たっちゃったわ」
オネエさんは自身の前方に張られたプロテクトを眺めながら言う。
「凄いな。三十発はお主の方に向かったぞ」
さ……さんじゅっぱつ!?
「何言ってんのようツユちゃん。そっちは一発も当たってないじゃない」
「私の方はお主よりも少なかったからな」
「でも二十くらいはいってたんじゃない?」
「水面知覚スキルの応用だな。水を知覚したら、最小限の動きで避ける。お主のように、跳び回って逃げるのは私には無理だ」
ツユは二十発……。
凄い。レベルが違う。
流石はダンジョンスペシャリスト&つよつよ武闘家コンビだ。
「ウウウ…………ウアアアアア゛ア゛ア゛ア゛!!!」
避けられた挙句余裕の表情で会話をしているのがよほど頭にきたのか、バンシーモドキが咆哮をあげる。
「うるさいぞ!!」
ツユはそんな事お構いなしに、マジックアイテムを投擲した。
「ア゛ア゛!?」
バンシーモドキの正面で弾けると、その眼球を覆うように砂が舞う。
「ナイスよツユちゃん!!」
それとほぼ同時、オネエさんがバンシーモドキめがけて走りだした。
右手拳には魔力が込められている。
俺はオネエさんの十八番が出る事を察して、さりげなく腕力増強の支援魔法をかけた。
「いつまでも泣いているんじゃないわよ! 奥義、滅殺闘拳! とぉりゃぁぁぁぁぁぁ!!!」
──バァァァァァァン!!!
凄まじい音を立てて拳が命中。
バンシーモドキは大きく吹っ飛ばされ、接地した場所で黒い煙となり消滅した。
「やったな」
「いい連携ね!」
ツユとオネエさんがハイタッチを交わす。
「し、瞬殺……」
もはや敵が可哀想だ。
「やっぱ凄ぇなぁ、あの二人は」
カゲトも感心の声を漏らしている。
「なかなか厄介な敵なのだがな。お主がいて助かった」
「何言ってんのよ。これはツユちゃんのおかげ」
二人して謙遜し合っているが、俺からしてみれば二人とも超心強いってもんだ。
「強ぉい、もしかして、二人だけで攻略できちゃったりしてぇ?」
「俺も同意。正直ダンジョン内じゃ、この二人には勝てないな」
メロエ師匠とロイが言った。
「ここらでやっておくか。──空間把握」
ツユが唱えると、魔力の波動が放たれる。
「お、終着点はもうすぐのようだ。皆、あと少しだぞ、気張れ!」
ツユの鼓舞と共に、俺達はさらに奥へと向かった。




