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087 特訓

 その日から俺達の特訓は始まった。


「あぁ、食った食った!」

「美味しかったなぁ」

「久々にいっぱい食べちゃった!」

「この国の料理もなかなかのものだった」


 俺達は、それぞれ感想を述べる。


「良かったわ、美味しかったみたいで」

「これでやっとお前らの腹の虫がおさまる訳だ」

「みんな、すごぉいしあわせそぉに食べてたねぇ」

「本当にありがとう、この恩は何処かで必ず」

「ツユちゃんたら、大袈裟ね。同業者なんだから、何かあったら頼って良いのよ」


 オネエさんの頼もしい一言。


「マジで!? じゃあ俺、おかわりしても良いか!?」

「お前はちょっと自重しろ」


 俺は軽くカゲトの頭を叩く。


「そうだよカゲト! 慎みを持つ事も大事なんだからね?」


 そう言うリメアが一番遠慮なくいっぱい食べてたけどね。


「本当に貴方達、楽しいわね。見てて飽きないわ」


 オネエさんが頬杖をつきながら言ってくるが、これは褒められているととって良いのだろうか。


「皆、食い終わったか? では、外に出るぞ! 特訓だ!」

「え、でもツユちゃん、食べたばっかりで走ったらお腹痛くなっちゃう」

「だから、魔法からやるぞ」

「うげ、魔法かよぉ。俺、帰っても良いか?」

「ダメだ。魔法に関してはお主が一番訓練すべきだろうが」

「うへぇぇ……」


 項垂れるカゲトを連れ、俺達七人は町の外へと向かう──。



 ***



「良ぃい? ミツルくん。属性付与の魔法はねぇ、誰かの魔法に付与して、時と場合に合わせた攻撃ができるよぉに援助してあげる魔法よぉ」


 この世界には属性がある。

 しかし、一般的なゲーム程単純じゃ無かったりする。

 相手が火属性の魔物や動物だったとして、必ずしもその弱点が水属性だとは限らないのだ。

 …………って、この国に来るまでの道中、ツユが言っていたのを思い出す。

 要はある程度相対する敵の弱点を知っていないと意味の無い魔法という事になる。

 冒険者として生計を立てる以上、ある程度は勉強もしないとな。


「リメアさん、よろしくぅ」

「はいよー」


 リメアが掌の上に、マジックボールを造り出す。


「見ててねぇ、今から、水属性を付与するからぁ」


 言うと、メロエさんは杖をリメアに向け、魔法を発動した。

 マジックボールが、青色に変化する。


「手ぇ突っ込んでみてぇ」

「え、これにですか?」


 言われるがまま、リメアの掌の上に浮かんでいるマジックボールに手をあてる。


「お、液体……」


 ひんやりとした感覚。

 見た目ではよく分からないが、水を触っているような感覚だ。


「魔力を直接、水に変換して攻撃する水属性魔法よりもぉ、こっちの方が魔力効率が良くって良い事づくめなのよぉ」


 なるほどなるほど。


「じゃあ、やってみてぇ」


 リメアがもう片方の掌に生成してくれたマジックボールに杖を向ける。


「水属性、水属性……来いっ!」


 俺が魔法を発動すると、リメアのマジックボールが青色に変化した。


「一回目で成功しちゃうなんて、すごぉい♡」


 え、俺、凄い!? やっぱり!?

 メロエさんがピョンピョン跳ねて褒めてくれるので、とても気分が良い。


「ぐへへ……痛ぁ!」


 この女神、マジックボールぶつけてきやがった!


「な、なにすん……ぎゃああ!!」


 今度は俺が水属性を付与した方だ。


「メロエに褒められたからってニヤケちゃってさ」

「何? 嫉妬か?」

「ちっがうよ! 勘違いしないでよね! アンタ褒められる度にニヤニヤしてキモいの!」

「え、ツンデレ?」

「マジで刻むよ」


 リメアが双剣の片方を少しだけ出す。

 刃がキラリと光った。


「もぉ、二人とも、仲良しなんだからぁ」

「「茶化さないで」」

「ほらぁ、息ぴったりぃ」


 ……魔法の訓練は、こんな調子だった。



 ***



 陽が傾き、辺りが夕焼けに染まる頃。


「ミツルちゃんは1時間16分……うん、遅いわね」

「かなりな」


 魔法の訓練の後は、四人で走った。

 ディテクの町の外周を一周。

 一周は約十キロ程だ。

 支援魔法や神聖術・神速みたいなスキル無しで走る事をオネエさんに強要された。

 因みに着順は


 1、カゲト

 2、ツユ

 3、リメア

 4、ミツル


 だ。

 …………うん、知ってた。

 こうなると思ってた。

 タイムは秒数切り捨てでそれぞれ


 カゲト…40分

 ツユ…47分

 リメア…60分

 で、俺が圧巻の76分である。


「アンタ本当に体力無いね。私もうすっかり息整っちゃったよ」

「ミツルお前情けねぇぞぉ」

「お主らやめてやれ、今それどころでは無さそうだぞ」


 支援魔法があればもうちょっと行けたとか、これでも真面目だったから体育の評定三だったんだぞとか、色々言いたい事が浮かんできたが、言葉を出すことができない。


「ヒィ……ヒィ……ゴボェ゛ッ゛!!  ……ンッ……ゼェ……ゼェ……」

「ちょっ、そこまでかよ。無理すんな。リカバリースタミナ」


 ロイが魔法を掛けてくれる。


「ほらよ」


 息切れが収まる。


「助かった。ありがとう」


 完全に息が整うまでいつもはもっとかかるのだが、すぐにいつも通りの呼吸に戻った。


「もうすっかり真っ暗ね」


 空には月が姿を現していた。

 街灯の灯りが、俺達をほんのりと照らしている。


「今日はありがとう、我ら一同感謝する」

「もう、ツユちゃんはお堅いんだから。これからも手伝ってあげるわよ」

「お前ら不安になってきたから、俺も手伝ってやる」

「いつでも協力してあ・げ・る♡」


 頼もしい……!



 ***



 そんな特訓初日から、二週間が経った。


「ミツル、起きろ。朝だぞ」

「おは……よっっっっっ……!!」


 ぜ、全身が痛い……!


「何やってんだお前ら」


 お前ら……?

 カゲトの発言に疑問を持った俺は、横を見る。

 そこには。


「ふっ……! ふー……ふー……」


 筋肉痛の痛みに耐えるリメアが寝ていた。

 俺と同じく、痛くて立ち上がることができないらしい。


「ほら、掴まんなよ。起こしてやるぜ」


 言われた通りにカゲトの片手を掴む。

 リメアももう片方の手を掴んだ。


「そぉぉぉぉぉい!」


 ちょっ、そんな勢いよく引っ張ったら……!


「「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」」

「お主ら、うるさいぞ」

「だって……き、筋肉痛が……」

「カゲトったら、強く引っ張りすぎだよ……」

「ったく、ミツルもリメアも、大袈裟なんだから」

「「大袈裟じゃ無い!」」


 やべっ、大声出したら腹筋が……。


「さっさと起きるのだ。今日もやることはいっぱいあるのだぞ?」


 そりゃそうだけど……。

 でもさ、毎日クエストに行った後週六日ルーティーンで、魔法、持久走、魔法、持久走、魔法、持久走、魔法、持久走──。

 ……だと、普段ろくに運動してなかった人にとってはかなりの重労働なんよ。

 誰のためと言われれば自分のためだから、そんな文句言える立場じゃ無いけれどもさ。


「そうだぜ。俺は別に今日も走っても良いんだぞ?」

「それは嫌だ!」

「ミツル! 行くわよ! アンタもちゃっちゃと支度しなさいな!」


 うおっ、早。

 今さっきまで俺の隣で悶えてた癖に、いつの間に着替えたんだ。


「分かったよ。二分待ってくれ」


 俺は早々に着替えると、他三人と共に宿の部屋を出た。


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