084 も、もう限界だって……
四方に分散するエアレーの群れを、それぞれで内側に追い込む。
「そおれっ!!」
俺の放ったマジックボールは群れの右側を掠め、離れようとしていたエアレーを内側に押し戻す。
ツユは水魔法、カゲトも盾やロングソードで音を出したりして、巧みに誘導していた。
ロイも状態異常魔法を使って善戦していたが、最も活躍したのはオネエさんだった。
凄まじいスピードで群れの周りを駆け回り、まるで牧羊犬のように群れを誘導する。
俺の脚力増強の支援魔法の効果か、はたまたオネエさん本来の魔力と"闘気解放"のスキルによる恩恵か。
いや、そのどちらもだろう。
とにかく、凄い速度で駆け回っている。
それとは対照に俺はというと。
「ゼェ……ゼェ……」
脚力増強の支援魔法のおかげで、全速力で走ればかろうじて群れに追いつけてはいたが、いつも通り貧弱な体力が足を引っ張る。
「フンッ……ムー!!」
それを見たエアレーの一頭が突然『こいつなら殺れる』とでも言わんばかりに並走していた俺に角を突き出してきた。
「え、ヤバ……!」
咄嗟にプロテクトを展開するが、すぐに破かれてしまう。
体を捩らせて回避を試みた。
「っ……」
肩を掠める。
俺は杖に魔力を循環させ、スラッシュのスキルを叩き込んだ。
角に打撃を受けたエアレーは、角と体を後ろに引っ込める。
攻撃を受けた箇所に目をみやると。
「治ってる……」
傷口が淡く緑色に輝き、修復された。
俺はロイに視線を送る。
こちらに気づいたロイは、どうだ見たか俺の力! 的な視線を送ってきた。
さっき事前に俺達に撒いた魔法の効果はこれだったのか。
スッゲ。
そんな感想を抱く。
前方では、リメアとメロエさんが手を振っていた。
「お! 来たきた!」
「みんなぁおつかれさまぁ!」
言うと、二人はお互いに何かの準備を始める。
「じゃ、やるよ、メロエ!」
「いつでもだいじょうぶだよぉ♡」
リメアがそんな掛け声と同時に、双剣の魔鉱石がついたツカをこちらに向けた。
魔力が集約する。
マジックボールを放つつもりなのだろう。大きな球が、生成された。
「任せるわね!」
それに気づいたオネエさんが、群れから離れる。
俺達四人も、それに続いた。
群れは尚も罠と二人を目掛けて走ってゆく。
「準備バッチリだよ!」
「いいねぇ、じゃあ、行くよぉ〜」
メロエさんが、リメアの生成したマジックボールに杖を向けた。
「火属性とぉ、土属性とぉ、あと風属性ぃ〜」
「ちょ、ちょっと、詰め込みすぎ! 保持できないよ!」
「だってぇ、無属性魔法そのまま使ってる人、久しぶりに見たんだも〜ん。それ、すっごく加工しやすいんだからぁ」
何やらリメアのマジックボールに、メロエさんが手を加えているようだ。
「も、もう限界だって……」
「ちょっと待ってねぇ♡これで最後だからぁ」
……台詞回しがいやらしい。
「よし、できたぁ! 撃って良いわよぉ」
群れは分散しながらも、二人の目前まで迫っていた。
「撃つよ! 撃つからね!」
リメアは念を押すと。
「とぉぉ!!」
マジックボールを放った。
放たれたマジックボールが群れに向かってゆく。
そして群れの目前で、勢いよく弾けた。
火、土、風、そして無属性の弾幕が、群れを襲う。
「グヌァァァァァァ!!」
「フゴォォォォ!!」
「ムガァァァァァ!!」
弾幕は群れを包み込むように放射状に展開し、罠の圏外を走るエアレー達を一掃した。
残りのエアレーが、罠があるとも知らず、リメアとメロエさんに突っ込んでゆく。
そして──
「終わりだね」
リメアがエアレーに向けて、不敵に笑った直後。
先頭のエアレーが罠を踏んだ。
魔法陣が発動。眩い光が溢れエアレーを包む。
群れは焼き尽くされ、全滅した。
「どうだ! 見たか! これが女神様の実力ってものだよ!」
「わぁ〜、すっごぉい♡」
……いやいや、やってる事がもう女神じゃ無いって。
思いっきり殺生しちゃってるって。
そしてメロエさんもノリノリだな。
……そういえばこの前、うさぎを罠に嵌めた時『うさぎの神様もお赦しになる』とか言ってたっけ。
本当なのだろうか。
リメアは人間の神様だから、そう言うところ大丈夫な感じなのかな。
そんな感じで考察していると。
「お、おい! リメア、メロエ! 何故草原に火属性魔法なんぞ放ったのだ! 熱っ! ウォーター!!」
ツユの必死の消火活動に、我に返った。
「えっ、ご、ごめんなさい! ……ってか、火属性付与したのもマジックボールが途中で爆散するように手ぇ加えたのもメロエだよね!?」
「あれれぇ、そうだったっけぇ。でもぉ、撃ったのはリメアさんだよねぇ」
「なっ……!!! なんですってーー!! このぶりぶり女! 全部私のせいだって言いたいの!?」
「やだぁ、こわぁい♡」
うんうん。なんだかあの二人、仲良さそうで何よりだ。
「ほら、喧嘩しないの!」
オネエさんが、二人の元に近づいて両手でそれぞれにチョップする。
「あだっ」
「痛ぁ……」
「仲良く、ね」
おお……威圧が凄い……。
俺もあれやってみようかな。
なんとなく、魔力を体外に放出してみる。
「はぁぁぁぁぁぁー……」
「何やってんだぁミツル。スーパーサ◯ヤ人のモノマネか?」
お、そう見えるのか!? もしかしてできてるのか!? 俺!
「お前、ジェーンの真似ならやめとけ、あれは規格外過ぎる」
横からロイのヤジがとんだ。
「その指摘を貰うってことは俺、オネエさんみたいに魔力のオーラ的なの纏えてたりする感じ!?」
「まぁ、うっすらとは」
「やった! 全力出したらオーラ纏えるぞ!」
「おい、今の全力だったのか?」
「え、うん」
ロイの顔がにやりと歪み、嘲笑に変わる。
「バッファーの出力最大でその程度かよ」
「あれ、もしかしてケンカ売ってる? そのケンカ、買ってやるよ」
「良いねぇ。クレリックだからって、舐めてもらっちゃあ困るし」
俺とロイは対峙する。
が。
「ねぇ? ケンカ。駄目って言ったわよねぇ?」
凄い威圧感(もとい、魔力のオーラ)を纏ったオネエさんがこっちにやってくる。
「は、はははい! もちろん!」
「ケンカなんて全くだよジェーン! ……な?」
俺とロイは肩を組んでニコニコ。
それを見たオネエさんは視線をカゲトに向ける。
「いやこいつら、思いっきし喧嘩おっ始めようとしてたぜ」
カゲトてめぇこんにゃろぉぉぉぉぉお!!
オネエさんの笑顔が再び俺達に向けられる。
「「ひぃぃぃい!!」」
俺とロイは抱き合って怯える。
「お主ら、何をやっているのだ」
「ミツルとロイ君、もしかしてそういう……?」
「わぁ〜! 私、応援するヨォ」
後ろから来た女性陣の口々にした台詞に、今度はオネエさんが別の意味でニヤリとする。
「仲良くしなさいね、カップルさん」
「「違うわ!!!」」
「なんだよ、俺だけ仲間外れかよぅ」
「うわっ! カゲトも密着して来んな! きめぇって!」
「離れろロングソード!」
「ミツルもロイも、冷たいぜぇ」
「「だからきめぇって!!!」」
今回の討伐クエストは、そんな感じでクリアしたのだった。




