083 ハイド・ザ・マジック
作戦はこうだ。
リメアとメロエさんがエアレーの群れの後ろ側に回り込む。
そして、リメアが『ホーリーライト・トラップ』で罠を展開。
そこにメロエさんがすかさず『ハイド・ザ・マジック』を発動し、罠の位置をエアレーに見つからないように隠蔽する。
後は残った俺達で罠まで追い込もうという作戦だ。
オネエさん曰く、エアレーは目があまり良く無いらしいので、音さえ立てなければ回り込むのは可能だろうということだ。
「準備は良いわね? じゃあメロエちゃん、そしてリメアちゃん。くれぐれも勘付かれちゃあダメよ」
「大丈夫だよぉ〜」
「大丈夫ってアンタ、おぶって貰ってるんだから頑張るのは私だけだよ」
リメアが『音立てずに回り込むなんて、私のとっておき魔法を使えば楽勝だよ!』なんて言うから、メロエさんを背負って走る作戦になった。
なのに何やら不満があるそうで、ムスッとした表情になっている。
「そうだったねぇ。頑張ってぇ♡」
悪気は無いんだろうが、中々に煽りレベルの高い話し方をするメロエさん。
「ぐぬぬ…………まぁ良いや。じゃあ皆、行ってくるね。神聖術階位四・神速!」
そう唱えると、リメアはメロエさんをおぶったまま高速でエアレー方面へと走っていく。
「ほー…………速いな、あいつ」
ロイが手庇を作ってリメアを見届けている。
「…………惚れた?」
俺がロイの耳元で囁いてやると。
「なっ…………! なんでそうなんだよ!」
おっ、赤くなった。
可愛い男の子だこと。
「まぁしょうがねぇよなぁ、あいつ、可愛いし」
カゲトも俺の隣で、ニヤニヤしながら便乗してきた。
「だから違うって言ってんだろ! このビビり共が!」
おうおう、動揺してる動揺してる。
面白いなぁ。
「ほれ、男共! 奴ら上手く回り込めたみたいだぞ!」
ツユに声をかけられ、その方向を見やる。
遠くてあまりよく見えないが、リメアとメロエさんが大きく手を振っているみたいだ。
「じゃ、いくわよ、皆」
オネエさんの一言に、一同頷く。
よし、クエスト開始だ!
***
俺達は、音を立てないように草を掻き分け、こっそりと近づいていく。
やがて、魔法の射程圏内に入ると…………
「今よ!!!」
皆一斉に草むらを飛び出した!
「グヌアァァァァ!!」
群れの一頭が大きく咆える。
どうやら仲間に危険を伝えているようだ。
群れが乱れる。
俺は全員に、腕力増強と脚力増強の支援魔法を掛けた。
同じくロイが、何かの魔法を発動する。
全員の体が、淡く緑色に輝く。
「スプレッドサンダー!!!」
群れの前方を塞ぐように、黄色の球が幾つも生成される。
ツユの掌から放たれた電撃が、大きな音を立てながら球を伝って流れた。
思惑通り、群れのエアレー達の殆どは音と光に驚き、後方の罠方向に向かって走っていく。
しかし、内三頭の勇猛なエアレーが、群れを守るようにこちらに向き直った。
二本の角の内一本に魔力が流れ、鋭くこちらにキラつく。
「群れを散らしちゃダメよ! あの子達を早くやっつけないと!」
オネエさんが内一頭に向かって走っていく。
「闘気解放!!!」
吼えると同時、オネエさんの体内の魔力が激しく流動する。
溢れる魔力は俺のバフにより更に増幅し、とてつもない力へと変わる。
溢れ出る魔力から、威圧に似た感覚が伝わってきた。
オネエさんは魔力を拳に集中させると、そのまま一頭のエアレーに飛び込んでゆく。
「滅殺闘拳! 喰らえぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
凄まじい魔力を纏った拳が、エアレーに直撃した。
エアレーは悲鳴を上げる間もなく、煙となって消滅した。
「す、すげぇ……」
「凄まじい…………」
カゲトと俺は、その一瞬の出来事に放心する。
「ボーっとするな! お前らの方行ってるぞ!」
ロイの怒号にハッと我に返った。
一匹のエアレーがこちらに向かってきている。
「カゲト、いけるか!?」
「おう! 準備万端だぜ!」
カゲトがロングソードを抜いて、俺にガッツポーズを見せた。
「よーし!」
俺は杖をエアレーに向けると、魔力を込める。
杖の先に少しずつ魔力が集約し、やがて一つの塊ができた。
「発射!!」
マジックボールに回転をかける。
ボールは左から右に弧を描き、エアレーの左半身に直撃した。
驚いたエアレーは多少怯み、勢いを落としつつもこちらへ向かってくる。
俺は間髪入れずに連射した。
マジックボール、マジックボール、マジックボール。
最後の一弾だけは、こちらから見て右脚を狙った。
予想外の軌道の攻撃に足を取られ、右側にバランスを崩すエアレー。
「おぅっりゃ!!」
そこにカゲトのスラッシュが直撃。
「ゴォォォォォ……」
真っ二つに裂かれたエアレーは、煙となって消滅した。
「ナイス!」
「やったな!」
俺とカゲトはハイタッチする。
残りの一頭は、ロイの方向へと向かっていた。
ロイは杖をエアレーの方向に向けると、魔法を発動する。
エアレーの移動速度が、目に見えて低下した。
デバフの魔法だ。
突然体の勝手が変わったからか、エアレーは足をもつれさせて前方に倒れる。
「ジェーン!」
ロイが叫ぶ。
「お姉さんって……」
オネエさんの拳に、魔力が宿る。
「呼びなさい!!!!!」
凄まじい魔力を宿した拳が、倒れたエアレーを吹き飛ばした。
前方に逃げるエアレーの群れを見やる。
既に群れは乱れ、今にも散開しそうだった。
ツユが魔法でどうにか対処しているが、散り散りになるのも時間の問題である。
俺、カゲト、ロイ、そしてオネエさんは、三頭の勇猛なエアレーを討伐の後、すぐにツユに加勢した。




