081 自己紹介から、しましょうか
依頼内容は、群れで出現したエアレーの討伐。
個体数が多いため、二つのパーティー合同で行うクエストだ。
報酬は一頭換算ではなく、群れの討伐で一人20000ロウ。
エアレーとは、立派な二本の角を持つ牛型の魔物である。
どんな生態かツユに尋ねると。
「奴らは角の向きや形を自在に変化させることができる。一方の角を前に出して、もう片方は後ろ向きに。出ている角が傷付けば、反対の角に交代させてくるのだ」
と、答えた。
両拳を頭の角が生えているであろう辺りに置いて、交互に閉じたり開いたりジェスチャーしながら言っていたので間違いない。
あとカゲトが
「両方使えば良いじゃねぇか。二本あるんだから」
と疑問を口にしていたが。
「知らん。エアレーに訊け。丁度今から倒しに行くのだから」
と、一蹴されていた。
カゲトはそのせいでちょっとしょんぼりしていた。
***
俺達は、クエストのために指定された集合場所に向かっていた。
ちなみに朝ご飯は皆食べてない。金がないから。
なので皆、お腹の音がうるさい。
あまりに各々からぐぅ〜と音が聞こえるので、今日一日はツッコまない事に決定した。
集合時刻は午前八時。
それにしてもなんと美しい響きなのだろう。
時間が分かるとこうも落ち着くものだろうか。
今までのクエストだと、『大体このくらいね』的な感じで集まっていた。
これで今までよくやっていけたものだ。
ベルン共和国連邦全体がそうなのか、はたまたアドベルンだけがそうなのかは定かでは無いが、あの町の人々は随分とアバウトなものだ。
しかし、時間に追われない生活をしているからこそ、あんなにも穏やかな町民性なのだろうか。
謎がまた一つ増えてしまった……。
「見えて来たぞ」
ツユが指差す方向を見る。
時刻は七時五十五分。
集合場所には、今回共にクエストをこなすパーティーの姿があった。
人影は三つ。
木陰に居るので姿はよく見えないが、あちらは三人パーティーのようだ。
ちなみに、パーティーの人数は三から六人と決まっている。
冒険者を数の塊で分けて編成する時、便利だからだそうだ。
アドベルンのギルマスから聞いた。
…………元気にしてるかな、ギルマス。
まぁあの人、いつもやる気と元気無いダウナー系の人だったから、元気にしてるってことはないか。
「「「「おはようございます」」」」
俺達四人は、口を揃えて挨拶をする。
「来たわね」
「おっはよぉございまぁす!」
「…………ん」
三人組は返事と共に、木陰から姿を現した。
向かって右に立つのは、フードを被った小柄な男性…………男子と呼ぶ方が正しいだろうか。
見た目は十二歳程で、俺よりも四歳ほど年下に見える。
左に立つはピンクの髪にツインテールの女性。
良く言えば萌え、悪く言えばぶりっ子という風貌である。
そしてその二人の間、中央に立つ、一際目立つ人物が一人。
とても大柄で、筋肉質な体を包むは可憐なワンピース。
「初めまして、よ」
その男は俺達に礼儀正しく挨拶をした。
「は、初めまして…………」
俺は随分と個性的(特に真ん中)な三人組の迫力に、気圧されながらも返事を返す。
「自己紹介から、しましょうか」
大柄なその男が、手を叩いて皆の注目を集める。
「私の名前はジェーン・カオマ。職業は武闘家よ。お姉さんって呼んでね」
「どっちかと言うと、お兄さ…………」
フードの男の子が言い掛けるが、ジェーンさんに笑顔の圧を掛けられて、しおらしくなってしまった。
「バッファーのミツルです。宜しくお願いします。えっと……」
「お姉さん、んね」
無言の圧。
「お、オネエさん」
素直にお姉さんと呼ぶのに抵抗を感じて、なんだかカタコトになってしまった。
「私はツユ。職業は探検家だ」
「クレリックのリメアです」
「ナイト、カゲト・クジョウ! 宜しく頼むぜ!」
俺が自己紹介した勢いに乗って、こちら側が先に全員挨拶を終える。
次に声を出したのは、ピンクのぶりっ…………美少女だ。
「メロエ・オトメトでぇす! ミツルくんと同じぃ、バッファーやってまぁす! よ、ろ、し、く、ね♡」
自己紹介と共に、俺とカゲトに狙いを定めてウインクしてくる。
それに対して、俺達が返事をするよりも前に。
「よろしくね」
リメアが俺達とメリエさんの間に割り込んで、言った。
リメア的にこの人、気に入らないらしい。
物腰はいつも通り敬語の外面モードだが、その背中に何か怒りのようなものを感じる。
それをメロエさんの方も感じたのか、笑顔が僅かに歪んだ。
うーん、リメアが変に噛み付かなきゃ良いけど…………。
「…………ロイ。クレリック。よろしく」
最後に自己紹介したのは、フードの子だ。
「クレリック! 私と同じだね!」
それを聞いて、リメアが今度は別の意味で食いつく。
ロイの手を掴んで、にっこりと笑うリメアに。
「や、やめろ、放せ!」
顔を赤くして、リメアから離れようとするロイ。
「なんだあいつ、かわいいな」
カゲトが呟いた。
まぁ俺も同感である。
あれがおねショタというやつか。
一つ学びを得たな。
「てか、お前ら、アタッカーは誰なんだよ」
ロイがリメアの手を振り解いて言ってくる。
「なんだ? アタッカーって」
「うーん、職業の一種かな?」
頭にハテナを浮かべるカゲトと俺に、ツユが横から解説してくれた。
「要は、我らの中に攻撃職が居ないことを言いたいのだろう」
攻撃職…………。
あっ、そっか。
俺達のパーティーって、
・バッファー 支援職
・クレリック 回復職←支援職の括りかも
・探検家 支援職
・ナイト 防衛職
だもんな。
今までなんとかなってたけど、よくよく考えると歪だ。
「だからこそ、このクエストを選んだ。我らだけだと心許ないからな。その分、きっちりサポートはする」
ツユが胸を叩いて言う。
「あら、頼もしいわね! 頼りにしてるわよ」
オネエさんが指先を合わせて、にっこりと笑う。
そんな感じで、俺達はエアレーが発生したという草原地帯へと向かった。




