008 あなた方、どういうご関係で?
というわけで、俺は再びこの世界に降り立った。
「課外任務かぁ」
「リメア、大丈夫ですか?」
「まぁゲームできないのは惜しいけど、頑張るよ」
あれ? リメア、いきなりタメ口になったぞ?
「あ、あのぅ、タメ口……」
「あぁ、ごめんね、いきなりびっくりさせちゃって。私、実はああいう固苦しいのあんまり好きじゃないの」
そうなんだ。まぁそんな気はしてたけど。
なんにせよ、親しみやすい神様だ。
「あと、リメア"様"もやめて……って、あれ? さっき何も言ってないのに私のこと呼び捨てで呼んだ?」
やべっ、バレたか。
様付けするほど立派な神様には見えないなんて言えない。
「そ、そうだっけ? そんなことないよ」
リメアは少し怪訝な顔をしたが、なんとか誤魔化せたようだ。
「そうだ、ここに来たらまずはカードを作らないとだったね。ギルドはえっと……この世界のギルドってどこにあるの?」
え、ギルドの場所知らないの?
俺を転生させたのに?
……まぁ良いか。
あまりこの女神様は頼りにならなさそうだから、しっかりしないとな。
「ギルドはこっちだよ」
ギルドまでリメアを案内する。
その道中、疑問に思ってた事を答えてもらえた。
なぜ異世界語が話せたり、読めたりするのか。
ずばりそれは、テレポートの瞬間、言語習得という神聖術を重ねがけしているからだそうだ。
成功して良かったとか不穏な事を言っていた気がするが、まぁ俺に実害は無かった訳なので、聞き流す事にした。
***
ギルドの扉を開けると、そろそろ目に馴染んできた風景が広がる。
これが"いつも"になりつつあるのか……。
自分でも、意外と異世界に適応できるものだなと思う。
ギルドの受付ではやはり今日も、俺がカードを作ってもらった小柄な男があくびをしながら座っていた。
俺はリメアと共に受付の男の元に向かう。
「んぁ、ミツルさん。今日はいつもより遅いじゃないですか。薬草採集の依頼以外で何か受けるんです?」
すっかり顔馴染みの受付男だ。
この人の礼儀がなってないからか、女の人……いわゆる"受付嬢"ではないからか真相は定かではないが、なぜかこの男の窓口だけ人気がない。
俺は並ぶのは嫌いなので、人気の無い窓口は助かるのだけれどね。
「いえ、今日は薬草採集ではなくステータスカードの手続きをお願いしたくて」
受付の男はリメアを一瞥すると。
「あなた方、どういうご関係で?」
「どういう関係でも無いですよ」
「ミツルのお世話係です」
お世話係だと?
「俺、お世話なんて頼んだ覚えはないんだけど」
「え? 私はお仕事いっぱいなのに課外任務を受けたんだよ? 私居なくても良いの? 困らない?」
なんだこの女神。
ちょっとムカつく。
「お仕事いっぱい? ゲームしてたから溜まっただけでは?」
「あれ? もしかして私にケンカ売ってる?」
ケンカ勃発しかけた俺とリメアに、すかさず男が割り込んだ。
「お二方! ステータスカードの手続きでしたよね!」
あっやべ、すっかり忘れてた。
「1000ルンになります」
男は俺が作った時と全く同じことを告げて裏から白紙のステータスカードを持ってきた。
男は俺達を見てふぅと一息つくと
「ではこのカードに手を添えてください」
リメアは言われるがまま白紙のカードに手を添える。
するとカードが輝き出し、数字が刻まれた。
「ええと、あなたのステータスは……」
人のステータスを口に出して読み始めるのはこの男の悪い癖だ。
「ほとんどのステータスが平均値くらい……魔法系統のステータスが全体的に少しだけ高めですね」
「普通、かぁ」
「なんで残念そうなの?」
「いやさ、もっと凄いステータスになるかなって思ってたんだけどね」
女神だからってこと? 確かに高ステータスでもおかしくは無いと思うけど……。
まぁ、天界で寝っ転がってゲームしてちゃあね。
俺もろくに運動なんかしてない貧弱マンだから、人のこと言えないけど。
「あなたが就ける職業はこの五つですね」
男が提示した一覧には
メイジ:得意 攻撃魔法
クレリック:得意 回復魔法
バッファー:得意 支援魔法
デバッファー:得意 状態異常魔法
魔法剣士:得意 防衛魔法
に印が付いている。
全部魔法系の職業だな。
「ミツル、どれが良いと思う?」
「どれと言われてもなぁ」
正直、どれが良いかなんてこれっぽっちもわからん。
だってこの世界に来てから一度も戦ったことないし。
てか、身分証としてカード作成しただけで派手に戦うつもりはない。
せっかくファンタジーな世界に来てなんだが、転生してまで命の危機に晒されながら仕事したく無いからな。
今のところは薬草採集で生活費を補えているが、この先ちょっと不安になってきた……。
って、話がそれた。
リメアの職業だっけ?
うーん、戦いとかあんまりしたく無いけど、万が一何かで怪我をした時、治療できる人が居ると助かるよな。
「回復魔法があると凄い助かる。怪我した時とかね」
「そうね、じゃあクレリックにしよー」
意外と速攻決めるんだな。
リメアは受付の男にクレリックと記入してもらう。
すると、リメアの体が淡く輝いた。
「では良い一日を」
受付はそういうと、その場で昼寝を始めた。
もはや見慣れてしまった。
この人のやる気の無さは。
「で、ミツル。この後はどうするの?」
「とりあえず今からクエストって時間でも無いし、宿を取るか。今ならまだ早いから取れそうだし」
と言うわけで、俺達は三階にある宿へと上がった。
まだ夕方だったと言うこともあり、冒険者用の部屋は空きがあった。
連れがいる場合は一つのパーティーにつき部屋と言う扱いになるらしい。
俺は1000ゴールドを支払い部屋の鍵を受け取る。
前は500ゴールドで一人部屋だったのに1000ゴールドで相部屋か。
まぁ仕方ない。
むさいおっさんと同じ部屋とかじゃ無いから良いじゃないか。
美少女と相部屋。
むしろ喜ぶべきである。
部屋に入ると、リメアがいきなりベッドに飛び込んだ。
「うぅん、ふかふかぁ」
なんだ。
かわいいな。
リメアはベッドに座り直し、言う。
「冒険者カード、ねぇ。職業とかステータスとか、まるでゲームだね」
「神様でもそう思うの?」
「うん、ミツルの世界は娯楽に関しては数多ある世界の中でもトップレベルよ。私もゲームなんかはするし」
そうなんだ……。
「てか私、神なのに職業がクレリックなの面白い」
「確かに」
俺達はクスクスと笑い合う。
こっちに来てからコンマさん以外とはまともに話していなかったので、結構楽しい。
「ところでさ、リメアは魔力乱流の調査だって言ってたけど、具体的に何をするの?」
「まぁとりあえずは手掛かりも無いし、ミツルの観察だね。今日はもうすること無いの?」
すること、か。
あ、そういえば。
「オケノス様からもらったお小遣いがあるんだ。防具屋に行かない?」
「良いね」
と言うわけで、俺達は防具屋に向かった。




