表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
77/79

077 ドキドキワクワク

俺達四人は、ラーに連れられ町を歩く。

日はもうすっかり落ちていて、空では月が輝いている。


「ここは夜でも明るいんだな」


カゲトが呟く。

アドベルンと違って街灯の灯りがちらほらと光り、僅かだが人影もあった。


「そうだね。アドベルンは夜、真っ暗だったからね」


俺の言葉に、ラーさんが答える。


「ここはこの国唯一の町ですからな。国の名を冠するここディテクと、東の端、丘のふもとにあるアドゥア村だけの、小さな国ですゆえ」


確か地図で見たこの国の大きさは、ベルンの三分の一程だったよな。


「夜でも道が明るいのは凄くありがたいですね。アドベルンでは建物内で無いと暗くて、歩けるものではありませんでしたよ」


あちらでは夜に歩く機会なんてほとんど無かった。

だけど今リメアが言った通り、アドベルンで夜歩こうとしたら、ツユのファイア必須だろう。

暗視スキルも持ってないし、真っ暗で歩けたもんじゃない。

俺は辺りをほんのりと照らす街灯を観察する。

街灯の知識なんてゼロに等しいが、少なくとも光源が電球って訳では無さそうだ。

何やら揺らめいているので、火だろうか。

魔法の類いかな?


「あの街灯は、やはり魔法で光っているのですか?」

「ええ。火属性の魔鉱石が組み込まれているのですぞ」

「なるほど」

「定期的に、国で働く魔法職の者が魔力を込めるのです」


定期的に魔力を充電してくれる訳か。

電気じゃ無いから正確には"充電"ではないけど。

木造の建造物は周りには無いし、火移りの心配も無いのだろう。

しばらく歩くと、やがて大きなレンガの建物前に到着した。


「でけぇなぁ……」


カゲトが感嘆の声を漏らす。


「アドベルンの宿なんか、五つしか部屋無かったのに……」


俺も続けて言った。

そもそもアドベルンの宿は、ギルドに併設されていた。

だけどこっちは、宿単体で大きな建物だ。

窓は縦に四つ。

横には五つ並んでいる。

正面には、観音開きの大きなドアが鎮座していた。

ラーさんがドアノブに手を掛け、両手でそのドアを開ける。


「さあようこそ、我が国の宿へ」


開かれた先に見えた景色は……。


「うおおっ! ホテルだ! ホテルだぜ!」

「この世界に来てから、一番豪華なのは間違いないねこれは……」

「おおおっ! 期待して良いよね! 私、これ期待して良いよね!」

「我らがこんな宿、泊まっても良いのか……?」


各々の反応を見て、嬉しそうに頷いたラーさん。

カウンターまで歩くと。


「えぇ、"客人"ですからな」


そう言って、ニコッと笑った。


「では、頼むぞ」


ラーさんの言葉に、カウンターのお姉さんがコクリと頷く。

それを見たラーさんは俺達を一瞥すると、宿を後にした。


「皆様ようこそ、お越しくださいました」


とても愛想の良い言葉が発せられる。


「部屋はご用意しております。鍵はこちらです。何かございましたら、カウンターまでお越しください」


ツユはお姉さんから鍵を受け取った。


「部屋番号は……305だな。三階へ行こう」


ツユの先導で、俺達は階段を登る。

道中の壁にかけられた絵画や、魔法で灯るランプを眺める。


「アドベルンの簡素な感じとは、また違った良さがあるよね」


俺は誰に言うでもなく呟いた。

アドベルンの宿は小さく、床は木材でできていた。

しかしこちらは…………何で出来ているのかは知らないが、少なくとも木では無い。

塗り壁? で正しいだろうか。


「ここって国営なのかな」

「そうなんじゃないかな、審査長のラーさんが紹介したわけだし、何よりギルドの宿より豪華だしね」


リメアがウキウキで答えた。


「ベッドも四人分あるよな、きっと!」


そうだよ、ベッドの事考えてなかった。

カゲトの発言、フラグにならなきゃ良いけど……。


「よし、ここだな」


ツユが305番の部屋のドアノブに手を掛ける。


「ドキドキ」

「ワクワク」


リメアとカゲトが期待を口にするなか、ドアが開かれる。

入った先の景色は──。


「うぉぉぉぉ! ダブルベッドが二つもあるぞ!」

「みてみて! このソファ! ふっかふかだよ!」


広々とした空間が広がっていた。


「ほれ、リメアもカゲトも、騒ぐでないぞ」


ツユがバックパックを地面に下ろし、部屋の奥へ向かって行く。

俺はツユのバックパックの隣に荷物を置き、マントをソファに投げた。

そしてダブルベッドの一つにダイブする。


「うっっっっっあぁぁぁぁぁ! ふかふかぁぁぁぁぁ!」


俺はバウンドして、ベッドに沈み込んだ。


「ミツルまではしゃぐのか」


ツユが呆れたように肩をすくめ、ソファに腰掛けた。


「だって疲れたんだもん。そう言うツユだって、そこで溶けてるじゃないか」


ツユはソファに体を沈めて、大の字で上を向いている。


「はぁぁぁぁ……しょうがないではないか。だって、疲れたんだもん」


ツユの普段聞き慣れない口調に、軽い笑いが起こる。


「ともあれ、なんとか無事に辿り着いたね」


リメアが立ち上がって、言った。


「そうだねぇ……俺もうこのまま寝れるよ……」

「俺もだぜぇ……」


俺とカゲトは、ダブルベッドを一人ずつ占拠した。


「おい野郎ども、我らも寝るのだ、片方は今すぐ退け」


腰に手を置いて咎めるツユ。


「やーだね。ここは俺達が頂くことになったんだ。な! ミツル!」

「そうだそうだ。ここで俺達は気持ちよく英気を養わせて頂くから、貴方がたは床にでも寝ていればよろしくってよ?」


カゲトの発言に乗って、リメアとツユを煽ってやる。


「アンタ達仲良く意見揃えちゃって、私の意見は絶対なんだからね!」


リメアは肩に掛けていた鞄をソファに放り投げたかと思うと……。


「ダーーーイブ!」

「ええっ、ちょっ! リメアぁぁぁ!!」

「うおっ! 危ねぇ!!」


俺とカゲトの間にできた僅かな隙間にダイブしてきた。

間一髪。

俺達はそれぞれ反対方向に体を反らせ、リメア爆弾を回避する。


「うーん! ソファよりふかふかだぁ……」


ボフンっとベッドが波打って、体が上下に揺られた。

当のリメアは、とろけ顔で枕に顔を埋めている。

全く、この女神様は。

俺はリメアを一瞥した後、頭を再び天井に戻す。

すると……。


「ダーーーイブ!!」


今度はツユが、俺とリメアの間に降ってきた。


「ちょっ!?!?!?」

「ツユちゃん爆弾だぁぁ!! あははは!」


再びベッドが波打ち、全員の体がバウンドした。


「ははは、良いな、これは」


さっきまで平静を装っていたツユが、吹っ切れたように笑っている。


「このまま寝れちゃうわねぇ……」


リメアがツユに抱きつく。


「そうだな……」


そのまま二人は、目を閉じてしまった。


「なぁミツル! 俺も抱きついて良いか!?」


すっかり距離が離れてしまったカゲトの声が聞こえてきた。


「なんでだよ気持ち悪い! てか、この距離じゃ無理でしょ!」

「んじゃ、俺がお前の所に行けば良いんだな」


カゲトは立ち上がると、俺の前に移動して……。


「ダァァァァイブゥゥゥゥ!!!」

「待っ! おい! やめっ……」

「リ、リメア起きろ! そっち行ってくれ! 私が避けられない!」


──ギシッ! ギコ……ギコ…………。


おい、今ベッドが軋む音が聞こえたぞ。

割とはっきりと。


「お、おおぉ……危ねぇ……」


流石にカゲトもヒヤヒヤしたらしい。


「下に響くからやめた方が良いかもね……」

「ああ、そうだな……」


四人全員で、仰向けのまま笑う。

そしてそのまま全員、鍵も掛けずに夢の中へと旅立ったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ