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072 リメア様

結界は分厚く、魔物の気配も無い。

川のせせらぎを耳に受け、深呼吸をした。

マントを羽織る。


「走る……には、狭すぎるか」


結界ギリギリをぐるぐると周回する意味はあまり無さそうだ。

ツユは確か、俺とリメアには『ディテクに着いたら体力作りだ!』と言っていた。

ツユが体力面に関して指導してくれるなら、やはり今は魔法を練習すべきだろう。

俺に足りないのは魔力。

魔法の"威力"だ。

俺のステータスは魔法持久力に偏っていて、MPを持て余した残念キャラクターと化している。

例えるなら、蛇口はやたら小さいくせに、水を貯めるタンクはやたら大きい。

みたいな感じだ。


ミルドさんから教わった魔力を上げる"鍛え方"を試すか……。

俺は両腕を突き出し、魔力を込める。

掌の前に、魔力の塊が生成された。


「マジックボール!!」


言うと同時、俺はそれを放つ。

結界をすり抜け、その外の木へ直撃した。

しかし木はびくともしない。


「こんなもん、だもんなぁ」


なんと言うべきか……。

"勢いよく投げたドッジボールくらいの威力"だろうか。


『魔力をあげるなら、ひたすら魔法を放つこと。早く、濃密に。を意識するんですよ』


ミルドさんの言葉だ。

要は、威力の高いものをより素早く生成する、と言う事。

俺は再びマジックボールを生成する。

より早く、多くの魔力を込めて。


「っ……」


より多くの魔力を注ごうとしても、魔力が低い俺は、毎秒、少量の魔力しか注ぐ事が出来ない。

とりあえず、威力のみを重視してみる。


「マジック、ボール!!!」


──ダァァァァン!!


再び木に命中する。

今度はザワザワと音を立て、葉を落とした。

これでリメアのマジックボールと威力は同じくらい。

しかし、生成にその十倍程の時間を有してしまった。

やはり蛇口から出る水の量が少ない俺は、威力を重視すると、その代償にかなりの時間を有してしまう。


「マジックボール!」

「マジックボール!!」

「マジックボール!!!」


今度はひたすらに、撃つ。

魔法持久力だけはあるので、魔力が尽きる事が無い。

自分の出せる限界の量、魔力を注ぎ続けたので、手がジンジンと痛んでくる。

球を生成してから発射するマジックボールだと効率が悪いので、今度は発動し続ける風魔法で試してみる。

風の魔法陣を作って、自分に当ててみた。

…………うん、扇風機だな。

力を込めるが、全力を出しても『ちょっと風が強くなったなぁ』くらいにしかならない。


「はぁぁぁ……」


出来そうで出来ないなぁ。

俺はその後、他の魔法やスキルを試してみた。


「マジックボール!」

「ウインド!」

「プロテクト!」

「スラッシュ!」


だが……。

マジックボールは"威力ドッジボール"だし。

ウインドは"扇風機の強"だし。

プロテクトは"カプセルトイのカプセル"くらいの強度だし。

スラッシュは…………まぁ、このスキルだけはまあまあ威力出てるな。

スキル自体が素で強いのかも知れない。

結局、杖とか剣に魔力込めてぶん殴る威力を上げるスキルだし。

物理攻撃の時点でね。

再び手に魔力を込める。


「マジックボール!!!」

「ミツル、何やってるの?」


放ったと同時、背後から声が聞こえた。


「リメアか。おはよう」

「おはよぉ」


目を擦って、欠伸をしながら返事をしてくる。


「どうしたの?」

「それはこっちのセリフだよ、目が覚めたらミツルが居ないんだもの。びっくりした」

「ごめんごめん、ちょっと鍛錬してて」


リメアが頭にハテナを浮かべる。


「何故に今」

「一度起きたら寝られなくって」

「そう」


リメアが俺をまじまじと見つめる。


「夢でもみたの?」


え? なんで分かった。


「なんで分かったって顔してるね。教えてあげよっか」

「うん」

「アンタ、すぐ顔に出るんだもん。なんか不安そうな顔してた。大方(おおかた)、自分の弱さに関する嫌な夢でも見たって感じ?」


すっげ、超図星。


「まぁ、そんな所かな」

「言ってみなさい。女神たるこの私が聞いてあげる」


おぉ、女神様スマイル。

久々に見た。


「そんな大した事でも無いよ。皆にお前は弱いって言われて、置いていかれちゃう夢見ただけ」


リメアは俺の言葉を聞いて、クスクスと笑う。


「そんな事しないよ。私達を信じてないの?」

「そういうわけじゃ……」


反論しようとした時、リメアが抱きついてきた。


「え……えっ!? な、何?」

「大丈夫、ミツル。誰も見捨てたりしないよ」


俺の体を離すと、再び笑った。

背中から、太陽が昇る。

太陽はリメアを照らし、後光となった。


「本当にどうしちゃったの? ……リメア様」

「気まぐれ、かな。考えてみたの。ミツルは死んじゃってるから、お父さんともお母さんとも逢えない訳でしょ? それは……辛い事なんじゃ無いかなって」


ホントどうしちゃったんだよ。


「ま、そんなことより」


リメアの声色が明るいものに変わる。


「強くなりたいんだったら、私と模擬戦しない?」


リメアがベルトから、双剣を抜き取る。


「お、相手してくれるってか? 良いね、やろう」


俺も杖を構えて、リメアと対峙するのだった。

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