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007 良いわけないでしょう?

 映像が終わると、オケノス様は続けた。


「今見た通り、確かにミツル君が亡くなったその瞬間。魔力が検知されたんだ」


 魔力が検知された?

 俺とリメア様はほぼ同時に首を傾げる。


「魔法の存在しないミツル君の世界。だが、あの交通事故はトラックが魔力を帯びて、暴走したが故に起きたんだ」


 リメア様がそれを聞き、疑問を投げる。


「あれは魔力によって引き起こされたというの?」

「あぁ。あの現象はミツル君を送り込んだ世界での現象"魔力乱流"とよく似ている」


 まりょくらんりゅう?


「それは一体、どういう現象なのでしょうか?」

「魔力の乱流。漂っている魔力の流れが乱れて、近くにある機器などに悪影響を与える現象だ。だからこそあの世界は、機械技術ではなく、魔法技術が発達したんだ」


 その魔力乱流が、地球で……?


「そしてミツル君のその膨大な魔力保有量。それも、この事故が要因だと思われる」


 オケノス様に言われ、俺は自分のステータスカードを取り出し、眺める。

 やはりそこには、一般人を凌駕する魔法持久力が記載されていた。


「それじゃあミツルさんの謎の魔法持久力は、死に際に大量に取り込んだ魔力が原因ということ?」

「あぁ、それなら辻褄が合う」


 オケノス様は俺とリメア様を一人ずつ一瞥すると、再び話し始めた。


「本来、出口の世界から入口の世界へ逆流することが可能な物質など無いはずなのだが……」


 出口と入口?

 ……あ、そうか!

 俺の住んでた地球のある場所は入口で一方通行なんだっけ。

 リメア様は未だ信じられないと言った様子だ。


「でも、人為的にそれが行われたのだとするのなら、それは神と等しい魂の持ち主でも無ければ不可能では……」

「誰の仕業……いや、そもそも何が原因なのかは俺たちにもわからない。だからリメアにはその調査をお願いしようと思ってここへ来たんだ」

「……というと?」


「リメアにはミツル君に同行し、原因の調査をお願いしたい」

「「え?」」


 突然のオケノス様の発言に、リメア様と俺は驚く。


「私が、ミツルさんに同行?」


 リメア様はかなり困惑しているようだ。

 まぁ俺も結構困惑しているが。


「あぁ、魔力反応があったということは、魔法がある世界と何かしらの関係があるのは確実。リメアには、被害者であるミツル君の経過観察と、あの世界側で何か起こっていないかの調査を頼みたいんだ」

「調査ってそんな漠然としたこと言われても……」

「どんな些細なことでも良い。何かおかしい、と思ったら報告してくれ」


 マジでリメア様ついて来てくれる流れだな。

 この可愛い信号機と一緒に異世界生活できるのか。

 ちょっと嬉しい。


「でも、死後の日本若者担当は誰に?」

「俺が自分の仕事と並行して行う」

「で、でも……」

「話し合いの結果、リメアが適任なんじゃ無いかってね。リメアの余らせてる仕事も、他の神が自分の仕事と並行してなんとかできそうだしな」


 そう言って、さらに付け足した。


「俺が来た時ちょうど、ミツル君も居たしね」

「そうですか……」


 あれ? リメア様ちょっとがっかりしてね?

 俺と行くのが不安だったりするのかな。

 ちょっと凹むなぁ。


「あの、お父さん」

「なんだ?」

「ゲームは持っていっても」

「ダメだ」


 ショボン……。


「……もしかしてリメア様、ゲームしばらくできなくなることにがっかりしてたりします?」

「そそそそんなわけないじゃ無いですか! そんなこと無いですよ!」


 明らかに動揺してるな、この女神様。


「リメア、そろそろ課外任務もこなしていかないと、神の権限を剥奪されてしまうぞ? しばらくゲームは控えた方がいい」

「はぁい……」


 『はぁい』って言ったぞ。

 やっぱりゲームしたかったのね。

 俺だって、転生特典でチートとか、好きなもの一つ持っていっていいとか、本当はそういうの期待してたんだぞ。

 まぁ転生させて貰っただけでもありがたいと思って口には出さなかったが。


「ということでだ。ミツル君、君の異世界生活にリメアをしばらく加えてはくれないか」

「もちろん、むしろこっちが良いんですかって感じです。リメア様がいたら心強いですよ」


 オケノス様はそれを聞いてニッと笑い。


「なんちゃって女神なんだから、いろいろこき使って構わないぞ! ガハハハ」

「良いんですか!? リメア様、お父さんそうおっしゃってますが、良いんですよね!?」

「良いわけないでしょう?」


 ゲッ、笑ってるのに笑ってねぇ。

 笑顔が恐ろしいですよリメア様。


「お父さん?」

「い、いやぁ、悪かったよ。怖いなぁもう」


 オケノス様がビビってるのをみて、今度こそちゃんとクスッと笑うリメア様。


「よろしい。では、少し準備をしてきますね」



 ***



 少しして……。

 暗闇から、冒険者のような軽装に布製のバッグを肩からかけたリメア様が姿を現した。


「似合ってるぞリメア、それにちゃんと冒険者にも見える」


 先の女神らしくない行動ですっかり忘れていたが、リメア様ってやっぱ小動物みたいで可愛いよな。


「ありがとう。それじゃあミツルさん、行きましょうか」

「え、あ、はい」


 もう行くのか。

 リメア様が手を上に上げると、俺とリメア様の足元に大きな魔法陣が出現する。


「それじゃ、お父さん、行ってき」

「ちょっと待て」


 と、突然オケノス様が俺達を引き留めた。


「リメア、カバンの中身、見せてみなさい」

「……行ってきます」

「逃すか!」


 魔法陣が輝きを増す中、オケノス様がリメア様を魔法陣の範囲外に突き飛ばす。

 魔法陣は輝きを失い、やがて消えた。


「イテテテ……ちょっとお父さ」

「リメア、これはなんだい?」

「ギクッ!」


 声に出してギクッって言う人いるんだな。

 オケノス様が手に持っていたのは、ゲーム機と食べかけのポテチの袋だった。


「こ、これは……」

「こんなもの持って行くな! 違う世界の技術を持ち込んだら大変なことになるぞ!」

「そ、そんなに怒らなくても……」

「リメア、君は事の重大さを分かっていない! 今後、このようなことは無いように」

「はぁい……」


 リメア様って、本当に女神なのだろうか。

 いや、ここはあえてリメアと呼び捨てで呼ばせてもらおう。

 尊敬には値しなさそうな方だが、良い仲間にはなれそうだ。


「あぁ、あとミツル君、きたまえ」


 なんだろう?

 言われた通りにオケノス様の方へ行く。


「君も、異世界でずっとその姿じゃあ目立つだろう。これはお小遣いだ。これを使って服でも買いなさい。他の神には内緒だぞ」


 そう言ってオケノス様は、手に5000ルンも握らせてくれた。

 目立つ格好……。

 確かに言われてみれば、異世界に行って以来ずっと、学ラン生活である。


「ありがとうございます!」

「じゃあミツルさん、行きましょうか」

「はい」


 再びリメアが手を上にかざすと、俺とリメアの足元に大きな魔法陣が出現する。


「そういえばこの魔法、なぜ二人同時にテレポートできるんですか?」


 テレポートは本来、一人用の魔法のはずである。

 人間の魔力では一人サイズが限界だとかコンマさんが言っていた。


「気づいちゃいましたか。実はこれ、厳密には魔法じゃなくて"神聖術"って言うんですよ。天界に存在する神聖力を糧にしています。魔力の四分の一の量で同様の力が出せるんです!」


 なんと!

 しかも、神様しか扱うことができないらしい。

 なんとも頼もしいものだ。


「ミツル君、リメア、いってらっしゃい!」

「「行ってきます!」」


 やがて俺達は魔法陣の輝きに包まれる。

 オケノス様は俺達の姿が見えなくなるまで手を振っていた。

 とても良い神様だ。

 こうして俺は、女神リメアと共に再び異世界へと向かったのだった。


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