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068 ムキーッ!

 お昼ご飯を済ませた俺達は、歩みを再開した。

 少しすると、眼前に地面が輝いているような光を感じる。


「なんだあれ?」


 俺は疑問に思って問う。


「あれはおそらく湖だな」


 湖か。

 太陽の光が水に反射して、光って見えたって訳だな。

 てかツユ、なんで分かったし。


「む、なぜ分かったのかと言う顔だな。忘れたのか? 私の職業は探検家だぞ」


 フィールドスキルかな。

 そういえばツユ、水面知覚とかいうスキル持ってたな。

 だからか。


「湖! マジか!」


 それを聞いたカゲトが、喜悦の声を上げる。


「なぁ皆! そこまで競争しようぜ!」


 えぇ? 競争?

 俺はパスで。

 そう言おうとしたが。


「良いね! やろうやろう!」

「お主ら、私に勝てると思ってか? これでも、冒険者としてはこの中で一番長くやってるのだぞ?」


 おやおや、皆さん乗り気のようですね。


「よっしゃ! じゃあ……」


 カゲトが大きく深呼吸をする。

 そして


「俺一番!」


 真っ先に湖の方向に駆け出した。


「あぁ! ずるい!」


 リメアが軽く文句を言うと、カゲトを追いかける。


「ったく、奴らは……私もやるか。ミツル、ついてこいよ」


 そんな捨てゼリフを残して、ツユも行ってしまった。

 …………って。

 思いっきし置いていかれたんだが!?


「すぅぅぅぅぅぅ! はぁぁぁぁぁぁぁ!」


 俺は大きく深呼吸をすると、脚に脚力増強、腕に腕力増強の支援魔法を掛ける。

 そして背中を押すように、風魔法の魔法陣を練り上げた。


「やってやるぁぁぁ! 待てこのやろぉぉぉぉぉ!」


 俺は全力を持って、三人の後を追った。

 背後からの、獲物を伺う視線に気づく事なく……。


 ***



「はっ! やっぱし俺が一番だな!」


 先頭を走りながら声を上げる。

 振り返ると、後ろにはリメア、その後ろにはツユがいた。

 ミツルは……遥か遠くを走っている。


「アンタね! か弱い女の子相手に全力疾走って! 恥ずかしく無い訳!?」


 リメアが後ろで文句を垂らし始めた。


「仮にもか弱い女の子は冒険者しねぇだろ!」


 笑いながら言うと。


「ムキーッ! もう怒ったよ! 絶対追い抜かしてやる!」


 顔を真っ赤にしたリメアが、何かを唱え始めた。


「神聖術、階位四! 神速!」


 その途端、急にリメアの速度が上がり、追い上げてきた。


「うおお!? ずりぃぞリメア!」


 やがて俺に追いつくと、並走しながら。


「ふふん! 調子乗っちゃってるから抜かれるんだよ! ざまぁないわね!」


 そのまま俺の前に出る。


「くっそぉぉ」


 追いつけねぇ!

 早すぎる!

 てかなんだよそのトンチキ技!

 俺は再び後ろをみる。

 すると今度は、ツユがみるみる内に迫ってきた。


「カゲト! お主は少し私を甘く見ていたのでは無いか!」


 今度はツユに並んで走られる。


「残念! 私には魔法があるのだ!」


 ツユの後方からは、何やら風のようなものが吹き出している。


「私は先にゆくぞ! さらば!」


 ぐんぐんとスピードを上げ、ツユにまで抜かれてしまった。

 魔法ずりぃ! てかあんな重そうなバックパック背負って何であんなに速く走れるんだ!

 湖は目視できるまで迫っている。

 距離的にはあと400mほどだろうか。

 このままでは三番手で終わってしまう!

 そう焦っていると、後ろから再び足音が近づいてきた。

 まさか……ミツルか!? ミツルにまで負けるのか!?

 再び背後に視線を向けると、凄い勢いで近づいてくるミツルと目が合った。

 俺は視線を前に戻し、全力で走りながら叫ぶ。


「ミツルには絶対に負けねぇぞぉぉぉぉ!」


 その言葉に対して返ってきた言葉は、予想外のものだった。


「それどころじゃねぇぇぇぇぇぇぇ!」



 ***



 俺は絶賛、ヘルハウンドに追いかけられていた。

 それも三匹。

 鳥肌もんである。

 一匹でも大変だったのに、三匹である。

 ちびりそうである。

 俺は決死の思いで走り続けると、やがてカゲトの背中が見えてきた。


「ミツルには絶対に負けねぇぞぉぉぉぉ!」


 そう叫んでいるのが聞こえる。

 しかし、それどころでは無かった。


「それどころじゃねぇぇぇぇぇぇぇ!」


 俺の声に、怪訝な顔で再びこちらを振り向くカゲト。


「どう言う意味だぁ!?」


 そう言った後、カゲトは俺の後ろを付けてくる三匹の犬っころに気づいたようだ。

 顔がみるみる内に焦燥感を帯びる。


「カゲトぉおぉぉおぉお! 走れぇぇぇ!!」

「ミツルお前ぇぇ! 何でそんなの連れてきてんだぁぁぁぁぁぁ!」


 カゲトは立ち止まりこちらを向くと、ロングソードを鞘から抜き、構えた。

 おいおいおいおい!? 三匹を一人で相手にする気か!? 無茶だ!

 俺はすれ違い様にカゲトの腕を思いっきり引っ張って、無理やり走らせた。


「うおぉ!? 何すんだ!! 転んだらどうすんだよ!!」


 カゲトが激昂する。


「勝てない! 勝てないよ! 逃げる! 逃げるんだよ!」


 俺は言いながら、カゲトにも腕、脚力増強の支援魔法とプロテクトを展開する。

 俺のプロテクトだとすぐに破られてしまうだろうが、無いよりましだろう。


「逃げる!? どこへ!?」


 カゲトがロングソードを鞘に収めながら言う。


「とりあえず合流! 皆と合流!」


 湖まで全速力で駆ける。

 少しすると、湖の畔で手を振るツユとリメアの姿が見えた。

 やがてこちらの状況に気づいたのか、二人とも武器を構える。


「ストーンフォール!!」


 魔法の射程圏内に入ると、ツユが魔法を唱えるのが聞こえた。

 背後のヘルハウンドの頭上に、岩石が生成される。

 それは砕けて雪崩れ、三匹に命中した。


「キャン!!!」

「グガァァァ!」

「ガルルルル……」


 ヘルハウンド共は、落下してきた瓦礫に頭をぶつける。

 そして足を引っ掛けて、体勢を崩した。

 その間に俺とカゲトは、池の畔に到着する。


「プロテクト!」


 ツユが全員に展開する。

 俺もそれに合わせて、全員に腕、脚力増強の支援魔法をかけた。

 体勢を立て直したヘルハウンドが、目前にまで迫っている。


「来るぞ!!」


 ツユの声に、全員が構える。

 ツユはバッグの中から錬成したアイテムを取り出すと、ヘルハウンドに投擲する。

 それは中央の一匹に命中し、破裂した。

 真ん中のヘルハウンドが倒れる。

 しかし、両側の二匹はその横をすり抜けて向かってきた。

 右の一匹はカゲトに、左の一匹はリメアに飛びかかる。


「おらよっっっと!!」


 カゲトは盾で攻撃を防ぎ、間髪入れずにスラッシュを発動した。


「グルァァァァァァ!!!」


 支援魔法によって強化されたその薙ぎは、体を上下に裂く。

 やがて一匹は煙となって消失した。


「こんのっ!」


 一方リメアも、双剣をクロスさせて攻撃を防ぐ。

 しかし反撃をしようとしたところで、後ろに跳んで避けられてしまった。

 俺は杖に魔力を込め、その一匹にマジックボールを放つ。

 空中に跳んでいたヘルハウンドは、何もすることが出来ず。

 俺のマジックボールが直撃して、煙となった。


「ゼェ……ゼェ……」


 苦しい。

 息切れが激しい。

 命の危機を感じ、今まで出した事のない速度で走っていた俺は、体の限界を感じていた。


「ゼェ……ゴホッ! コホッ! ゼェ……」


 息をするのもやっとだ……。


「アォォォォォォォォオオン!!!!」


 突然! 前方から大きな遠吠えを聞き、前方に目を向ける。

 ツユの投擲アイテムで怯んでいたヘルハウンドだ。


「うるさいわ……ねっ!」


 リメアが放ったマジックボールが、最後の一匹に命中する。


「グガァア!? ァァァ……」


 最後の一匹も息絶え、煙となって消滅した。

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