067 妙な話だな
「ただいまぁ」
「ただいまぁ、じゃない!」
リメアが帰ってくるや否や、俺はリメアの両肩を掴む。
「逃げたよね、ねぇ逃げたよね」
「えぇっと……な、なんのことかな?」
とぼけやがって。
「まあまあ、良いではないか。リメアよ、ご飯、もうできてるぞ」
「ホント!? わぁ! 豪快! 美味しそう!」
リメアが舌舐めずりをする。
「食べて良い!? 食べて良い!?」
全く、元気だなぁこのバ神様は。
でもまぁ、良っか!
「よし! じゃあ食べよう!」
俺は宣言する。
「おっ! 待ってたぜ! 頂きまーす!」
カゲトが真っ先にお肉にかぶりつく。
「私も! 頂きます!」
続いてリメアもかぶりついた。
「お主ら、喉に詰まらせるなよ」
ツユもそう言って笑いながら、一口目を口に入れた。
「じゃあ俺も……頂きます」
俺達の朝は、こうして始まった。
***
ディテクに向けて出発してから二時間程。
「でな? それ、なんだったと思う?」
「えーっと……『アップルパイ』……とか?」
「正解はな、『ゴーヤチャンプル』だったんだ!」
「あははは! なにそれ!」
…………カゲトとリメアは一体なんの話をしてるんだ。
アップルとかゴーヤとか。
まるで見当がつかん。
「奴らは何の話をしているのだ」
「さあ……? ねぇ二人とも、さっきから何の話してるの?」
「お! ミツルも聞きたいか? 俺の学校での出来事なんだけどな?」
「皆、待て。前から何か来る」
ツユの合図に、皆が立ち止まった。
確かに前から、何やら聞こえてくる。
「人が喋ってる感じじゃない?」
リメアが言う。
確かに、人の声のようだ。
「冒険者だろうか」
俺達は、ツユを先頭に再び歩み出す。
少しすると、前方に四人の男が見えてくる。
見たところ、冒険者のようだ。
「こんにちは」
「こんにちは」
「こんにちは!」
「こんちはっす!」
俺達は各々、挨拶をする。
前の四人も、それに気づいて手を上げて返事を返した。
「お前ら、アドベルンから来たのか?」
チェストプレートを身につけ、先頭を歩く大柄な男が話しかけてくる。
「あぁ」
「そうか! 俺達、ちょうどアドベルンに向かってるとこなんだ。道中、何かあったか?」
今度は、その後ろの盗賊風の衣服の男が問う。
「基本は問題なかったですよ。スライムとかイノシシとかです」
俺は言って、続ける。
「ただ、ヘルハウンドが襲ってきましたね。俺、その時に脚抉られちゃいました」
傷があった位置を指差し、言った。
「ヘルハウンドだ? 夜に襲われたってのか」
今度は僧侶風の男が言う。
「いや、昼間にだ。それも一匹で」
ツユの言葉に、一同は困惑した様子を見せる。
「ヘルハウンドが一匹で真昼間にか。妙な話だな」
「いや、襲われた此奴は魔法持久力がやたら高いのでな。それが原因だろう」
「なるほど。気を付けるよ。ありがとう」
チェストプレートの男が軽く会釈をする。
「そちらは、何かありましたか?」
今度はリメアが訊く。
「特に異常は無かったなぁ……」
「強いて言うなら、小屋の結界魔法用の装置が劣化してて、魔力が流れにくくなってるくらいか」
「そうですか。ありがとうございます」
リメアが丁寧にお礼を言う。
「おう! じゃあな!」
「あぁ、またどこかで」
男とツユはそう挨拶をする。
男達と俺達は、手を振ってその場を後にした。
***
それからしばらく歩き、やがて太陽が頂点に達する。
そろそろお昼の時間だろうか。
そんな時俺達は、かなりキツイ傾斜を登っていた。
「ううぅ……疲れたぁ……」
リメアが弱音を吐く。
いつもなら煽ってやる所だが、俺の体力もかなりヤバかった。
「ハァ……ハァ……」
「お前ら、ホントに体力ねぇのな」
カゲトが言う。
「まぁ頑張るのだ。登りきったら昼食にしよう」
ツユはそういうと、ずんずんと先に進んで行く。
「待っ……待って……」
ツユとカゲトが早すぎる。
俺達、置いていかれちゃうって!
置いていかれてはしょうがないので、俺は自分と隣にいるリメアの脚に、脚力増強の支援魔法を掛ける。
「あっ……少し楽になった……ありがとう……ミツル……」
リメアが途切れ途切れに言う。
「とりあえず……ツユとカゲトに……追いつかないと……」
俺はそう返すと、最後の力を振り絞って丘を登った。
***
「よく頑張ったな。では昼食にしよう」
何でツユはそんなに余裕そうなんだ。
地面に仰向けになりながら思う。
隣には、俺と同じく地面に倒れて肩を上下しているリメアがいた。
「お前ら体力ねぇなぁホント」
カゲトが俺達を上から見下ろし、いってくる。
「うるさい……わね……何度も……ゼェゼェ」
リメアが何やら反論しているのが聞こえる。
しかし俺には、その力さえ残っていなかった。
十分後……。
「どうだ? もう良いのでは無いか?」
寝っ転がったままの俺達を覗き込み、ツユが言う。
「いやぁ……風が気持ちいいなぁ……」
「そうだねぇ……」
俺達の反応を見て、ツユはやれやれといった表情を見せる。
「おい、ツユ。こいつらだめだ」
おいカゲト。
ダメとはなんだダメとは。
「そうだな。あと三秒数えて起き上がらなかったら、此奴らだけ今から体力作りの為に走ってもらおう」
ツユさんが突然恐ろしい事を言い出す。
それを聞いた俺達は、ほぼ同時に勢いよく起き上がった。
「「元気百倍!」」
「お前ら、そんなハモリ方あるかよ……アンパン○ンかっ……!」
カゲトが笑いを堪えている。
訳のわからないという目で俺達を見てくるツユ。
そんな感じで、俺達はお昼を過ごした。




