059 それどういう仕組み?
…………ん?
どういうことだってばよ。
俺はパンを飲み込むと、ツユに質問をした。
「つまり、どういうこと?」
「挑発系のスキルは、敵味方関係なく効力を発揮するのだ」
それって、仮にカゲトが挑発を使ったら俺達も攻撃しちゃうってこと?
「それどういう仕組み?」
「スキル使用者を見ると、無性にイライラしてくる」
「「…………え?」」
ツユは続ける。
「挑発系のスキルはデバフ系統の魔法に属する。相手の魔力を乱し、精神に異常をきたさせるのだ」
うん。
「そして挑発系スキルの厄介なところは、無差別にデバフを振り撒く所にある」
何それ欠陥技じゃん。
「じゃあなんだ? 俺がそのスキルを覚えて使ったとしても、お前らも俺にムカついて殺しにかかって来るってか」
「あぁ」
カゲトの疑問に、平然と答えるツユ。
「何それ、俺そんな技絶対覚えたくねぇぞ」
そりゃそうだ。
俺もそんな技覚えたくねぇ。
「挑発系スキルにはランクがある。人間が耐えられる程度のデバフなら、使っても問題は無い。……まぁ、ヘルハウンドは我らと魔法抵抗力は殆ど変わらんから、あの状況で使ったらもれなく我らもカゲトの敵だったがな」
「なんだよそれ! 意味ねーじゃねぇか!」
カゲトの反論は超ごもっともである。
「まぁな」
「じゃあなんでその話振ったんだよ」
俺が言いたいことと全く同じことをカゲトが言う。
「偵察スライムとかには有効なのだ。だから……」
珍しくシュンとなるツユ。
「もぉ皆、喧嘩しないの」
おにぎりを食べ終えたリメアから声がかかる。
「せっかくのピクニックなんだから」
「いや、ピクニックじゃ無いけどね」
そんな会話をして、笑い合う。
「じゃあ私もうちょっと寝るから、出発する時起こしてね」
そう言うと、女神様は再び寝始めた。
寝不足とはいえ、こりゃあ昼寝の神様だな。
それから三十分くらい、俺達は軽い休息を取った。
***
「よぅし! しゅっぱーつ!」
ちょっと寝ただけなのに、元気だなぁこの昼寝の神様は。
「ここからは暗くなるまで歩き通すから、体力は温存しておけよ」
「はーい!」
無邪気だなぁ女神。
それからしばらく歩いて、話題はクエスタに関したものとなった。
「あいつさ、魔力吸うじゃん? みんなバタバタ倒れた時はびっくりしちゃったよ」
俺の話を真剣に聞く三人。
「そっか、ミツルは動けたんだっけか。俺ぁ魔法持久力っての低いらしいし、気づいた時には医務室のベッドだったなぁ」
「私もだ。やはり、奴と対峙するのなら、まずはあの魔力を吸い上げるスキルをなんとかする必要がありそうだ」
ツユが、顎に手を当てて言う。
「ツユちゃん、ピロードおじさんが言ってたんだけど、あの技はデバフの類いに似てるんだって」
「デバフか……。やはり、デバッファーでない以上、私達ではあの技は受けられないな」
そう言ったあと、ツユは顔を上げて、俺の方を見る。
「あの後お主はどのくらい耐えたのだ」
うーん。
あの時は必死に戦ってたからなぁ。
「五分くらい……かな?」
「その間、魔法は撃てたか」
「いや、撃とうとしても吸収されちゃった。自分に支援魔法を掛けるくらいだったら出来たけど」
支援魔法もギリギリだったけどね。
「どーすんだよそれ。これでそのディテク公国……だっけ? に行ってクエスタを見つけたとして、どう戦うってんだ」
カゲトの言うことはもっともである。
「皆デバッファーに転職するとか?」
リメアが提案する。
だが。
「私とカゲトはデバッファー適性を持ち合わせていないぞ。転職費用もかかるし、何より慣れていない職業での戦闘は危険すぎる」
どうするかなぁ。
「とりあえず今後の課題は、クエスタの居場所を突き止める事と、奴とどう戦うかってこと?」
「そうだな」
やる事が明確になってきたな。
「というかそもそも、そのディテクでの失踪事件はクエスタと関係あるのかしら」
「リメアが言ったことじゃないか」
「いや、そうなんだけどさ」
「……まぁ今は手掛かりらしき物は殆ど無いからな。そう信じるしかない」
そうだ。
手掛かりがない以上、目の前のものから疑るしかない。




