055 調査団一行②
「ギャラリャリャリャリャ!!!」
そいつが現れたと同時、盗賊の罠が発動。
ロープがそいつの体に巻きつき、拘束した。
倒れた先には、忍者の巻いた魔器菱。
「ギャラララリャァァ!!」
魔器菱がグサグサとそいつに刺さり、悲鳴を上げる。
「ギャリャァァ!!」
間髪入れずに、団員が今まで練り上げた渾身の魔法、スキルを放とうとするが。
「あ、あれ!?」
「なんだ!?」
各々の魔法が離散し、スキルが消失する。
私は奴をみて、状況を把握した。
「魔力を……吸い上げている……!」
あらゆる属性の魔力が、奴の元に流れ込んでいる。
「皆さん! 魔力乱流です! 辺りの流れが乱れてます!」
グラスが大声で告げる。
私はその言葉に、補足をした。
「奴が乱流を引き起こしている! 魔力は奴に流れ込んでいるぞ!」
一筋の汗が頬を伝う。
天使のような見た目で、頭には輪がある。
だが、輪は白と黒が流動し、目玉は今にも溢れそうだ。
天使のゾンビ、とでも言うべきだろうか。
その悍ましい姿の怪物は、ロープでの拘束を解こうと、もがいていた。
魔法で編まれたロープは、奴に触れて吸収され、融解し始めている。
これでは、時間の問題だ。
そんな時、何かの魔法と共に、奴の動きが鈍くなった。
「これは……!」
デバフフィールドだ。
私は、発動主の方を振り返る。
「私はデバッファーですよ? デバフや吸収の類いは効きませんとも」
いくらデバッファーといえど、耐性の習得にはかなりの鍛錬が必要である。
ピロード氏が相当の手練れなのは、もはや言うまでも無かった。
「おりゃぁぁぁぁぁぁあ!」
「ギャラギャラララ!!」
コンマ氏も、奴の元へと走り出し、両手の剣から斬りつける。
「お前ら! 何ぼーっとしてんだ! 魔法やスキルがなくとも、近接の奴らは攻撃出来るだろうが!」
私はその言葉に、ハッとした。
得体の知れない魔物。
魔力を吸収し、魔法やスキルの発動を無効化する。
だが、コンマ氏の攻撃は確かに奴に届いている。
倒せないわけじゃないはずだ。
「総員、構えろ! 魔法系統職の者は下がっているんだ!」
私が言うと、バッファーと探検家が後方に下がる。
それと同時、近接攻撃班と斥候班による、攻撃が始まった。
「ギャラリャリャリャァァァァア!!」
ついにロープが解け、奴が反撃に出る。
私はそれに割って入り、盾で受け止めた。
「っ……!」
一撃が重い。
デバフが掛かっていてこれなのだから、恐ろしい。
私は盾を押し返す。
いつもならスキルで反撃できるのだが、押し返すことしかできないのがもどかしい。
「おりゃあ!」
と、後方で状況を観察していた探検家が、ダメージのポーションを投げる。
「ギャッ!?」
「団長! ポーションなら無効化されません!」
その言葉に真っ先に反応したのは、コンマ氏だった。
「よしっ、少し持ち堪えてろ! 店からポーションありったけ持ってくる!」
そう言ってコンマ氏は奴から離れようとするが。
後退しようとした一瞬の隙を、奴は見逃さなかった。
「ギャラリャリャラリャラリャァァ!!」
鋭い爪の斬撃が、襲う。
動きは鈍いが、それでもコンマ氏に届くまでは十分な速さだった。
「まずった……!」
コンマ氏の、小さな悲鳴が聞こえる。
だが。
「させませんよ」
奴の腕の動きが、さらに鈍った。
すんでのところで、回避する。
「助かった、ピロード」
「気をつけてくださいよ。効果を一瞬上げるだけでも、疲れるのですから」
ピロード氏の額には、汗が滲んでいる。
そろそろ、魔力切れが近いのだろう。
早く奴を倒さねば。
コンマ氏は、魔法の使える範囲まで走ると、テレポートで消えていった。
「ギャラララリャァァ!!!」
と同時、奴の手のひらに、魔力の塊が生成される。
白と黒。
やはり、流動している。
「防衛班、集まれ! 何か来るぞ!」
魔法剣士が防衛魔法を使えない以上、盾を持つ我らで受けるしかない。
私は、魔法職以外の防衛職を集めると、構える。
「ギャラリャリャラリャラリャァァ!!」
奴の放ったそれは、私の盾に命中した。
「うおっ……っ」
重い。
スキルも使えない以上、自分の身一つで受けなければならない。
盾がバキバキと悲鳴を上げる。
「うおっ……りゃあ!」
盾を斜めに逸らし、魔法を受け流す。
それは森に入り、大きな爆発と共に消滅した。
その爆発の方向から、大きなバックパックを背負ったコンマさんが戻ってくる。
「団長さん! しっかり周囲を見てくれ! 危うく当たるとこだったぞ」
「すみません、これが精一杯でしてな」
コンマ氏はバックパックの中から、ポーションを取り出す。
「ほら、手伝え! これ全部投げるぞ!」
コンマ氏の呼び掛けに、後方で待機していた魔法職の者達が集まる。
そして、ポーションでの猛攻撃が始まった。
「ギャラララリャァァ!!!」
少しずつだが、確実に奴の体力は減っている。
「とどめだぁぁ!!」
「ギャァァァァァアアア!!!」
最後の一撃を決めたのは、ストルだった。
大剣の斬撃が、奴の首を刎ねる。
やがて、奴は煙となって消えた。
「はぁ……はぁ……」
近接攻撃班の者達は、かなり体力を消耗したようだ。
魔力吸収が行われなくなり、やがてあたりに魔力が戻る。
「回復魔法が使える者は、怪我人の元へ頼む!」
私の声に、魔法職の者と回復のポーションを持ったコンマ氏が、駆けていった。
私はピロード氏の元へ向かう。
「大丈夫ですか?」
「えぇ。かなり魔力を消費しましたが……」
汗はかいているものの、立つ力は残っているようだ。
「団長さん。それよりもコンマさんを止めなくて良いのですか?」
「止める? なぜですかな」
「ポーション代、すべて請求されますよ? あの人はそう言う人です」
私はそれを聞いて、慌ててコンマ氏を止めに行った。




