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053 カーパンクウ

第二章、スタートです。

「中継地点の小屋は三日目の夜に到着できればと思っている」


 ツユが地図を指で叩く。

 歩きながら、皆でそれを覗き込んだ。


「じゃあ今日の夜は野宿ってこと?」

「そうなるな」


 それを聞き、リメアが項垂れる。


「結局寝不足のまま出発してしまった……」


 二日ともなると、目のクマがすごく濃い。


「明日と明後日さえ乗り切れば、明々後日には安全な小屋でぐっすり寝れるぞ。見張も要らないしな」

「え? 野宿は見張必要なのか?」

「何を言っているのだカゲト。当たり前だろう」


 それを聞き、今度はカゲトが項垂れる。


「マジかよ、じゃあ途中で起きないとじゃねぇか……」


 項垂れる二人を見て、ツユは溜息を吐くと。


「安全と言っても、比較的、と言うだけだ。もちろん魔物は出る」


 やれやれと手を広げた。


「そっかぁ……」

「ま、そうだよなぁ……」


 項垂れた二人が、力なく返事をする。


「そんな調子で大丈夫なのか? ここも魔物は出るぞ?」


 ツユがそんな事を言った直後。


 ──ヒュン……。


 風魔法の斬撃が俺達のすぐ横を通り抜け、前方の木に直撃した。

 飛んできた方向に、恐る恐る顔を向けると。


「ガー! ガー! ガー! ガー!」


 カラスの大群が押し寄せていた。



 ***



「またカラスかよぉぉぉぉ!」


 俺は走りながら叫ぶ。


「言ってないで、応戦するのだ!」

「あわわわっ、マジックボール!」


 リメアがマジックボールを放つ。


「グギャア!」


 一匹に命中し、墜落した。

 俺は皆に脚力増強の支援魔法と、プロテクトを展開する。

 ツユよりも魔法持久力が高い俺が、防衛魔法を使用すべきと考えたからだ。

 しかし……。


「ガー! ガー!」


 カラス達の猛攻に、プロテクトが音を立てて割れる。

 貼り直しても、割れる。

 これじゃあキリがない。


「ミツル! もう良い! 私が張る!」


 俺に代わって、ツユがプロテクトを展開した。

 俺のものとは違って、カラスの猛攻を問題なく受け止めるツユのプロテクト。

 これも、俺の魔力の低さが原因か。

 やっぱり魔法持久力だけあってもダメなのね。

 ちょっと凹むなぁ。


「おいミツル! お主も戦え!」

「え、あ! はい!」


 ツユは俺に喝を入れると、魔法を放つ。


「スパーク!」


 ツユの手に持つワンドから放たれた電撃が、一匹を襲った。

 命中したカラスはビリビリと痺れ、墜落する。

 俺も応戦しなければ。

 走りながら杖の先に魔力を練り、ボールを生成する。


「食らえ!」


 一匹に命中するが、怯んだあと体勢を立て直される。


「威力がほしいぃぃ!!」


 めちゃめちゃもどかしい。

 当たってるのにぃ……。


「俺もいくぞぉ!」


 突然、俺の横を走っていたカゲトが向きを変え、カラスの方向へ飛び上がる。

 脚力増強で強化されたカゲトは、2m程の高さの跳躍を見せた。


「スラッシュ!」

「「「ガギャアア!!」」」


 群れに突っ込んだカゲトは、スキルを発動。

 低空飛行をしていた三匹のカラスが、六つの肉片となり地に落ちた。

 カゲトが、俺達の元に走って戻ってくる。


「どうだぁ!!」

「凄いじゃないカゲト!」

「あぁ、お主は本当に、剣の才能があるな」

「これも柔道のおかげだな!」


 いや、柔道関係ないだろほぼ。

 まぁ確かに、今のは俺には真似できない。

 運動面では敵わないな。

 俺も、成り行きとはいえ冒険者という職についた以上、体力はつけておくべきかもな。

 現に今……。


「ハァ……ハァ」

「おいミツル、もう息切れかよ!」


 まだまだ余裕の表情のカゲトに言われる。


「ミツルったら……貧弱なんだから……ゼェ」


 そう煽ってくるリメアも、なんか息切れしてるけど。


「お主ら! ディテクに着いたら体力作りだ! この程度でバテてたら、話にならん!」


 うへえ。

 運動やだよう。


「ほら、お主ら! 攻撃の手を休めるな!」


 ツユに言われ、俺とリメアは再びマジックボールを生成し、放つ。

 そうして少しずつ数を減らしていたのだが。


「ガー! ガー!」


 カラスが突然向きを変え、林道から森へと入って行く。


「ハァ……ハァ……」

「ゼェ……ゼェ……」


 い、命拾いしたぁ……。

 息切れで死にそう。

 リメアも俺と同じく、膝に手をついて肩で息をしている。


「なんだ? あいつら急に向き変えて」


 カゲトがカラスの方を見て、疑問を漏らす。


「空間把握」


 ツユがカラスの方向に、魔力の波動を放つ。


「あれは……カーバンクルか?」

「「「カーバンクル?」」」

「ああ、額に魔石を持った魔物だ」


 おでこに魔石か。


「魔鉱石と違って希少で、額の魔石は高値で取引される。レアモンスターだ。その輝きに惹き寄せられたのだろう」


 ツユがカラスの大群を指差しながら言う。

 だが、そのカーバンクルとかいう魔物に惹かれたのは、カラスだけではなかった。


「レアモンスター!? 魔石!? 待ってろカーパンクウ! 俺が行く!」


 カラスと同じ方向に走り出すカゲト。

 それをツユが、服の首筋を掴んで止めた。


「ぐぎゃ!」

「待てカゲト。せっかくカラスから逃げられるチャンスなのに、お主まで行ってどうする。あと、カーパンクウではなくカーバンクル、だ」


 ツユの指摘に、不満を告げるカゲト。


「だってよ、希少なんだろ? 金になんだろ?」

「自分の身よりも金を優先するのか、お主は」

「けどよ……」

「うだうだ言ってないで、今のうちに距離を取るぞ」


 ズカズカと早足で進み始めたツユに、着いて行く。

 ったく、カゲトってガメツイところあるよな。

 スライムダンジョンの時も魔鉱石いっぱい持って帰ろうとしてたし。

 ──ともかく、こうして最初の危機を回避した俺達は、目的地に向けて歩みを続けた。

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