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051 知らないよ

「なんなんだあそこは!」


 ツユが憤る。

 あの後、脅された俺達は、中級の治療ポーションを二十本も買わされた。

 支出は60000ルン。

 パーティーメンバー全員のお財布の中身が、見事に吹き飛んだ。


「私の全財産ほぼ取られたぞ! 400ルンしか残ってない! あんな粗悪品のために! ミツル、どうしてくれるのだ!」

「知らないよ俺だって!」

「人付き合いは良く考えろ!」

「んなもんわかるわけないでしょ!」


 俺達が言い合っていると。


「ちょっとミツルもツユちゃんも、喧嘩なんかしないの!」

「いつもはリメアとミツルが喧嘩してるのに、今日はどうしちゃったんだよツユ。らしくないぜ」


 俺達はハッとして、黙る。

 結局あのあと、店の前の本に『良い買い物でした!』って書かされた。

 全部コンマの計算通りだったってわけだ。


「彼奴、薬草採集なんかで新人冒険者に恩を売るとは……!」


 まさか俺も、コンマさんがあんな奴だったとは思わなかった。


「あれって脅迫罪だよね? 俺、この町の警備隊の人に言ってきたいくらいだよ」

「やめておけ。どうせ、注意して終わりだ」


 くそぉー……。完全にやられた……。

そうだよなぁ。薬草採取、都合良すぎるとは思ってたんだよなぁ。


「私寝不足だからあんまり頭回らないんだけどさ、なんでツユちゃんもミツルも怒ってるわけ?」

「そうだよ。俺達なんかしたか?」


 本当にこの二人はなんもわかって無いんだな。

 俺は両手に抱えたポーションを掲げる。


「これ、色見てよ。効きが悪い粗悪品だ。これ全部」

「「そうなの!?」」

「ミツルが騙された所為だからな」

「はぁ!? そりゃ無いよツユ! 今の発言は撤回だからな!」


 怒りが爆発した俺は、ポーションを地面に散らして、ツユに掴みかかりそうになる。


「ちょっ! タンマタンマ!」

「ミツル! どうどう!」


 カゲトとリメアに、両手を掴まれ止められた。

 俺はハッとして、腕を下ろす。


「本当どうしちゃったのさ」


 リメアにそう言われるが、何も言い返せない。

 ツユも、少し俯き気味で歩き始める。


「な、なぁ、なんだよこの空気。俺耐えられねぇよ……」


 そんなカゲトの呟きを聞きながら、俺達はギルドに向かった。



 ***



「お金がない!!」

「リメア、ミツルとツユが金ねぇって言ってただろ?」


 宿の受付で、カゲトが項垂れるリメアに言う。


「また馬小屋? クソッ! 調査団め……早く帰れ……!」


 リメアが邪神みたいになっている。

 ふっと横を見ると、ツユと目が合った。


「「…………」」


 目を逸らされる。

 そっちがその気なら、俺も謝らないからな。

 結局宿は取れなかったので、夕食を……


「お金がない!!」

「リメア、このやり取り、さっきもしたぜ?」


 夕食すら取れなかった俺達は、そのまま馬小屋に向かった。



 ***



「本当は旅の非常食にって思ったんだけどね」


 リメアが、アドベルイモのスティックを貪りながら言う。


「しなしなでもうまいな!」


 確かに、だいぶしなしなになっていたが、まだ味は落ちていなかった。


「やっぱり食料は持っておくべきだね」

「さっすが女神様!」


 リメアとカゲトは盛り上がっているが。


「「…………」」

「なぁミツル。謝ったらどうだ?」

「ツユちゃん? 明日もこれじゃあ私達超気まずいんですけど」


 リメアとカゲトが、俺達を見て言う。

 俺とツユは視線を合わせるが、お互い謝る事は無かった。

 そのまま俺達は、馬小屋に入って眠る事にした。

 …………が、カゲトのイビキと悪臭で、よく眠れない。

 正直、ツユの事も気になっている。

 俺は馬小屋から出て、風を浴びる事にした。

 馬小屋の扉を開けると、ツユが座って空を眺めていた。

 …………どうするか。

 話しかけるべきか。

 …………。

 このままも嫌なので、話しかける事にする。


「えっと……ツユ?」

「…………」


 反応が無い。

 まだ怒っているのだろうか。


「ツユさん? えっと、」

「さっきは悪かったな、ミツル」


 突然謝られたので、反応が遅れる。


「あ、いや、うん。俺も悪かったよ」


 ──少しの沈黙。


「私も全財産持って行かれて、動揺していたのだ」


 そう言って、俺に笑いかけたツユを見て、なぜだか泣きそうになってきた。


「俺も、本当に悪かった」


 俺は深く頭を下げる。


「私も、な」


 ツユが手を差し出してくる。

 俺はそれを握ると、一振りした。


「なんだ……その、謝るタイミングを切り出せなくてな……。私の悪い癖だ」

「良いさ。俺も自分があんな短気だったとは。自分自身に驚いてたり」


 馬小屋で寝たのもあって、疲れが取れていないのかもしれない。

 クスッと笑うツユにつられて、笑ってしまう。


「寝れないのか?」

「うん。獣臭いし、カゲトのイビキもうるさいし」

「そうか。私もだ」


 俺達は、地面に寝転がる。

 安心したら、眠くなってきた。

 そして、そのまま眠ってしまったのだった。

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