005 テ、テレポートでここに!?
次の日。
俺はいつもより長く睡眠をとり、食堂でスパイダーボイルを食べた。
ギルドの外に出ると、深呼吸をする。
「……ふぅ」
右手に力を込めると、自分の家のリビングの風景を思い浮かべた。
足元に優しい光を放つ魔法陣が現れ、それは次第に輝きを増していく。
魔力が体から抜けていく感覚。
力が削がれていき、徐々に体力が削られる。
疲れてきた……。
魔法陣が現れてから三十秒程。
クラクラしてくる。
すると、何かに弾かれるような感覚と共に、魔法陣が消えてしまった。
「はぁ、はぁ、」
息切れが激しい。
「何かに……弾かれた?」
その後も何度か試してみたが、やはり何かに弾かれて捉えられない。
「やっぱり地球からここまでは一方通行、なんだろうな……」
リメア様が入口の世界だなんだと言っていた記憶が蘇る。
やはり諦めた方が良いのだろうか。
しかしここでまた閃いた。
天界からここに来る時、リメア様は右手を上げて魔法的な何かを発動していた。
ならば、天界だったら行けるのではないか。
天界に行く必要など微塵も無いが、行けるのならばもう一度行ってみたい。
俺は今度は行き先を天界に変えて、再びテレポートを試してみる。
魔法陣が現れ、先ほどと同じように足元で輝きを増して行く。
クラクラしてきたが、その後すぐ…………
天界をがっちりと捉えた。
すると俺の体が光に覆われていく──。
疲れの溜まった体に力を込めて、前を見上げると。
「んー、おいひい」
床に寝っ転がり、ポテチを食べながらゲームをしているリメア様の姿があった。
床にはでかいコーラのボトルも転がっている。
「……」
俺はリメア様をみる。
本当にリメア様だよな?
「…………」
「♪♩♫♬」
音楽が聴こえてくる。
聞き覚えのあるRPGのBGMだ。
「……………………」
「……?」
やっと俺の視線を感じとり、こちらを向いたリメア様は
「ヘ!? あ、あなたは、えぇっとミミミツルさんじゃないですか。ど、どうしたんですか? というか、一体どうやってここに?」
ものすごくわかりやすい動揺を始めた。
「いや、テレポートを試してみたら戻ってこれちゃったんですが……」
てかこの女神様、ゲームしてたよな。
普段からこうやってゴロゴロしているのだろうか。
「テ、テレポートでここに!?」
リメアは驚いた声を出し、さらに動揺し始めた。
「あなた本当に地球からの転生者ですよね……? 少しステータスカードを見せて貰っても?」
「もちろん良いですよ」
女神様ともあろうお方がこんなに動揺するものだろうか。
自分になにか人間を超越した能力でもあるのだろうか。
それとも欠陥ステータス?
期待の反面、ここまで動揺されると心配になってくる。
リメア様は深く深呼吸をし、ゲーム機を床に置くと、汚れていない方の手で俺からステータスカードを受け取った。
「これは……」
リメア様はステータスカードを凝視する。
「魔法持久力がこんなに高いなんて……」
魔法持久力? MPだっけか?
未だにそのステータスの意味、よく分かって無いんだよなぁ。
「あの、そのステータスって結構大事だったりします?」
「この"魔法持久力"は読んで字の如く、魔法の続く持久力。自身の魔力の保有量、そして効果範囲を表しています。地球には魔力が存在しないですよね? だから、転生者の方は魔法系統のステータスがどうしても低くなってしまうのですよ。しかし……」
再びステータスカードに目を向けたリメア様は、俺のステータスの表記に間違いが無いことを確認し、続けた。
「あなたの魔法持久力は、はっきり言って異常です。転生者が持つ保有量では無い。あの世界の魔法職の方たちと比較しても、かなり上位の保有量なのですよ」
これは……!
これは、チートというやつでは無いのか………!?
「ですが魔力自体は低いようですね、なぜでしょう?」
「え、あの……。魔力と魔法持久力って何か違いがあるのですか?」
「魔力は一度に使用できる魔力の量です。つまり"威力"と言ったところですかね」
つまりそれはゲームで言う、MPはやたらあるのに威力は低い奴……ってこと!?
なにそれ雑魚じゃん!!
結局欠陥ステータスかよ!!
期待した俺が馬鹿だった!!
てか魔力とか魔法持久力とか分かりにくいんだよ!
魔法威力とか魔力保有量とかに名称変えやがれ!!
「いや、待てよ? こう言うのは大体、使い道があるキャラのステータスだ。きっと俺にも、このステータスの使い道があるはず……」
そんなことを頭の中で巡らせていると。
「ブツブツ……」
「……」
声に出ていたのか、ちょっと引くような目で見られていることに気づいて我に返った。
「しかし本当に、天界まで人がテレポートしてくるとは思いませんでしたよ。それも約一週間前に送り出したばかりの転生者の方が」
「いや、僕も成功すれば良いなぁ程度の心構えだったんで、ここに再び来れたのは正直びっくりしています」
「こことあの世界は、地球のある世界と違って遮るものが存在しませんからね」
やはり地球には魔法で戻ることは出来ないのか。
諦めるしか……ないか。
リメアは俺の顔を見て、突然何かに気づいたように
「ごめんなさい」
と謝ってくる。
あれ、俺哀しい顔でもしてたかな。
あんまり自覚は無かったけれど、どうやら俺は思ってることが顔に出やすいらしい。
「なに謝ってるんですか。死んだのは僕の不注意のせいですし、死んだら終わりだと思ってたので、こうして転生することが出来ているだけでも感謝です」
俺の言葉を聞くと、リメアは微笑んだ。
そんな会話をしていると突然。
「リメア、そしてミツル君。君達に話がある」
声が響き渡った。
第三者の発言に俺が驚いていると、リメアはその声に対してこう答えたのだった。
「お父さん?」
……えっ! お父さん!?




