表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
47/82

047 私アンタを呪ってやりたい気分だよ

「うっ……ごほっごほっ……」


 朝。

 俺は目覚めて早々、強烈な獣臭にむせた。


「ぐがぁぁぁぁぁぁ……ぐがぁぁぁぁぁぁぁ……」


 ったく、こいつは。

 なんでこんなに爆睡できるんだ。

 隣で大きなイビキを立てるカゲトを一瞥し、小屋を出る。


「んぁー! 良い空気!」


 雨はすっかり止んで、空には陽が昇っていた。

 大きく息を吸う。

 馬小屋の悪臭が染み付いた鼻が浄化されていくようだ。


「ミツル。おはよう」


 外ではツユが先に起きて、何かをしている。


「おはよう。早いね。何やってるの?」

「魔法の練習だ」


 そういうとツユは『ウインド』と唱え、風魔法を放った。

 放たれた不可視の魔法が、草を撫でる。


「風魔法が苦手でな。こうしてクエストに行かない日は練習してるんだ」

「へぇ……」


 やっぱり魔法にも練習って必要なんだな……。


「そうだミツル。この間教えたスラッシュはもう使いこなせているか?」

「スラッシュ? ええと……」


 俺は小屋に立てかけていた剣を持ってきて、スキルを発動した。


 ──キュウウウウ……


「まだ少し魔力が漏れちゃってるかな」

「十分だ。音も小さくなっているし、確実に上達しているぞ」

「そ、そうかな……」


 なんだかむず痒くなり、頭を掻く。


「おはよぉぉぉ……」


 リメアが出てきた。


「おはよ……うっ!?」


 馬小屋から出てきたモンスターに、思わず驚きの声を上げてしまう。


「リメア、どうした。凄いクマだぞ」

「ゾンビみたいだね」

「なんですって!!」


 凄い勢いでリメアが掴みかかってきた。


「ちょっ! ちょっと! 怖い! 怖いって!」


 目も充血してるし! ホント、怖いって!


「一睡もできなかったの!! もう臭いしカゲトのイビキはうるさいし……」


 急に怒り出したかと思えば、急にぐずぐずとし出すリメア。


「なんで馬小屋なんかにぃぃぃ……うわーーん!!」

「え、ちょっ、泣くなリメア。大丈夫だから」


 なんか、情緒不安定だな。

 俺はリメアの背中を摩りながら、そんな事を思う。


「大丈夫なのか? これから野宿するのだぞ?」


 ツユが言う。


「知らないよ! そんなの! あぁ眠い眠い……」


 今度はイライラし出した。

 まぁ、気持ちは分からんでも無いけど。


「そうだミツル。お主に昨日、プロテクトを教えてやると言ったな」


 そういえば言ってたな。


「今教えてやる。プロテクトは、各自覚えておいた方が良いと思ったからな」


 確かに。

 魔法剣士じゃなくても、防衛魔法の一つくらい覚えておいた方が良いよな。


「ほれ、リメアもだぞ」

「え? 私?」

「そうだ。良いか? 防衛魔法は高度な魔法だ。まずは魔力を前方に展開するイメージで……」


 俺は言われた通り、前方に魔力を展開する。すると、あっという間にプロテクトが完成した。


「出来た」

「そうか、では次に……」


 ツユはこちらを一瞥して。


「出来ただと!?」


 いや、そんな驚くことある?


「お主は本当にセンスが良いな」

「そう? そんなに? えへ、えへへ……」

「………….アンタ、そのニヤケ顔止めた方が良いわよ」


 え、何、なんだよ、なんで二人してそんな引いてるんだよ。


「お、俺、そんなニヤけてた?」

「あぁ」

「うん」

「…………」


 俺はどんな顔をすれば良いのか分からなくなり、顔を覆った。



 ***



 プロテクトの練習を始めて、十分程。


「みてみてツユちゃん! なんか膜みたいなの出来た!」

「良いぞリメア、その調子だ」


 リメアのプロテクトが、徐々に形になってきていた。


「良い朝だなーーー! おはよう! みんなぁ!」


 喧しい声がして振り返ると、カゲトがニコニコ顔で小屋から出てきた。


「おはよう。凄いイビキかいてたけど、良くそんな爆睡できるよね」

「私もあれ程ぐっすり寝れるのは正直羨しいぞ」

「私アンタを呪ってやりたい気分だよ、カゲト」


 カゲトは各々の言葉を聞いて。


「俺そんなにぐっすり寝てたか?」

「「「うん」」」


 とぼけているが、この中でお前が一番元気じゃ無いか。

 それが立派な証拠だぞ。


「ところでみんな、何してたんだ?」

「リメアとミツルにプロテクトを教えていたところだ。お主も聞いておけ」

「プロテクトってあれか、防衛魔法ってやつ」


 カゲトは右手を出して、魔法の構えを取る。


「プロテクトぉぉ!」


 だが、何も起こらない。


「カゲトの魔法持久力は低いからな、習得には時間がかかるかも知れん」

「うげえ、マジかよ……」


 項垂れるカゲトを見て、俺とリメアは笑った。


「本当にお前、今日は元気だね」

「私なんか、一睡もできなかったのに」

「なんだリメア、寝てないの……かっ!?」


 カゲトはリメアの方を向き、驚きの声を上げた。


「…………ゾンビの方ですか?」

「なんですって!?」


 今度はカゲトとリメアが、腕四つの体勢で取っ組み合いを始める。


「この光景、先も見た気がするぞ……」

「そうだね……」


 俺とツユは、顔を合わせて静かに笑った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ