046 俺を置いて三人でハーレムか?
「なるほど。実験、ねぇ……」
リメアが顎に手を当てて考える。
「そうだリメア、お主も何か用があったのだろう?」
「そうだった。二人とも、これを見て」
リメアは地理に関する資料を広げた。
「ここが今私達がいる、ベルン共和国連邦ね」
リメアが示した場所には、三つの円が交差した形の国章が記載されている。
「で、ここがディテク公国」
ベルンから西の方向に、ディテク公国の物と思われる国章が記載されていた。
国土は、ベルンの三分の一程だろうか。
ベルンとディテクの間には、小さな丘が連なっている。
「月一で、商隊の馬車が往来してるみたい。でも今月は一週間前に行っちゃったらしい」
リメアが『観光 ディテク公国』と書かれた本を同時に開き、言った。
「事件の事については何かわかったのか」
「ううん、何も」
リメアは首を横に振る。
「そうか……」
ツユが顎に手を当て考える。
「まずはディテク公国に行ってみる、か。次の商隊はいつだ」
「一カ月後だね。馬車で三日間。乗車料は一人1500ルンって書いてある」
……さて、どうするか。
「ねぇツユ、ディテクまで歩いたらどのくらいかかる?」
「……五日程だろうな」
五日もかかるの?
その間屋根の付いた寝床はお預けってことだよね。
食料は? それにトイレだって……。
「なぁんだ、そんなもんか。行きましょう! 今すぐ!」
「ちょい待てリメア。次の馬車まで待っても良いんじゃない?」
俺の言葉に、少し考えるが。
「平気でしょ! 五日間くらい」
この楽観女神は!
俺はツユに視線を投げる。
……が。
「ここからディテクまでは強い魔物は殆ど出ないはずだ」
おいマジかよ、まさかのツユもそっち側なの?
「特に険しいわけでもない。森が続くが道はあるしな」
「休憩用の小屋も真ん中にあるみたい」
リメアが指差す所をみる。
ベルンとディテクの中間地点の辺りに、小屋があると記載されていた。
「ミツルもそれで良いよね?」
「えっ、いや、でも」
「良いよね?」
あ、圧が……顔は笑ってるのに、圧が……。
「は、はい……」
「よし! 決まり! それじゃあ早速準備するよ! 出発は明後日の朝!」
ううっ……。
圧に負けてしまった……。
そんなこんなで、俺達はディテク公国へ向かう事になってしまったのだった。
***
図書館を出た時には、もう夜になっていた。
雨はまだ止んでいない。
ツユのプロテクトに入れてもらって、ギルドに戻った。
観音開きのギルドのドアを押し開ける。
すると。
長椅子に腰掛け、何やら項垂れているカゲトがいた。
「あぁ!!」
俺達に気付くや否や、すごいスピードでこちらに向かってくる。
「みんなぁぁぁぁぁぁ!!」
そのままの勢いで、俺達三人にまとめて抱きついてきた。
「どこ行ってたんだよぅ……」
く、苦しい……。
てか……。
右腕に女神様の胸が!
左腕に発展途上なツユさんの胸が!!
正面にカゲトの汚ねぇ鼻水が!!!
「そ、そろそろ離して……」
「いや、離さない」
なんだよその膨れっ面は。
男のデレシーンは需要ないぞ。
「ミツル、どこ行ってたんだよ。俺を置いて三人でハーレムか? あぁ?」
めっちゃいじけてんなこいつ。
「そうなのよ! ミツルったらカゲトが居ないからって私達にいやらしい事を……」
「してないし!!」
「そうだぞリメア。幾ら我らがいやらしい目つきで見られたからって、話を盛るな」
「見てないし!!! ツユまで悪ノリやめろ!」
リメアとツユが、俺の反応を見てニヤニヤしている。
調子に乗りやがって……。
「おいミツル! ずる……良くないぞ! そーゆーのは!」
「カゲトまで本気にすんな! ほら、周りの注目が集まってるから! 俺、変な目で見られてるから!」
俺の反応を見て、カゲトまでケラケラと笑う。
「本当にもう……」
俺は怒る素振りを見せながらも。
「ふふっ」
なんだかんだで、この瞬間を楽しく感じた。
***
で。
辺りもすっかり暗くなったので、食堂でご飯を食べて、倉庫に向かおうとしたのだが。
「ミツルさん御一行! 待ってください!」
ギルドマスターに声をかけられ、歩みを止める。
「どうしました?」
「実は、調査団の方達で倉庫がいっぱいでして……」
え。
うそ。
「マジかよ! 俺達どこで寝りゃ良いんだ!」
カゲトが頭を抱えて唸る。
「大変心苦しいのですが、馬小屋に……」
「「馬小屋ぁ!?」」
今度は俺とリメアが同時に叫んだ。
馬小屋だって??
「まぁしょうがない。これから野宿だってするのだぞ? その為の練習だと思え」
動揺する俺達とは対照的に、ツユは落ち着きを払っていたのだった。




