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042 な、泣いてないから!

 ギルドは、いくらか賑わいを取り戻していた。

 倒れていた冒険者の三分の一程度だろうか。

 少しずつ、活気を取り戻している。


「お、ミツルさん、おかえりなさい」


 受付の窓口から、ギルマスの男が手を上げる。


「はい。ただいま」


 俺は濡れた髪を手でわしゃわしゃとかき回す。

 水滴が、ギルドの床にポタポタと落ちた。


「雨ですねぇ」


 ギルマスが、外の方を指差し言う。


「急に降ってきましたね」

「えぇ、調査団の到着、遅れるかもしれません」

「そうですか」


 ギルマスに会釈をすると、俺はツユとカゲトが寝ている医務室へと向かった。

 医務室の扉を開ける。

 そこには、ベッドの隣の椅子に腰掛け眠る、リメアの姿もあった。

 起こすのも悪いので、俺はベッドを挟んで向かい側の椅子に座る。

 俺はツユの顔を覗き込んだ。


「すぅー……すぅー……」


 ぐっすりと寝ている。

 俺はそのまま首を動かし、今度はカゲトの方を見た。


「ぐぅー……ぐぅー……」


 こちらも起きる気配は無い。

 魔力切れで倒れたのもあってか、宿で一緒に寝た時とは比べ物にならないほど寝相が良い。

 いや、気絶というべきか。

 俺は立ち上がり、そのまま寝ているリメアの元へ行く。

 そのまま顔を覗き込んだ。


「……んんっ」


 やべっ、起こしちゃったかな?


「ごめん、起こしちゃった?」

「ん? ……あぁ、ミツル……」


 眠そうに言って、目元を擦る。

 そんなリメアの目は、真っ赤だった。


「リメア、泣いてた?」


 冗談半分で言ってみる。

 寝てたから目が赤いんだろう。

 そのくらい考えれば分かる。

 だが、俺の言葉に対し、リメアは動揺したようだった。


「えっ、な、なんでさ」


 予想外の反応が来たな。


「いや、目が赤かったからさ」


 リメアが、少しムッとしたような顔になる。


「寝てたからだよ」


 まぁ、そうだよね。


「美少女の寝顔を眺めてたなんて、ミツルもなかなかに変態だよね」


 そんなに眺めてねーし。


「お前なぁ……」


 俺がリメアにツッコもうとした時、リメアが気づく。


「そう言うミツルこそ、目ぇ赤いじゃない」


 げっ。

 さっきまで泣いてましたなんて言いたくないなぁ。


「雨だよ雨。目に雨が入ったんだよ」

「本当かなぁ?」


 ニヤニヤしながら、リメアがからかってくる。


「ほ、本当だよ」


 俺がリメアに反論すると


「お主ら、ここは医務室だぞ。喧嘩するな」

「ツユ!」

「ツユちゃん!」


 ツユがベッドから上半身を起こしていた。


「どう? 調子は」


 リメアがツユに問う。


「大丈夫そう?」


 俺もリメアに続く。


「あぁ、少し体は痛いがな」


 良かった。

 あとはカゲトだけだ。


「私が気絶してから、どのくらい経ったのだ」

「半日くらいかな。俺が起きたのが日の出すぐくらいだったから」

「私はそれよりも前から起きてたよ?」


 リメアが、何故か誇るように告げる。

 いやいや、起きる順番とかどうでも良いから。


「で、だ。一体何故お主らは泣くほど喧嘩していたのだ」


 ツユの謎発言に、俺とリメアは顔を見合わせる。


「「…………」」


 俺達は一息おくと。


「「な、泣いてないから!」」


 完璧なハモリを見せた。


「それに、喧嘩もしてないし」


 俺はそれに補足を付け足す。


「そうか。なら良いのだが」


 ツユは辺りを見回すと、ベッドから降りる。


「ツユちゃん、まだ寝てても……」

「いや、そこに寝てるカゲトをベッドで寝かせてやろうと思ってな。二人とも、運ぶの手伝ってくれ」


 そういうと、カゲトの背中に手を入れた。

 俺とリメアもそれに続く。


「「「せぇのっ……!」」」


 うわっ、こいつ重っ!


「うぐぐぐっ……!」


 リメアがすごい顔になってる。


 ──ドォン!


「フゴッ……ぐぅー……ぐぅー……」


 重すぎて、かなり強引にベッドに投げてしまった。

 しかしカゲトはといえば、ぐっすりと気絶している。

 ……ぐっすりと気絶ってなんだよ。

 人間って、一度魔力切れを起こすとそんなにぐっすり眠るものなのだろうか。

 相当体に負担が掛かっているみたいだ。


「で、俺達、これからどうする?」


 正直、やることが無い。

 予定では、調査団がもうすぐ着くだろう時間だし、むやみな外出は控えるべきだろう。


「……私、お腹空いた」


 リメアが手を挙げる。

 そういえば、朝から何も食べていない。


「お昼でも食べに行くか」

「だな」

「良いね!」


 と言うわけで、俺達三人はカゲトをおいて食堂へと向かった。

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