040 天界への定期報告②
私は今日も、天界へと赴いた。
任務である経過報告のためだ。
いつものように、神聖術のオールテレポートを使って戻る。
「はぁ……はぁ……」
やっぱり、神聖術でも魔力をごっそり持っていかれる。
だけどミツルはあの時、普通のテレポートで天界まで飛んできた。
つくづく、あの魔法持久力はイカれているなと思う。
「お父さん……いる……?」
私はクラクラする頭に力を入れ、顔を上げる。
そこには…………。
「リメアか。所で、この本なんだが……」
私が隠れて読んでいた、イケメンいっぱいのアイドル雑誌と。
それを横になって開く、お父さんの姿があった。
「だぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
私はお父さんが手に持つ雑誌を取り上げる。
「ちょっとお父さん! 私の部屋勝手に漁らないでくれる!?」
「別に良いじゃないか。それとも、見られたくないものでもあるのか……?」
「ギクッ」
私は咄嗟に口を押される。
『ギクッ』なんて声に出てしまう癖、本当に治したい。
「お? 一体なにを隠してるんだ?」
お父さんが、ニヤニヤしながら私に顔を寄せてくる。
冷や汗がダラダラと伝う。
「な、ナンでも良いでしょ! 何にもないよ!」
「なんでも良くは無いなぁ……?」
お父さんがめっちゃ見てくる。
「…………ハハハハ! 面白いなぁリメアは」
しばらく私を見たあと、急に笑い出す。
「ちょっと! からかわないでよね!」
全く。
お父さんのこういうところ嫌い。
「ごめんごめん。で、だ。どうだ? 任務の方は」
そうだ。
任務の件。
伝えなければ。
「昨日ね、町にアンデッドの襲撃が起きたの」
「襲撃だって……? 大丈夫だったのか!?」
お父さんが私の肩を掴んで言ってくる。
「うん。私は途中で魔力切れ起こしちゃったけど、仲間の皆がフォローしてくれたみたい」
それを聞き、胸を撫で下ろすお父さん。
「魔力を吸う攻撃をしてきたみたいで、皆倒れちゃったんだって。でも、ミツルが一人で頑張ってくれてたらしい」
「そうか……ミツル君やパーティーの仲間には、いつかお礼をしないとな」
お父さんは肩を組み、うんうんと頷く。
「でね……」
私が本当に伝えたいのは、そこじゃ無い。
「そのアンデッドの襲撃を起こしたのがね、人間みたいだったの」
「人間だって? アンデッドを召喚する魔法を扱う人間か」
早く言え、私。
「その人が、ミツルとカゲトの事を異世界人って言ったりね、私の事を……女神って言ったの」
それを聞いたお父さんの表情が変わる。
私の頬に、一筋の涙が伝う。
「なんで、そんな事……知ってるの……かなぁ……?」
涙が溢れて止まらない。
湧き上がる感情を、抑えることができなかった。
あの世界の人間が、天界の事情を知っているはずがない。
「やっぱり……お母さんが……」
そこまで言うと、お父さんが私を抱きしめた。
「まだ分からない。だけど、俺は違うと信じてる」
抱きしめた手に、力が籠るのを感じた。
「うっ……うう……」
私は強く抱きしめ返す。
涙が、溢れて止まらない。
私はお父さんの胸元で、泣きじゃくった。
「…………落ち着いたか?」
「ぐすっ……うん……」
私は涙を拭って答える。
「リメア。その男は、どんな奴だったんだ?」
「肌が酷く荒れてて、目も白くって、人間みたいだけど、ゾンビみたいでもあった」
お父さんが顎に手を当て、うーんと考える。
「ゾンビ、か。知能のあるゾンビの線も否定はできないが……。無属性の魔法にテレポート。どちらかと言うとやはり、人間だと思った方が良さそうだな」
両腰に手を当て、続ける。
「問題はその目的だな。リメア、その男の追跡、頼めるか?」
「追跡って、どうやって?」
「手掛かりを見つけて、その男の居場所を突き止めるんだ。コ○ン君みたいにな」
そういうと、お父さんは説明を始めた。
***
「じゃあまずは、情報収集をすれば良いの?」
「そう言う事だ。聞き込みとか、図書館とか、何でも良い」
「…………分かった」
私の顔が晴れないことに気づいたのか、お父さんが頭を撫でてくれる。
「心配するな。大丈夫さ。俺も最大限協力する。もし何かあったら、天界の掟を破ってでも、リメアを助けにあの世界に行ってやる」
そう言って、親指を立てるお父さん。
「うん……ありがとう!」
私は、それに笑顔で答えてみせた。
「じゃあ、戻るね」
「おう、お互い、頑張ろうな」
「神聖術階位二・オールテレポート」
私は、最後までサムズアップなお父さんと別れ、あの世界に再び降り立った。




