表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/83

037 あなた方にわざわざ名乗る必要が?

 コンマさんの活躍もあり、着々とダンジョンを攻略していく。

 俺達は遂に、アンデッドが湧いてくる大元であろう部屋が目前の所まで到達した。


「チッ……この先に魔法陣があるはずだというのに……」


 部屋の入口から溢れ出る魔物と交戦しながら、ルクスさんが声を漏らす。

 冒険者の数には限りがあるのに、アンデッドの数は一向に減らない。

 入口は目と鼻の先だ。

 あと少し。

 隣では、ツユが遠距離魔法でアンデッドに応戦している。

 俺も、マジックボールで前衛から漏れ出たアンデッドに対応していた。

 リメアが、負傷した冒険者を、都度回復する。

 前衛だけでなく、後衛の魔法職や支援職、回復職も、魔力の限界が近いようだ。


「私、ちょっときついかも……」


 回復魔法を放ったリメアの額から、汗が伝うのが見える。


「もう少しだ。あそこまで行って、魔法陣を消せれば終わる」


 ツユが、バックパックから鍋を取り出し、魔法陣を消すポーションの錬成を始めた。

 あと少し。

 俺の魔力も、あと半分というところ。

 いくら魔法持久力が高いと言っても、無限じゃない。

 確実に、限界に近づいている。

 前衛で戦っているカゲトやコンマさんも、息切れが激しかった。


「あれ……何……?」


 突然、リメアが前方を指差す。

 目を凝らすと、部屋の入口に人影が見えた。

 かなり奥にいるが、その異様な魔力に悪寒を覚える。

 前衛で戦っている冒険者は……気づいていないのか?

 いや、違う。

 目の前のアンデッドで精一杯。

 よそ見をしている暇が無いだけだ。

 人影の周りに突然、大きな魔法陣が生成される。


「まずい!」


 それに気づいたツユが、前衛で戦っている冒険者達とアンデッドの間に、大きなプロテクトを張る。

 と同時、その人影の周りの魔法陣から、紫色の光線が放たれた。


 ──バキバキバキバキバキ!!


「なんっ……!」

「ぐわぁっ……!」

「うっ…………」


 ツユのプロテクトはその攻撃に耐えることができず、前衛の冒険者が吹っ飛ばされる。

 後衛に居た俺達に被害は無かった。

 が、先頭で戦っていたコンマさんは、俺の前まで吹き飛ばされ、血を流しながら倒れる。


「コンマさん! コンマさん!!」


 声を掛けるが、返事がない。


「ミツル、どいて! 神聖術階位三・グレイス・オブ・ゴッド!!」


 コンマさんの体の傷が、塞がってゆく。

 しかし、それと同時に今度はリメアが倒れる。


「リメア!」


 俺は倒れたリメアに呼びかけた。


「大丈夫……だよ。ただの……魔力……切れ……だから……」


 そう言うと、ヨロヨロと立ち上がるリメア。

 前方に、吹き飛ばされたカゲトも発見する。

 俺はリメアをツユに任せ、カゲトの元に駆け寄った。


「カゲト! 大丈夫か! カゲト!」

「おう……ちょっと擦っただけだ。まだ戦える」


 カゲトはそう言うと、素早く立ち上がり、剣を構えた。

 かすり傷のみの冒険者が、続々と立ち上がり、人影の方向に武器を構える。

 ──人影はゆっくりとこちらに向かってくる。

 スケルトンやゾンビ、今まで戦っていたアンデッド達が道をつくり、片膝をついた。


「これはこれは、冒険者のみなさん。調子はいかがでしょうか……?」


 やがて影は、床に落ちた冒険者の懐中電灯に照らされ、その全貌を現す。


「人……なのか……?」


 前衛にいた冒険者の一人が声を漏らした。

 そいつは、肌が酷く荒れ、体の一部が腐食していた。

 右側の目が、白濁している。


「なにあれ……まるで、ゾンビじゃない……」


 リメアが震えた声で言う。

 まさしく、そうだった。

 だが、だらんとした歩行をみせるゾンビと違い、背筋は張っていた。

 それに周りの冒険者の反応を見るに、喋るゾンビはこの世界に存在しないのだろう。

 それが奴の異様さを際立たせる。

 そして、先ほどまで戦っていたゾンビやスケルトンの何倍もの魔力を感じていた。

 こいつは、やばい。

 そう直感が告げていた。


「テメェ、何者だ!」


 槍を持った冒険者が、声を荒げる。


「テメェか、この騒動を起こしたのか!」

「うるさいですよ」


 その不気味な男の魔法によって、槍の冒険者が軽く吹き飛ばされる。


「ぐぉっ……」

「あなた方にわざわざ名乗る必要が?」


 男は、不気味な笑みを浮かべる。


「皆さん、ここで死ぬんですよぉ?」


 男はこちらに指を向けると


「さぁ、殺りなさい」


 アンデッド達が、再び攻撃を始めた。


「「「「「グアァァァァ!!」」」」」


 速い……!

 さっきより確実に、速い……!

 前衛の冒険者だけでアンデッドを食い止めるのは、不可能だ。

 どんどん後方に抜けてくる。

 俺は、向かってきたスケルトンの斬撃を剣で受け止める。


「シャァアアアア!!」

「くっ……っ……」


 重い! 押し返せない!

 支援魔法全開なのに、受け止めるのがやっとだ。


「ほら、よそ見している場合ですか?」


 突然、横から飛び出してきたその男に気付かず、蹴りで吹き飛ばされる。


「ハハハハ! 弱いなぁ! 冒険者ってのは!」


 そのまま、壁に叩きつけられた。


「うっ…………」

「ん? その服……異世界人ですか。殺すには少し早いか……」


 俺の羽織る学ランを見て。


「…………まぁ、良いか!」


 男は魔法で剣を生成すると、振り上げ……!


「グレイス・オブ・ゴッド!」


 俺と男に、回復の神聖術が掛けられる。


「ぐっぁぁぁぁああ」


 俺の傷が癒えると同時、男がダメージを受けた。


「良かった。その見た目……やっぱり、アンデッド……だっ……た……」


 神聖術を放ったリメアが、魔力切れで倒れる。

 倒れるリメアを、ツユが受け止めた。


「なっ……なぜ女神がここに……」


 男が、驚いた声を上げる。

 なんでこいつは、リメアが女神だって知ってるんだ……?

 それに俺のこと、異世界人って──。


「まぁ、女神は殺しちゃダメだなんて言われていないし、邪魔だから殺っちゃいましょうかねぇ!」


 男が、リメアとツユの元に駆けて行く。


「まずい! ツユ!」

「分かってる!」


 ツユが、リメアを庇うようにプロテクトを展開するが。


「さっきもやりましたよね? それ!」


 男の剣の一撃に、プロテクトが破壊される。

 剣先がツユを斬りつける寸前。


「おんっどりゃぁぁぁぁあ!」


 カゲトが割り込み、剣で受け止めた。

 男は舌打ちをする。


「数が多いと面倒ですねぇ……」


 カゲトは剣身を寝かせると、男の剣の鍔に向かってスキルを放った。


「スラッシュだぁぁぁぁぁ!」


 シュィィィィィン!


 男はカゲトの剣を後ろ飛びで避ける。

 剣の鍔の片側が、砕けた。

 剣術の型、バインドだ。


「貴方も異世界人ですか。剣を扱うのがお上手ですねぇ」


 男が服の埃を払い、言う。

 男はまだまだ余裕の表情だ。

 俺達だけで倒せる気がしない。

 他の冒険者は!? 俺は周囲を見渡す。

 皆、押し寄せるアンデッドの対処で手いっぱいのようだ。

 こちらを気にかけ、加勢しようとしてくれているが、アンデッドに邪魔され来るに来れないらしい。


「まぁ良いでしょう。一匹ずつ……」

「エーテルショット!」

「うっ……!」


 突然、男の体に横から光の矢が刺さる。

 その方向には、アーチャーのウォルさんが立っていた。

 しかし、そのウォルさんにもすぐにアンデッドの邪魔が入る。


「もう少し耐えてくれ! こいつらなんとかしたら、すぐに加勢する!」

「は、はい!」


 他の冒険者達もいる。アンデッド召喚の魔法陣を消去するそれまでは、持ち堪えてやる!

 俺は自分にありったけの支援魔法をかけると、男に向かった!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ