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034 戦える戦力はこれだけ……か

 俺達が戦闘に参加して一時間は経っただろうか。

 魔物の大群は勢いを失わず、長期戦を強いられていた。

 冒険者は次々と魔力切れを起こし、戦闘不能者が続出。

 前線も階段から町の入口にまで後退し、かなり危ない状況だ。

 さらにそれに追い打ちをかけるかのように、今まで様子見をしていた空の生き物達が、突如一斉に魔法を放った。


「プロテクト!」

「マルチシールド!」

「バリア!」


 前衛で戦っていた魔法剣士達は、空からの遠距離攻撃を防ぐために様々な防御魔法を展開する。

 空から放たれた攻撃は、防衛魔法にあたり鈍い音を立てて、消えていく。

 しかし、魔法剣士が戦っていたのは前衛。

 空からの攻撃に対し対策を取っていなかった後衛の魔法使いやアーチャー、バッファーなどは、そのほとんどが攻撃を防ぐことができなかった。


「ぐはぁっ!」

「うぅっ……」


 周囲から聞こえる悲鳴。

 空から乱射される魔法を、全て避けることは不可能に等しかった。

 俺も例外では無い。

 自己防衛の手段を持たない俺は、直撃を覚悟した。

 が。


「プロテクト!」


 本来あたるはずだった魔法が、頭上で弾かれる。


「ヒスイさん!」


 俺の前にはヒスイさんが立っていた。

 でもなぜ……? 魔法剣士は前衛で戦っていたはずでは……?


「ギルマスからの伝令だ! 魔物の群れがどこから湧いてるのか分かった。動ける者は町の東門へ急げ!」

「ですが……!」


 自分の周辺を見渡す。

 あちこちに、血だらけの者や、倒れている者がいる。


「医務担当のギルド職員がじきにやってくる。私も運ぶから任せろ!」

「は、はい!」

「ウェルさん、メリアさん、行きましょう!」

「おう」

「はい!」



 俺とアーチャーの二人を含めた、何人かの冒険者が、一斉に門に向かって走り出す。

 門の前には、上空からの攻撃を防ぐ魔法剣士と、門への侵入をかろうじて防ぐ前衛職、そして、ギルド職員が多く集まっていた。

 俺はその中から前衛で戦っているカゲトと、反対方向から走ってくるツユを見つけた。


「ツユ、そっちは大丈夫だった!?」


 ツユに駆け寄る。


「あぁ、プロテクトでなんとかな……」


 ツユは、そう言ってカゲトを見る。

 目に見える位置で魔物と戦っているカゲトに加勢することができないのがもどかしい。


「戦える戦力はこれだけ……か」


 ギルドマスターの独り言が、微かに聞こえた。

 ギルドマスターは、声を張り上げる。


「冒険者の皆さんよく聞いてください! 斥候職の者達の調査の結果、魔物の大群は全て、ベルン地下遺跡から湧いていることが分かりました!」


 ベルン地下遺跡。

 この間、俺達が参加し、召喚獣を倒したばかりのはずだ。

 そんな短い周期で、再びダンジョン化するのだろうか。


「ダンジョン内部から強大な魔力を感知しました! おそらくはその魔物が原因です。これから皆さんには、そのダンジョンに向かい、制圧してもらいたいです」



 制圧と言っても、どうやって?

 押し寄せてくるアンデッド達を、どうかき分けるのだ。

 テレポートを使うにも、魔物が湧いて出ているダンジョンに飛ぶような無謀な作戦をギルドが行うとも思えない。


「向かえるわけねぇだろ!」

「この町の防衛でもいっぱいいっぱいなのに、制圧なんて……!」


 冒険者から次々と声があがる。

 と、ここで、多くの人がギルドの方向から走ってきた。


「医務担当の職員は倒れている冒険者を運べ! ギルドマスター! 回復職、全員連れてきました!」


 先頭の職員が言う。

 そこにはリメアの姿もあった。


「ご苦労様です。あなたも怪我人をギルドに運んでください」

「はい」


 回復職の冒険者を連れてきたギルド職員は、

 怪我人の元へ走って行った。

 リメアが俺とツユの元にやってくる。


「二人とも、そっちは大丈夫!?」

「うん、なんとか」

「我らは大丈夫だ。だがカゲトは……」


 ツユはそう言うと、前衛で戦っているカゲトを指差す。


「加勢しないと」


 カゲトの元へ走って行こうとするリメアの服を、ツユが掴んで引っ張った。


「ふぎゃ!?」

「待て! ギルドマスターの指示を待つんだ!」

「何言ってんの! 目の前で仲間が戦ってるのに……」


 リメアがここまで言いかけたところで、再びギルドマスターが口を開いた。


「先程言った通り皆さんにはダンジョンに向かって貰います!」


 冒険者達がまた口々に


「だから、町の防衛が間に合わなくなるぞ!」

「ただでさえギリギリなんだぞ」


 と、言い出す。

 だが。

 いつも受付で昼寝をしていた男は、俺が今まで見たことのない真剣な表情で答えた。


「町は私に、任せてください」

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