031 難関クエストばっかり……
「「ご馳走様!」」
「美味かったぞ」
「お粗末さまでしたぁ」
はぁ、お腹いっぱいだぁ!
もう食えない!
「残ったやつは保存用ね」
リメアが残ったスティックを集め、袋に入れる。
残った、と言っても、イモ四分の一くらいの量だ。
「保存もできるのかそれは」
ツユが言う。
「そうよ、これで万が一の時も大丈夫でしょ」
リメアがふふんと鼻を鳴らした。
***
満腹になった俺達は、宿に戻る。
「……なぁ、この部屋、ベッド一つしかねぇよな」
「一応二人寝れるサイズだけど」
カゲトと俺の呟きに
「まぁ私は今回、料理を作ったから功労者でしょ? と言うわけで、一枠は私が貰うね」
いつもなら『何言ってんだリメア』とツッコむところだが、アドベルイモスティックが美味しかったから何も言わないことにする。
「じゃああと一人だね。どうする? またジャンケンする?」
「だな! じゃあいくぞ! ジャーンケーン……」
「ちょっと待ちなさい」
なんだよリメア、今から真剣勝負するところなのに。
「アンタ達、なに私の隣で添い寝しようとしてんのさ。私の隣はツユちゃんだよ」
「べ、別に添い寝しようとしてたわけじゃ……」
「ミツル、言い訳は良いから」
言い訳なんかじゃ……。
「ったく、せっかくチャンスだと思ったのに」
カゲトはカゲトで何言ってんだ。
「そういうわけだ。お主らは床で寝よ」
ツユめ……。
そんなわけで、俺とカゲトは床で寝ることになったのだが。
──ゴロゴロ……ガン!
「フゴッ」
──キョロキョロ……グゥゥゥー
カゲトの寝相が悪すぎて、全然眠れなかった。
***
次の日の朝。
「はぁ、全然寝れなかった……」
俺はとても目覚めの悪い朝を迎えた。
「なんかあったのか?」
ほざきやがる。
「お前、俺に手やら足やら乗っけてきやがって……。イビキもうるさいし……」
「え、マジ? 気づかなかった、悪りぃ悪りぃ」
もうカゲトの隣では極力寝ないようにしよう。
そんなことを心に誓いながら、ベッドに目をやる。
リメアの姿は無かったが、ツユが丸まって爆睡していた。
俺達は水浴び場に向かう。
すると、朝風呂に入ったのか、髪が少し濡れているリメアと遭遇した。
「お、二人ともおはよう」
「おはよう」
「おはよー」
「はーさっぱりさっぱり、ちょっとお散歩してくるねー」
「いってらっしゃい」
「いってらー」
「「…………」」
俺達は顔を見合わせる。
全体的にしっとりとしているリメアはなんというか。
うん……良いな。
リメアを連れて来た日はギルドでちょっと買い物をしただけだったので、水浴びをしなかった。
それにしばらく宿は取れていなかった。
なので、しっとりリメアを拝んだのはこれが初めてだ。
俺達が寝ている間に、リメアはここで水浴びを…………。
ま、まずい。
だめだだめだ。
変な妄想をしてしまった。
「なぁ、ミツル」
「なんだい? カゲト」
「歯、磨こっか」
「…………うん」
こうして俺達が歯を磨いていると、ツユが起きて来た。
「お主ら……起きていたのか……おはよう」
「おはよう」
「おはよー」
「リメアは何処へ行ったのだ。姿が見当たらないが」
「リメアなら散歩に行くって言ってたよ」
「そうか。というか、歯磨きは朝食後にするものではないのか?」
「俺の家は朝食前だったよ?」
「俺ん家も」
「そうなのか。じゃあ私も」
そう言ってツユは俺とカゲトの間に割り込んでくると、歯を磨き始めた。
おい、なんで真ん中に入ってきた。
三人じゃ狭くて鏡よく見えないじゃないか。
俺とカゲトが終わるまで待っててくれよ。
…………まぁ良いか。
朝は頭が回らないのだ。
そんなこんなで、朝に弱い三人と、対照的に朝に強い女神の一日は始まった。
***
リメアが散歩から帰ってきた。
「ツユちゃんも起きたんだ。おはよう」
「ああ、おはよう」
「じゃあ、天界に近況報告してきまーす」
帰ってきて早々、今度は天界へとテレポートしていったリメア。
「…………なぁミツル、リメアは、本当に女神なのか?」
突然、ツユが問いかけてくる。
「え? うん。そうだよ?」
『前からずっと言ってたよね?』と、言いたくなったが、感じ悪くなりそうなので控える。
「ステータスカードに載らない技の習得と言い、魔鉱石の洞窟での魔力の色と言い、もしかしたら本当なのかと思ってな」
やっと信じる気になったか!
「アレでも本物だよ、リメアは。俺やカゲトがここの言葉を話せるようになったのも、リメアのおかげだしね」
「そういえばミツルも、カゲトと同じ異世界人だと言ったな」
「うん」
「パーティーメンバーなんだ。疑う方が失礼か……」
素直に信じてくれれば良かったのに。
カゲトも同じことを思ったのか
「なんでそこまで信じようとしねぇんだ?」
と、俺の代わりに思ったことを訊いてくれた。
「ボケだよ、ボケ」
ボケって……。
「初めは本当に疑っていたのだがな。まぁカゲトとミツルの会話、リメアの奇怪な魔法なんかを見せつけられたら信じるものだ」
言って、続ける。
「だがお主ら、異世界人だなどと無闇に自称するのではないぞ」
「何で?」
「世界人も、お主らやフェンディのような奴らばかりでは無いのでな」
なんだよ、意味深な事を言うなぁ。
「ただいまー!」
と、ここでリメアが戻ってきた。
「なんか早くない?」
「昨日はスライム倒しただけで特に何も無かったから、報告する事ないのよ」
昨日もめっちゃ濃い一日だったけどなぁ。
まぁ、俺が死んだ原因と関係する何かを掴めた訳でもないし、報告するような事が無いのは確かか。
リメアが戻ってきたあと、食堂で朝食を食べる。
はじめこそスパイダーボイルばかりだったが、パーティーを組んでからは財布が潤ったので、ここ二日は別のものを食べることができている。
成り行きとはいえパーティーを組めたんだから、この三人には感謝しないとな。
朝食を食べ終え、一階のクエスト掲示板へと向かった。
掲示板を眺めながら、俺はあることに気づく。
「難関クエストばっかり……」
なんと、昨日までは大量に貼ってあったクエストがほとんど無くなり、難関クエストとコンマさんの薬草採集、僅かな護衛依頼のみになっていたのだ。
「なんで難関クエストばっかなんだろう……」
「分からん。だが、これは困ったな……。難関クエストばかりとなると、護衛依頼のクエストも強敵に出くわす可能性が高い」
そうだよなぁ……。
難関クエストばっかな理由、後で受付に訊いてみよう。
「このラインナップだし、とりあえず薬草採集のクエストを受けるべきだよね」
俺は薬草採集を薦める。
「けどよ、薬草採集も町の外を歩く訳だろ? それだって強敵が出るかも知れねぇじゃねぇか」
カゲトも、俺と同じく危ない仕事を避けたい派になったらしい。
スライムの時はどっちでも良いとか言ってた割に、ビビってるのかな。
「カゲトがそう言いたいのもわかるけど、薬草採集より安全な仕事、ないと思う。それに、俺このクエストの依頼主とは知り合いなんだ。多分その人、強いよ」
「ミツルがこの間テレポートの使い方を教わったとか言ってた、コンマって人?」
リメアが疑問を口にする。
「そう、その人。コンマさんの周り、常に魔力が漂ってるんだ。あの圧はただものじゃ無い……と、思うんだよね」
「そうか。まぁどちらにせよ今はこのクエストが一番安全だろう」
ツユもそう言って同意してくれた。
と、言うわけで、クエストの紙を受付に持っていく。
「お、ミツルさん、久々の薬草採集っすか」
いつものお昼寝受付男が、俺に問いかけてくる。
「難関クエストばかりで、他のクエストは駆け出しの俺らじゃとても受けられそうに無いですからね」
俺の言葉を聞くと、受付の男は、俺が訊くよりも先に話し始めた。
「ミツルさん、難関クエストしか無い理由についてなんですが……」
男は珍しく真剣な表情になる。
「強い魔物が出没して、雑魚が隠れて出てこなくなったとか、雑魚が倒されて数が減ったとか、そういうのが原因である事が多いんです」
男は真剣な顔を崩さず、続ける。
「こういう時って大体、良く無いことが起きるんです。薬草採集のクエストだからといっても、十分注意をして下さいね」
「良く無いこと……ですか」
男は頷く。
良く無いことってなんだよぉ。
クエスト、本当は行きたくないけどなぁ。
まぁもう決めちゃったことだし、何も起こらないと良いけど……。
ま、まぁ平気だよね、きっと。
今まで薬草採集の道中で魔物と戦闘になったことなんて無いし……。
俺はそんな盛大なフラグを立てて、パーティーメンバーと共に薬草採集に向かった。




