030 私、何か作ろうか?
俺達はクエスト報酬として20000ルンを受け取ると、宿に向かった。
今日は珍しく一部屋取ることができたのだ。
「さて、このイモをどうするか……」
俺は抱えて持って帰ってきたサツマイモを床に置く。
「私、何か作ろうか?」
「え! リメア料理できるの!?」
「何そんなに驚いてんのさ、できるよそれくらい」
あの天界の何も無い空間で、一体どうやって料理するのだろうか。
「たまに料理するよ、私だって」
「天界にキッチンなんてあったっけ?」
「あぁ、そういえばミツルは見たこと無かったね。あの真っ暗な空間がリビングみたいな感じで、あの外側にクローゼットとか、キッチンとかがあるの」
ほうほう。
だから天界で手洗ったりする時、いちいち暗闇に消えていったのか。
いやいやでも。
「なんであの空間だけ真っ暗なの?」
「電気消してるから。そう言う決まりなの。何でなのかは天界を作った先人に聞いてみないと分からないけど」
電気消してるだけかいな。
リメアはイモを水浴び場で洗うと、ギルドの外に出て行く。
俺達四人も、それに続いた。
町の隅にある小さな空き地。
リメアが、どこからか持ってきた石を地面に盛った。
「ツユちゃん、火魔法って使える?」
「あぁ、初歩的なものならな……ファイア!」
積み上げた石の隙間から、炎が燃え上がる。
流石魔法……というべきか。
可燃物が無いのに、その炎は石の中で黒煙の一つも出さずに燃えている。
「ツユちゃん、鍋も貸して欲しいな」
「鍋だな、分かった」
ツユは宿に戻ると、鍋を持ってきた。
てか……。
「泥まみれじゃねぇか!」
俺がツッコむよりも先に、カゲトが言う。
「洗えば大丈夫よ。ツユちゃん。水魔法」
「ほれ、ウォーター」
ツユの手から、水が流れ落ちる。
リメアが、どこからともなく取り出した洗剤とスポンジで、鍋をゴシゴシ洗っていた。
なんかツユ、蛇口みたいだな……。
鍋を洗い終わると、先程温めていた石の上に、鍋をのせる。
「バターとかない?」
「そんなの持ってないよ」
「ねぇなぁ」
「バターなんぞ持ち歩いてないぞ」
そりゃそうだ。
普段からバター持ち歩いてる人なんかいないよ。
「そっかぁ……じゃあカゲト、ちょっと買ってきてくれない?」
「え、俺が?」
「うん。一番体力残ってるでしょ?」
リメアから強引にお金を握らされるカゲト。
「バターとお砂糖と、あとお塩をお願い」
「そこを真っ直ぐ行って、突き当たりを左だ。ベルン商店という店がある」
女性陣にそう言われ。
「お、おう、分かった」
流されるがまま、カゲトは買い出しに向かった。
「次はプロテクトを下向きにお願い」
ツユは言われた通り、リメアの前方に下向きのプロテクトを生成する。
リメアは双剣の片方を取り出すと、同じく水で洗う。
そしてプロテクトの上で、アドベルイモを切ろうとするが。
「半球で窪んでるから、ちょっとやりにくいなぁ。ミツル、私に腕力増強の支援魔法を」
「え、あ、はい」
突然の指名に驚きつつも、言われた通りリメアに支援魔法をかける。
強化された腕で芋をがっしり掴み、厚さ一センチ程のスティック状に切っていく。
凄い手際良いな……。
俺、料理とかほとんどしたことないからなぁ。
生姜焼きと卵焼きくらいしか作れない。
料理ができる男はモテるっていうし、今度リメアに教わってみようかな?
プロテクトの上に、スティック状に切られたアドベルイモが積まれていく。
「……よし! ひとまず終わり! ツユちゃん、水頼みます!」
「ウォーター!」
プロテクトの中のアドベルイモが、水に浸される。
「これはなんのために浸すの?」
「アク抜きだよ」
へぇ……。
「さぁ、カゲトはまだかなぁ?」
噂をすればなんとやら。
カゲトが買い出しから戻ってきた。
「ほら、バターと砂糖、あと塩だ」
「ナイスカゲト! よし、じゃあバターをちょうだいな」
リメアはバターを受け取ると、少し切って鍋に放り込む。
放り込んだバターを双剣で刺し、鍋の底に塗った。
鍋の上で溶けたバターが、芳ばしい匂いを放つ。
「よし、じゃあイモ入れるよー」
リメアの合図と共に、アク抜きされたアドベルイモスティックの一部が鍋に投入された。
「ツユちゃん、中火でお願い」
「中火……このくらいか?」
「そうそう、そのままでお願い」
リメアがアドベルイモのスティックを、双剣を使って鍋の上で転がす。
その工程を三分程。
バターがイモと絡みつき、ぶくぶくと激しい
音を立てる。
「よし、完成! ツユちゃん、プロテクトもう一枚」
「よしきた」
残りのアドベルイモが水に浸ったプロテクトの隣に、もう一枚、空のプロテクトが生成される。
「よいしょお」
そのプロテクトの中に、完成品が移された。
俺とカゲトは、それに近づき匂いを嗅いでみる。
「う〜ん! 良い匂〜い」
「こりゃあ、絶対美味いやつだぁ」
「こら男ども、まだ全部は終わってないんだから」
リメアはそう言いながら、まだ残っていたアドベルイモスティックを揚げている。
「凄いねリメア!」
「そう? このくらいは朝飯前だよ」
と、言いつつも、リメアはドヤ顔だ。
嬉しそうな顔するなぁ。
やがて全てのイモが、サツマイモスティックとなった。
「よし、終わった! ツユちゃん、その水入りプロテクトはもう良いよ。あと、火も」
リメアにそう言われ、ツユがプロテクトを解除する。
アク抜き後の水だけが、地面に音を立てて流れ落ちた。
積まれた石の中で燃えていた火も消える。
「すげぇ! マジで美味そう!」
カゲトが目を輝かせる。
──グゥゥ〜。
「す、すまない。良い匂いがしたものでな」
ツユのお腹が鳴る。
「ほんと凄いよ! リメア! 尊敬します」
「そんなそんな! もぉ、みんな褒めすぎだってぇ」
リメアの顔が真っ赤だ。
そしてふにゃふにゃである。
なんだ、この女神にも可愛いとこあるじゃないか。
「あとは、砂糖と塩をまぶしたら」
やべぇ、まじで美味しそう!
「なぁリメア! もういいか!? 食っていいか!?」
「私ももう限界だ」
「俺も俺も!」
「良いよ! みんな、召し上がれ!」
「「頂きます!」」
「食うぞ」
俺達四人は、アドベルイモスティックをお腹いっぱい食べた。




