026 スライム倒したことあんのか?
ジャンケンに負けた俺は、スライム討伐クエストに向かっていた。
農家の方からの依頼だそうだ。
スライムが近くにやって来てから、川の水が減ったり、夜中に家の周りをうろつかれたり、周辺に被害が出ているのだとか。
「ふむ……これはスライムの通った跡だな」
そこには幅3m程の、なにかを引きずったような跡がある。
「うげ……結構デカそうだな……」
カゲトがそう呟く。
カゲトは布の防具と、腰にロングソード。
左腕に小さな盾を装備していた。
今日の朝貰ったダンジョン探索報酬を使い、ツユに選んで貰ったのだ。
よって、俺の中古ボロボロ剣と洋服&学ラン装備よりも強そうである。
「俺達にジャンケンさせたのはカゲトだからね?」
意外とビビっているカゲトに言う。
「あ、あぁ、分かってるよ。大丈夫さ、きっと大したことないって」
クエスト選びの時はテキトーな感じだった癖に、マジでビビってるみたいだな。
「なに、心配だったりする? 大丈夫だよ、スライムなんてちょちょいのちょいだから」
ちょちょいのちょいって……。
リメアもリメアで楽観的過ぎると思う。
「リメアはスライム倒したことあんのか?」
カゲトの問いに対してリメアは。
「ない」
と即答。
「「無いのかよ!」」
俺とカゲトのツッコミが重なる。
「ないわよ、ずっと天界にいたんだもん」
「それで良くスライムは簡単とか言ったよねホント」
「なに言ってんのさミツル、スライムが弱いのは学習済みよ…………ゲームで」
「「ゲームかよ!」」
心配だ。
このバ神様のゲーム知識が、この世界で通用するとは到底思えない。
そんな心配をよそに、ツユは先頭をずんずんと進んでいく。
しばらくスライムの足跡(?)に沿って歩いていくと、一つの洞窟にたどり着いた。
「この先にいるようだな……住処だろうか」
スライムの住処……。
自分から足を踏み入れるのは気が引けるなぁ。
そんなことを考えていると、中から一匹、小さなスライムがペチャペチャと音を立てながら現れた。
俺達に気づくと、向きを変えて一目散に奥へ戻っていく。
「まずい! ウォーター!」
逃げるスライムにツユが魔法を命中させる。
小さなスライムはその場で融解すると、無くなった。
「間一髪だな」
「ツユ、あのスライム俺達を見て逃げていったけど、倒す必要あった?」
俺は疑問を口にする。
「あのスライムは偵察スライムだろう。彼奴を放っておくと、すぐに中から大量のスライムが現れて襲ってくる。流石に一気に来られると、スライムといえどなかなか手強いからな」
なるほど。
ツユの説明に続けて、リメアが補足をした。
「それに偵察スライムがいるってことは、奥にいるビッグスライムは分裂期だね」
分裂期?
「世間知らずなミツルとカゲトのために説明すると、スライムは分裂で増えるの。だから体がある程度おっきくなると、洞穴とか洞窟に篭って、いっぱい分裂するために分裂期に入るんだよ。それで先に分裂したスライムは、ビッグスライムが全て分裂し切るまで偵察スライムとなってビックスライムを守るってわけ」
「世間知らずって言われてもなぁ。俺が転生する時に何も説明してくれなかったのはリメアじゃないか」
リメアを見て、愚痴をこぼす。
「そのくらいなんとかなるでしょ? 私は忙しいの」
「ゲームで?」
「そう、ゲームで」
こいつ、ついに認めたな。
どうしたものかと考えていると、カゲトが口を挟んできた。
「なぁリメア。思ったんだけどよ、ダンジョンの定義ってなんなんだ? 洞窟との違いというか」
「ダンジョンっていうのはね、中からなんらかの理由で魔物がホイホイ湧いてくる所のことを言うの」
「魔物が湧いてくる所?」
ツユがリメアの説明を補足した。
「洞窟や只の遺跡との明確な違いは先にリメアが言った"魔物が湧くかどうか"だ。割と曖昧だが、召喚の魔法陣があったり、魔物の個体が中でどんどん増えて行くような所だな」
「ふうん……?」
カゲトはよく理解していないようだ。
まぁ無理もない。
異世界とゲームの知識ゼロでこんなこと言われても、分からないよね。
というか、ダンジョンの定義、俺も知らなかったな。
良いこと聞いた。
「お主ら、準備は良いか? さっさと奥のビックスライムを討伐して、ギルドに帰ろうではないか」
「そうだね、ちゃっちゃと終わらせて、美味しいもの食べよう!」
「「「「おー!」」」」
こうして俺達はスライムの住処、スライムダンジョンに足を踏み入れた。




