025 女神なのに……本当に女神なのに……
「あんた、本当に神様?」
カゲトが怪訝そうな顔でリメアに問う。
『ギルドの扉に穴開けました』と正直に謝ると、今回は良いが、次やったら弁償してもらうと言われた。
ギルドが心広くて助かった。
借金背負って冒険とか、想像しただけで身震いがする。
「神……です」
と、言いつつも、かなりシュンとしている。
「で、リメアはいつまで女神なのだ」
だからリメアはごっこ遊びしてるんじゃ無くて本物なんだって。
俺がそう答えるよりも前に。
「私はいつまでも女神よ!」
というツッコミがリメアから飛んできた。
それに対してツユは、片眉を上げて『本当か?』とでも言いたげな表情をする。
「女神なのに……本当に女神なのに……」
な、なんか気の毒になってきたな……。
「ま、まぁ。気を取り直して、今日も仕事しますか」
俺はそう提案をする。
「そうだね……。ミツルが転生した原因を調べるにも、まずはお金が無いとだからね」
と、いうことで。俺達四人は、ギルドの掲示板へと向かう。
ギルドの掲示板の前に立つと、それを眺めた。
俺が見た感じ、魔物と戦わなくて良い安全そうな仕事は、やはりコンマさんの薬草採集だけだ。
「俺は出来るだけ安全なクエストが良いな。やっぱり俺がいつも受けてたコンマさんの……」
俺がそう言いながらクエストの紙を見せようとすると、途中でリメアが割り込んできて。
「そんなクエストでちまちまお金貯めてたら、いつまで経ってもお金貯まんないよー。そんなのよりこれにしよ?」
リメアが掲示板からちぎって見せてきた紙は。
「暴走ゴブリン率いる群れの討伐、ゴブリン一匹に付き5000ルン、暴走ゴブリン討伐で50000ルン……」
その張り紙を読みながら、俺は紙の右上に書いてある"難関"の文字を見逃さなかった。
俺はリメアが持っている張り紙を取り上げ、声を上げる。
「おいリメア、ここを見て。"難関"って書いてあるよ。こんなん受けて全滅したらたまったもんじゃない。却下」
剣の型だってまだろくに教わっていないのだ。
ある程度戦えるようになるまでは魔物と遭遇するクエストは嫌である。
「ミツルの言うとおりだ。まだパーティーも結成したばかりだし、まずは安全なクエストで力試しすべきだと思うぞ」
うんうん、そうだよね。
ツユもそう思うよね。
「え〜」
え〜じゃありません! 俺は死にたくないんです!
「例えば……これとかどうだ?」
ツユがはがした張り紙を見る。
ええっとなになに……?
大型スライムの討伐、無力化につき20000ルン……。
「ちょっとツユ! 魔物討伐のどこが安全なんだ! 薬草採集にしよう! 絶対安全だから」
ツユもそっち側かよ。
やめてくれ、魔物嫌だ。
「冒険者パーティーが魔物討伐に行かなくてどうするのだ。それにスライムだぞスライム。適当に叩いて分裂不能にすれば良いだけの、簡単な作業に20000ルンも出してくれるなんて、太っ腹な依頼主じゃないか」
だから、俺は魔物嫌なの!
「スライム、良いじゃない! 20000ルンでも一日の稼ぎには十分だと思うわ!」
リメアもここぞとばかりに便乗しやがって……。
「その簡単なスライムに手こずっているから高額な報酬なんだと思うんだが? あとリメア、良いね? こういう異世界のスライムって、最弱どころか最強! っていうのがもはや定番なんだよ」
俺の反論に二人は。
「スライムは弱いぞ」
「アンタねぇ、ここのスライムの強さは基本的にドラ○エだよ」
と、心配しすぎだというような表情で見てくる。
その"基本"に当てはまらない魔物が出てきたらどうすんだ!
「ねぇ、カゲトはどう思う?」
俺は助けを求めてカゲトに問う。
しかし、しばらく俺達の話を聞いていたカゲトは。
「ジャンケンでいいだろ」
なっ、なんて無責任な!
「おいカゲト、魔物だよ! 昨日の召喚獣のこと覚えてる!? 俺は極力安全な方が良いんだけど!?」
「ミツルは心配しすぎなのだ! たかがスライムだぞ!」
「そうだそうだぁ!」
俺達三人はカゲトに詰め寄る。
「どうなんだ!」
「どうなのよ!」
「どうなのだ!」
カゲトはあっけらかんとして
「どうって言われてもなぁ……。俺はどっちでも良いからなぁ」
無責任が過ぎるぞカゲト!
「……ああもう! 分かった! ジャンケンだ!」
俺は意を決する。
どうせ言い合っても決着なんてつかない!
「良いだろう! 受けてたってやる!」
「私達を甘くみないことだね!」
「「「ジャーンケーン……!」」」
…………俺は見事なまでに一人負けした。
「いえーーい!」
「スライムで決まりだな」
あぁ……命の保証が……。
俺はその場で膝をつき項垂れる。
クソ……二人して喜びやがってぇ。
カゲトが俺の肩にポンと手を置き
「まぁ、次があるさ」
なんて言ってくる。
もう良いよ! なんかあっても知らないからな!




