024 力がみなぎってくる! 新しい魔法?
「攻撃と防御、どちらの型から教わるか?」
「攻撃!」
「防御!」
カゲトと見事に意見が食い違った。
攻撃だぁ? 先に自分の身を守るのが最優先でしょう、普通。
「攻撃だろ! 普通!」
カゲトがこっちを見て抗議する。
「いやいや、防御でしょ! 自分の身が最優先」
「「ぐぬぬぬぬ」」
俺達は互いに睨み合う。
「まあまあお主ら、一旦落ち着け」
ツユが両手で、それを制した。
「私は防御から教わった方が良いと思うぞ」
「ほらやっぱり!」
だから言ったじゃないか!
「でもよ、攻撃は最大の防御っていうだろ?」
ここはゲームの世界じゃ無いんだ。
ゲームっぽいのは認めるが。
死んだら終わりである、今度こそ。
トラックに撥ねられたときめっちゃ痛かったんだぞ。
撥ねられたと気づいてからくる激痛。
あぁ……思い出すだけで全身が痛くなってきた……。
「防御の仕方を覚えて、自衛をできるようにしておいた方が得策だ。それに、お主はある程度戦えるだろう」
「それもそうか……」
そうそう、そうだぞ。
俺は二度も死にたくない。
「よろしい。ではまず、基礎の基礎。"バインド"からだ」
「「バインド?」」
「あぁ、スキルや魔法とは違う。剣術の型だ。剣の刃と刃を合わせると、刃が噛み合って固定される」
ツユがそう言いながら、リメアから預かった双剣の片割れを取り出す。
「ミツル、剣を持ってきてくれ」
俺は言われた通り、ギルドの倉庫に置いていた剣を持ってきた。
「ミツル、横に持て」
言われた通り、剣を横向きにして持つ。
「はぁぁ!」
ツユは双剣を、俺の剣めがけて振り下ろした。
「で、だ。これを前後左右に動かしてみる。だが」
双剣と剣は、刃が噛み合ってびくともしなかった。
「こんなふうに、刃同士が固定されて、動かなくなるんだ」
なるほど。
刃物持った魔物とか対人戦とかで役に立ちそうだな。
対人戦する予定無いけど。
「では、ここからどうすれば良いのか。はい、ミツル」
と、唐突にツユに指名される。
「え!? えっと……後ろに飛んで避ける……とか?」
「はい、十点」
えぇ!?
「悪くは無いが、それでは一生押され続けるぞ。次、カゲト」
「剣を半回転させて反撃だ」
カゲトが剣を回してその勢いで振り下ろすジェスチャーをする。
「五点」
「なっ!?」
「リスクが大きすぎる。相手の方が動きの方が俊敏だった場合、反撃されるのはこっちだ」
「じゃあどうすりゃ良いんだ?」
「正解は……」
ツユは、双剣と剣の刃が噛み合わなくなるように、双剣の刃を寝かせると。
「はぁぁ!!」
そのまま横に滑らせた刃は、俺の持つ剣の鍔に命中した。
キィィンと甲高い音と共に、衝撃が伝わってくる。
「うわっ、怖っ!」
咄嗟のことに全く反応できなかった俺は、恐怖を覚える。
「双剣だと防がれてしまうが、スキルを使用した剣なら鍔ごとぶった斬れる」
……技術というより力技だな。
てかそんなんで鍔折れちゃうのか。
この世界、攻撃に対して防御が弱くない?
「てか、双剣だったとしても、受けた俺は十分怖かったんだが」
「怪我してないのだから良いではないか。もちろん加減はしている」
そういう問題かなぁ。
「でも、俺達、そのスキルっての一つもしらねぇぞ?」
「だから今から教えるのだ。ミツル、剣をよこせ」
ツユさんや、なにやら人の扱いが雑ではありません?
そんな事を思いながらも、渋々ツユに剣を渡す。
「スキルは、体内に魔力を循環させて発動する。こうやるんだ」
ツユが剣に力を込めると、剣身が淡く紫色に輝き出した。
「剣も体の一部。そう思いながら魔力を注ぐ。そうすれば、自ずと剣が魔力を受け入れてくれる」
剣が魔力を受け入れてくれる。
要するに、剣に魔力が流れていくって事ね。
「じゃあミツル、やってみろ」
ツユから剣を受け取ると、魔力を注いでみた。
空気の抜けるような音と共に、剣身が淡く輝く。
「やはりセンスがあるな。一度で成功させるとは。だが、まだムラがある。魔力が逃げて、音が出ているだろう?」
魔力が逃げてる音なんだ、これ。
「音が鳴らなくなったら完璧だな。とりあえず合格だ」
ポケットから再びステータスカードを取り出すと、そこに"スラッシュ"と刻まれた。
「次はカゲト。お主はどうだ」
ツユは俺から剣を取ると、今度はカゲトに渡す。
「魔力って、どう流すんだ?」
「力を込めるイメージだ」
「こうか?」
──シューーーー……。
「魔力は動かせているな。だが、剣に流れていない」
「マジか。難しいなこれ」
「私が教えてやる。ミツルはとりあえず休憩してろ」
「分かった」
ふぅ……。
これでひと段落だ。
あんまり動いていないが、何度か冷や汗をかいたせいで疲れた。
「あ、いたいた! みんな〜お待たせ〜」
と、ここでリメアが天界から帰ってきた。
「おかえりリメア」
「ただいまー」
「リメア、帰りの魔力はどうしたのだ」
「天界には神聖力ってのがあってね、それを使えば帰って来れるの」
「へぇ、天界って凄えんだな。天国とかもあるのか?」
「もちろん! 最近は受け入れが大変になってるみたいだけど」
天国、長蛇の列だったもんな。
ありゃ天国までの道のりがもう地獄だわ。
「…………そうなのか」
ツユはもはやツッコミもせず、頷いた。
まだリメアが神様であることを疑ってるのだろうか。
信じてくれても良いのになぁ。
リメアが神様っぽく無いってのは認めるけど。
「あ、そうだリメア、これ見てよ」
俺はリメアに、先程ツユから教わった腕力増強の支援魔法をかける。
リメアの両腕が淡く輝き出した。
「おお! 力がみなぎってくる! 新しい魔法?」
リメアはシャドーボクシングをしながら聞いてくる。
「うん、今さっきツユに教えてもらったんだ」
「ふーん、結構良い感じじゃない? 今ならなんでも倒せる気がするよ」
そう言いながらリメアはギルドのドアめがけてパンチを繰り出し……。
──ドゴッッ!
ギルドの木製ドアに、見事な大穴を開けた。




