002 ステェタァス、ンォプン! ……あれっ
落下する感覚が徐々に無くなって行き、ふわっと足が地に着く。
徐々に辺りが見え始めた。
そこはヨーロッパ風の石畳の道。
中央に噴水がある。公園のようだ。
「異世界、か……」
異世界転生してみたい! と、思ったことはあるが、実際にしてみるとなんていうか複雑な気持ちだ。
家族とはもう会えないわけだし。
とりあえず、異世界ではお馴染みのやつをやってみる。
「ステータスオープン」
……あれっ。
「ステェタァス、ンォプン!」
…………何も起こらないな。
こう唱えれば、大抵は自分の目の前に液晶みたいなのが出てきて、自分の能力が数値化されたものを見れるはずなのだが。
その後も何度か言い方を変えて試してみたが、どうやらステータスはオープンしないようだ。
冷静に考えてみれば、ステータスオープンってなんだよ。
側から見たら頭のおかしな奴じゃないか。
ゲームじゃあるまいし。
固定観念は捨てた方が良いだろうな、うん。
仮にオープンするのなら女神様が先に言ってくれるだろうし。
俺は一番近くにいた老夫婦に声をかける。
「すいません。この町のギルドってどこにあるんですか?」
「あら、あなたこの町に引っ越すの? ギルドはあれだよ」
おばあさんが指差す方向には、三階建ての建物があった。
「この町はいいとこだよぉ」
今度はおじいさんが言う。
でもどうしてギルドに行くと言っただけで、この町に引っ越しに来たことになっているのだろう? 確かそのカードって身分証みたいなものだって言ってたよな。
カードを作った町が住所みたいな扱いになるのだろうか。
「ありがとうございます」
俺は老夫婦に告げると、その建物に向かった。
ギルドの中は、防具屋、武器屋、魔道具、受付と異世界の文字で書かれた四つの看板が並んでいる。
見た目は石造りで、いくつかの店が並んでいる。
二階は食堂、三階は宿屋と書かれていた。
ところで何故俺は異世界語が読めるのだろう。
リメア様が何かしてくれたのだろうか。
いや、考えても仕方ないか。
えっと、カードを作るときは……。
「お、あれかな?」
受付にカード作成の手続きと書いてあるのを見つけたので、向かった。
一番左であくびをしている、小柄な男の元に歩みよる。
「ご用件は何でしょうか」
「えっと、カード……? の作成をしたいのですが……」
「ステータスカードですね。1000ルンになります」
ルンってなんだろう。
お金の単位かな? ……お金……お金! お金がいるのか!!
まあ考えてみれば当たり前だよな。
生活に必要なものだからってタダなわけが無いし。
少し考えが甘かった。
しかし、転生特典的なもので最初に1000円くらい貰っても良いよなぁ。
……とか思ったが、これが二度目の人生というのを思い出し、その考えを心の奥にしまう。
転生させて貰っただけでありがたいことじゃないか。
多くは望まないのだ。
大事なのはまず感謝の気持ちである。
「あ、すいません。この町に来るまでにお金を使い果たしてしまって」
苦し紛れに答える。
「お金を稼ぐのでしたら、あそこの掲示板に貼られているクエストを受けるのはどうでしょうか」
クエストっすか。
てか、そのなんたらカード持ってなくても依頼受けられるんだね。
やはり、冒険者のライセンスって言うより、住所とかを示す為の身分証的な位置付けのカードなんだろうな。
ん? いや待て、おかしいぞ。俺みたいなどこの馬の骨とも知らん小僧が依頼を受けられるってどういうこった。
……うーん、考えてもわっかんねぇや。
ここって異世界だし、そういうのガバガバな感じなんだろうなきっと。
「えっと、はい、そうします」
俺はそう返事を返すと、掲示板の前に行く。
そこには
『ゴブリンの群れの討伐、一匹に付き5000ルン』
『ポイズンローズに寄生した魔物の討伐、15000ルン』
などと貼られていた。
「俺、戦えないしなぁ」
戦ったら絶対に死ぬ。
しばらく眺めていると、掲示板の隅にこんな張り紙を見つけた。
『薬草の採集の手伝い。時給500ルン』
と書いてある。
な、なんと都合のいい……!
俺はこれだ! と張り紙を剥がして受付に持っていった。
「これ受けます」




