018 俺がそんなにむっつりに見えるのか?
突然の援護射撃に驚き、そちらを振り返ると……。
「ミルドさん!」
他にもルクスさん、ヒスイさん、ルナさんが立っていた。
「大丈夫ですか!?」
ミルドさんがツユの元へ駆けて行く。
「あ、あぁ……」
ルクスさん達も遅れて駆け寄って来た。
「大丈夫だったか!?」
「あぁ……それよりも此奴を」
ツユはカゲトを自分の上に抱えたまま、上体を起こす。
「あのっ……私の……回復魔法……で……」
「頼む」
ルナさんの回復魔法によって、カゲトの背中の傷が少し浅くなった。
「ごめん……なさい、私の……魔力、少ししか……残ってない……ので……」
「これで十分だ。ありがとう」
ツユはそう言って、カゲトを抱えてあげようとするが。
「うおっ」
そのまま体制を崩し、カゲトと一緒に転げた。
「す、すまない。魔力がほとんど残っていなくてな……」
するとヒスイさんが。
「お前も疲れているだろう。こいつは私が代わりにおぶっていく」
そう言ってカゲトを抱え上げる。
「何から何まですまないな……」
「なぁに、さっきのお返しだ。借りはきっちり返すよ」
俺も何か役にたたないと。
「ツユは俺がおぶっていくよ」
俺はツユの前に屈む、が……。
「ちょっとミツル、アンタが女の子をおぶるのはまだ早いよ」
「え、まだ早いってどう言うことだよ」
「思春期真っ最中の男子高校生が、下心なしで女の子をおぶらない訳がないじゃない」
なんだと! マジでただの気遣いなのに!
「……俺がそんなにむっつりに見えるのか?」
「見える」
「なんだと!!」
俺はリメアに掴みかかる。
リメアはそれを受け止め、抗戦してきた。
「お主ら、ケンカ……するな……」
ツユの苦しそうな言葉に、ハッとする。
そうだよ、ケンカしてる場合じゃ無い。
「とりあえず、私がツユちゃんをおぶってくからね」
「分かったよ」
リメアがツユの前にかがむと、おぶった。
「さっきは本当に危なかったです。ありがとうございました」
俺は四人に感謝を述べる。
「ありがとうございました」
「ありがとう」
リメアとツユも俺に続いてお礼を述べた。
「困ったときはお互い様だ。それより今はこいつを連れて早くダンジョンを出よう」
ヒスイさんの言う通りだ。
怪我人を連れてダンジョンに長居するのは危険だもんね。
「召喚獣が作り出した魔法陣の残りの消去は、僕達に任せてください」
「ヒスイ、あとは頼んだぞ!」
「ヒスイさん……また……後で……」
「あぁ、こいつらのことは任せておいてくれ」
どうやらヒスイさんは、俺達と一緒にダンジョンを出るまでついて来てくれるらしい。
「ねぇリメア。俺達が天界からこっちに来た時、神聖術を使ってテレポートしてきたでしょ? あれ、ここでもできない?」
「魔力が足りないよ。たとえ私の魔力が満タンだったとしても、ここから町まで四人も連れてテレポートは厳しいと思う」
そっかぁ……。
じゃあ来た道を戻るしか無いんだな。
「というかそもそも、ここダンジョンでしょう? 天井のあるところじゃ、テレポートは無理だよ」
そうだっけか……。
そんな事、コンマさん言ってたような気もするなぁ。
疲れてるせいで、あまり頭が回らない。
魔力を消費したからってのも、もしかしたらあるのかも知れないね。
──こうして俺達五人は、ルクスさん、ミルドさん、ルナさんと別れ、ダンジョンの入り口へと向かった。
道中、ヒスイさんにこんなことを訊かれる。
「ところで、こいつは何者なんだ? お前達と会ったときは三人だったと思ったが」
俺はことの経緯を説明する。
「魔法陣から出てきた……か……」
「えぇ」
「あれは本当に驚いたぞ。なにせ、目の前から出てきたからな」
確かにあの状況で一番びっくりしたのはツユかもな。
魔法陣の目の前にいたわけだし。
「僕もまさか、人が出てくるなんて思いませんでしたよ。ねぇ、リメア」
俺は相槌を求めてリメアの方を振り向くが。
「…………」
リメアはツユをおぶったまま下を向いている。
「……重いの? 代わろうか?」
「え、あ、ごめん! そう言う訳じゃ無いから大丈夫。ちょっと考え事しててね」
『女の子に重いとか言わない!』とかツッコミが飛んでくるものだと思っていたので、少し拍子抜けする。
「考え事って?」
「あの召喚獣のことなんだけど……。カゲトは日本人だったでしょ?」
「うん」
「地球とここを魔法陣で繋げるなんて、普通じゃ"ありえない"んだよ」
そういえば、俺の死に方も普通じゃありえないんだったよね。
魔法を地球に流すことは神に等しい魂でも持ってなきゃ無理だとか……。
「チキュウってなんだ? こいつの故郷の国の名か?」
そっか、ヒスイさんには俺が異世界人だって話してないもんね。
「ヒスイよ、こやつらは異世界人と神を名乗る可哀想な人々なのだよ」
「あ、あぁ、なるほど……」
おい。今なんかツユが誤解を生む発言をしたのが聞こえたぞ。
「おいツユ、俺が異世界人ってのは本当だぞ」
「私が神だってのも本当なんだけれど」
「じゃあ証拠を出してみろ、ほれ」
ツユが手をクイクイさせながら、ニマニマしている。
この小娘、俺が証拠を出せないと思ってるな。
見てろ……。
俺は学ランの右ポケットから学生証を取り出し、その中に印刷されている写真を取り出す。
ツユは俺の提示したものに懐中電灯を近づけると……。
「写真か。それがどうした」
え、うそ、この世界、カメラあるの!? 魔力乱流がなんとかで、精密機械はやばいんじゃなかったの!?
「どうやって色を着けたのかは知らんが、この写真が証拠だと言うのか?」
「そ、そうだよ。俺の世界ではカメラは色付きで撮れたんだ」
「着色魔法か何かでは無いのか?」
なんだよ! 着色魔法って!!
「じゃ、じゃあ……」
今度は学ランの左ポケットから、スマホを……。
って、無い! そういや、転生してから死ぬ時背負ってたリュックとかも無い!
俺はリメアに耳打ちする。
「ねぇリメア、ポッケに入れてたスマホ、無いんだけど」
「スマホ? あるわけないじゃない。転生先に無い技術で作られてるものを持っていくのは、天界の掟で禁止。だから転生した時に没収されてるよ」
「じゃ、じゃあリュックは!?」
「リュック? 何を今更。死んだ瞬間も背負ってたの?」
し、知らんがな! 死んでるんだもん。
「ミツル、諦めなさい。ツユちゃんったら、信じてくれないよ。この感じだと」
「……チッ」
「ちょっとミツル、舌打ちしたね、今舌打ちしたわね!」
…………そんなこんなしながらも、ヒスイさんの手助けもあり、道中の魔物は難なく倒すことが出来た。
「光だ……」
そしてようやく、ダンジョンの入り口が見えてきたのだった。




