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017 無茶……するな……! 死ぬぞ……!

「召喚獣……!」


 召喚獣……!?

 ツユの向く方向に、恐る恐る振り返る。


「おいおい……マジかよ……!」


 それは鋭い牙を持つ狼のような見た目で、目は真っ赤に充血していた。

 こちらを睨みつけて威嚇している。


「タイミング悪すぎだって……。カゲト、とりあえず隠れて!」


リメアが咄嗟に、カゲトの正面に出る。


「あぁ、だけど……」

「魔法の使えない奴が下手に出ると死ぬぞ!」

「わ、わかった」


 カゲトが俺達の背後に身を隠す。

 それと同時、ツユが魔法を唱えた。


「プロテクト」


 一人一人の正面に、半透明のシールドが展開される。

 同時にツユは、腕力増強の支援魔法を展開した。


「防衛魔法だ。相手の攻撃のみを防ぐ」


 言いながらも、ツユの険しい表情は変わらない。


「過信はするな。探検家のプロテクトだと、一回耐えられるかも怪しい。腕力増強も同様だ。気は抜くな」

「了解」

「分かった」


 俺とリメアは、召喚獣を睨んだまま、返事をした。

 沈黙の中、睨み合いが続く。

 五秒程が経った、その時。


「グルアアァァァ!!!」


 先に仕掛けてきたのは、召喚獣の方だった。


 「俺だよな、そりゃあ!」


 召喚獣が、俺目掛けて一目散に走ってくる。

 俺が一番弱そうだからって事だよな、こんちきしょう!


「っ……!!」


 俺は右に跳んで躱すと同時、マジックボールを放つ。

 俺のマジックボールは、召喚獣の体に命中するが。

 バシュゥンと弱々しい音を立てると、消滅してしまった。


「グルルル……」


 全然効いて無さげだな……。

 召喚獣がこちらに向き直る。

 うわー、怖い……。

 ちびりそう。


「グラァァァァァァアア!!!」

「まずい! 召喚魔法を使う気だ!」


 召喚獣の周りに、魔法陣が三つ展開される。

 やがて三つの魔法陣は、別々の色に変色しだした。

 間髪入れずに、それぞれの魔法陣から、剣を握ったスケルトン、イノシシ、双剣を携えたネズミが飛び出す。

 二種の魔物とイノシシが、戸惑うような仕草をしたあと、俺達を見つけてこちらに向かって来た。


「あばばば、ツ、ツユ! 俺、どうすればいい!」


 すっかりテンパっている俺は、ツユに指示を仰ぐ。


「奴は配下を行使するタイプの召喚獣では無い! 命令は出来ないはずだ!」


 つまり、俺はどうすれば良いんだ!?

 こっちに向かって来たイノシシが、俺を目掛けて魔法の石礫を飛ばしてきた。


「うお!?」


 イノシシも魔法使えんのかよ!?

 まずいまずいまずい! 追いつかれる!!


「マジックボール!」


 間一髪。

 俺に激突する寸前で、リメアのマジックボールが炸裂。

 イノシシが吹っ飛ばされた。


「ありがとリメア!」

「感謝はあと! トドメを!」


 え、トドメ!?


「フグググ……」


 目の前のイノシシが、こちらを睨みつけてくる。

 起き上がるつもりなのだろう。


「ごめんな……ホント、ごめん!」


 俺は目の前で転がっているイノシシに、何度も踵落としを食らわせて、踏みつける。


「ブォ、フゴォ、フギャァァァ!」


 イノシシはやがて力を失い、息絶えた。

 魔物と違って、死体は煙にはならず、そのまま地面に転がっている。

 胴体を蹴った感触が、まだ踵に残っていた。


「ミツル!? 後ろ! 後ろ!」

「えっ!?」


 リメアの叫びに、我に返った。


「キシャァァァァァァァァ!!!!」


 剣を持ったスケルトンが、背後に迫っている。

 全く気づいていなかった。

 躱そうとするが間に合いそうに無い。


「スプレッドサンダー!!!」


 ツユの攻撃によって、スケルトンが消滅する。


「ギギギ……ァァァ……」

「ミツル! よそ見している場合ではないぞ!」


 ツユが別のスケルトンの攻撃を、手にしたワンドで受け止めながら。


「常に全方位に目を……っ! 向けろ!」


 別の攻撃を喰らったのか、ツユのプロテクトが消失している。


「ありがとう!」


 俺はツユを襲っているスケルトン目掛けて、マジックボールを放った。


「ギギッ!?」


 突然の攻撃に怯んだ所を、ツユが水魔法で仕留める。

 スケルトンは、煙となって消失した。

 ……て言うか、カゲトは!?

 周囲を見回すと、カゲトがスケルトンと対峙しているのが見える。


「カゲト! 今助けに……」


 そして丁度、スケルトンを背負い投げでやっつける瞬間を目撃した。


「お主、結構やるな」


 ツユがカゲトの元に駆け寄る。


「俺、柔道部なんだ」

「柔道ブ? 前の世界での職業は柔道家か?」

「職業? コンビニでバイトやってたぜ?」

「コンビニデバイト? 聞いたことが無いな……」


 お、おぉ……ツユとカゲトの会話が絶妙に噛み合ってねぇ。

 というか、こっちの世界には職業の柔道家も存在するのね。

 脳内メモにきろくしておこーっと。


「グアァァァァァァァ!!!」


 再び召喚獣が咆哮を上げる。


「また召喚魔法だ! 召喚獣をなんとかせねば、此奴(こやつ)ら増え続けるぞ!」


 再び創り出された魔法陣から、今度はゾンビが飛び出してきた!


「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア」

「「「ギャァァァァァァァァア!!!」」」


 ツユを除いた俺達三人は、突然姿を現した、腐ったそれに悲鳴を上げる。

 ゾンビにいち早く対応したのは、ツユだった。


「食らえぇぇ!!」


 ツユの投げたアンデッド特攻のポーションが、ゾンビに命中する。


「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛」


 ゾンビは倒れて、そのまま動かなくなった。

 耳から小さな煙が出て、やがて消失する。


「またゾンビを召喚されたらまずいな……。奴らは死体に寄生する。本体は脆いが、絶対に噛まれるな! 内部から喰われて死に、寄生されるぞ!」


 ひぇぇ……この世界、ゾンビまでいるのかよぉ……。


「とにかく、召喚獣本体を叩け! 彼奴(あやつ)を殺らないと、いつまでも魔物が湧いて出る!」


 ツユの指示の元、俺とリメアは、召喚獣にマジックボールを連発する。


「アウン! ゴルルル……」


 リメアのマジックボールが効いたようで、少し怯む召喚獣。


「攻撃を続けろ! 魔法陣は私が対処する!」


 魔法陣から新たに出現したイノシシが、ツユに目掛けて突進。

 それを避けながら、ツユが叫んだ。


「分かった!」


 俺は再び、召喚獣めがけてマジックボールを放つ。

 しかし、やはり俺の攻撃は、弱々しい音と共に命中し、消えてしまう。


「ガルルル……」


 俺の魔法、そんなに効いてねぇ……。


「ミツル! 後ろ!」


 リメアの声に後ろを振り向くと、今度は何も持っていないスケルトンに殴られ。


 ──パリン!


 プロテクトが攻撃に耐えきれず、砕けた。

 なんとか無傷で済んだ俺は、すぐに剣を抜いてスケルトンの胴体を薙ぐ。


「ギャァア! アア……」


 スケルトンは真っ二つに砕かれ、煙となって消滅した。


「お主! どこまで不注意なんだ! もうプロテクトを張り直すほど魔力は残っていないぞ!」

「ご、ごめん!」


 いくら攻撃をしても、倒れる気配が無い。

 ツユのポーションのおかげで、召喚自体はなんとか止められている。

 しかしこれでは、こちらの魔力が尽きるのも時間の問題だ。


「グルルル……グルァァァァァァ!!!」


 すると突然。

 召喚獣が、血相を変えて。


「えっ、わわわ、私!?」


 リメア一点に狙いを定めて、突撃した。

 左に跳んで躱そうとするが、召喚獣の動きの方が僅かに速い。

 地面に着地する前に、召喚獣が飛びかかる。


「ひゃっ……まずっ……!!」


 リメアが着地するよりも先。


「ヴアアアアァァァァァァアアア!!!」


 召喚獣が、突き飛ばした。


「っ……!!」


 強く地面に叩きつけられ、リメアの口から声にならない悲鳴が上がる。

 

「「リメア!!!」」

「神様!?」


 まずいまずい! リメアが召喚獣に乗っかられてる!

 焦った俺は、マジックボールを連発する。

 避ける気配の無い召喚獣は、俺の魔法を全て受け止めるが。


「駄目だ! まるで効いちゃいない!」


 ヤバイヤバイ!

 カゲトはこの状況に焦りつつも、助ける手段がわからずあたふたしている。

 ツユはリメアのプロテクトに魔力を注いでいるようで、手をリメアの方向に向けたまま険しい表情を露わにしていた。

 ツユの魔力切れも近い。

 リメアのプロテクトが、召喚獣にのしかかられメキメキと悲鳴をあげている。


「このっ……! どいて……!」


 リメアは手でプロテクト越しに召喚獣を押し返しているが、全く反撃ができないでいた。

 どうしようどうしよう!!


「…………っ!」


 俺は意を決すると、剣を構えて召喚獣目掛け走る。


「ミツル……! 無茶……するな……! 死ぬぞ……!」


 ツユの苦しそうな声が聞こえてくる。

 俺はその忠告を無視し、召喚獣に斬りかかった。


「うぉぉぉぉぉりゃぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

「ガァァ!!」


 腕力増強で多少強化された俺の一撃は、結構効いたらしい。

 背骨を直撃したような感触。

 召喚獣の背中の肉を抉り、縦一線に深く切り傷をつけた。


「はぁぁぁ!」


 怯んだところにすかさず、リメアがマジックボールを打ち込み、召喚獣を吹き飛ばす。


「ありがとミツル」

「早く! 早くこいつから離れよう!」


 ちびりそう! おっかない!! 早くこんなとこ脱出したい!!!

 俺達は走ってツユのところに戻る。


「ミツル! あんまり無茶をするで無いぞ! だが……あの行動は賢明だった」


 いや、俺は賢明というより、冷静さを失ってたというか……。


「クゥゥン……クゥゥン……」


 召喚獣はかなり弱っている。

 しかし、まだ立っている所を見るに、背骨を折る程の一撃を与えられているわけではないみたいだ。


「グルル……グルァァァァアア!!!」


 召喚獣が、今度はカゲトめがけて飛んでくる。


「おっと危ねぇ!」


 カゲトもそれをヒョイとかわして、足を引っ掛けて転ばせた。


「お主、凄いな……」

「柔道の力、だな」


 カゲトが胸を張る。

 足払い的な? 柔道にはあまり詳しく無いが、動物にも役立つものなのだろうか。


「これでトドメだ」


 ツユが、カゲトの足払いによって転げている召喚獣に、魔道具を投げようと……!


「グラァァァァァァアア!!!!!」

「何っ!?」


 召喚獣が、ツユ目掛けて飛びかかる。


「ツユさん!!」


 カゲトがツユを押し倒し、体で庇う。


「グラァァァァ!!」


 ──メキメキ……パリン!


「ぐはぁぁっっ! ぁぁぁぁ」

「「カゲト!!」」


 プロテクトが割れ、召喚獣の攻撃をモロに喰らったカゲトが悲鳴を上げる。

 パーカーは愚か背中の深くまで傷がついていた。


「マジックボール!!!」

「離れろぉ!!!」


 リメアと俺が放ったマジックボールが、召喚獣を吹き飛ばした。


「クゥゥン……クルルル……」


 今ので背骨が折れたようで、召喚獣はぐったりとして情けない声上げている。


「カゲト、お主は……」

「ツユさん……良かっ……た……」


 そう言ってカゲトは意識を失った。


「カゲト! 大丈夫か! カゲト!」

「どっどどどどうしよう」

「私の回復神聖術で! ……あぁでも、もう魔力が……!」


 俺は焦って声が裏返る。

 それはリメアも同様だった。

 すると突然、正面の通路から声が聞こえる。


「ストーン・バルカーノ!」


 その瞬間。

 何かの魔法が放たれ、無数の炎を帯びた石が飛んでくる。


「キャン!」


 それは召喚獣に何発も命中。

 召喚獣は息絶え、消滅した。

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