016 神ぃ? ハハハハハ!!!
うわぁ、日本語だぁ。
久々の母国語サウンドに懐かしさを覚えながらも、日本語で返答する。
「俺は冒険者のミツルって言います。あなた、えっと……日本人、ですよね?」
「ああ、そうだけど。冒険者って……ここ、どこなんだ?」
どうやって説明しよう……。
背後からは、ツユとリメアの話し声が聞こえてくる。
「リメアよ、さっきからミツルが話しているあの言語、一体なんなのだ?」
「なんて説明しようかな……。ミツルとあの人は、故郷が同じなんだよ。その故郷での言語かな……」
「故郷? 確かにミツルもあの男も、ここらじゃ見ない顔つきだとは思っていたが……」
リメアもツユへの説明に難儀しているようだ。
「ここはダンジョンの内部です。ここは……日本では無いんですよ」
「はぁ……なに言ってんだ。ついさっきまで境内の見回りしてたってのに」
敷地にイノシシが出るのか。
「いや、あの……実はここ、異世界なんですよ」
「異世界ぃ?」
「えぇ、俺はミツルって言います。ついこの間、トラックに轢かれて転生したんです」
「は、はぁ」
この人、異世界系読まないタイプの人だ。
まるで話が通じない。
***
それからかれこれ十分程。
「つまりあなたは、野生のイノシシにでくわして、必死に逃げてたら足元に魔法陣が出現。イノシシもろとも落っこちてきた……と」
「おう。で、異世界ってのは」
俺の学ランを引っ張り、耳元で囁かれる。
「お前はあそこの奴らに攫われた口か。どうやったら帰れるんだ」
……?
……あ、そっか。この人、異世界は異世界でも、オカルトの話とかの方面の異世界を思い浮かべてるな。
「いやぁ、そんな怖い話じゃ無いですよ。知りません? 異世界転生もの」
「聞いた事はある」
「ここは剣と魔法の異世界なんです」
うーん……どうやって説明すべきか……。
「ミツル、変わって。私が説明する」
「頼む」
助かるぅ。
俺、こういう説明的なの苦手だし。
てかリメア、本業だもんねこれ。
***
また少しして。
「つまりなんだ……あんた、神様だってか」
「えぇ、そうです」
「なんだ……? 理解が追いつかねぇ……」
リメアが頑張って説明している中。
「つまりなんだ……あやつは異世界から来た男で、お前も異世界人だと言うのか……?」
「うん」
「情報が多すぎて混乱してくる……」
俺もツユと、似たような会話を交わしていた。
「とにかく、あなたにはまず異世界語が話せるように神聖術を行います。彼女はツユ。異世界人ですが、彼女にも同時に説明した方が早いので……」
そういってリメアは立ち上がり、魔法を唱える。
「神聖術階位一・言語習得」
男の足元に魔法陣が現れると、輝きだす。
その光はやがて、男の全身を覆った。
光が収まると、男は話し始める。
「えぇと……こんにちは」
「おぉ! 急に言葉が通じたぞ! リメア、今の魔法はなんだ!?」
「魔法って言うか、神聖術だね。まぁ、ここじゃ魔力で代用してるから、定義的には魔法なのかな?」
「凄いな! ステータスカードにも載らない魔法なんて初めて見た!」
ツユ、なんか興奮気味だな。
こういう"表記されない魔法"的な厨二設定、好きなのだろうか。
まぁ気持ちはわかる。
俺もそういうの大好きだからね。
「…………で、つまり、あなたは"神隠し"の被害者なわけです」
「なるほど……?」
この人も頑張って納得しようとしているみたいだ。
「しかしまさか、召喚獣が神隠しの原因の一つだったとは……でも、召喚獣が世界をまたいで魔法を使うなんて、普通じゃ考えられないはず……」
リメアが何やら独り言を呟いている。
「なぁミツル、お主は異世界人だと言ったな」
「うん」
「ではなぜ言葉が通じるのだ」
ん? リメアに言語習得の神聖術をかけてもらったからだが。
「異世界人ってのは、この男やフェンディのような、不思議な言葉を話す出身地不明の者を指すはずだぞ」
あぁ、異世界人ってそういう解釈なのね。
「ミツルは異世界人よ。だって私が送ったんだもの」
リメアが急に割り込んでくる。
「私が送った? それはどういう意味だ」
「そのまんまの意味だよ。私、神様だもの」
ツユはそれを聞くと。
「神ぃ? ハハハハハ!!! お主のような神があってたまるか!」
え、めっちゃ笑うやん。
ここは俺がリメアのフォローをしてやろう。
なんだかんだ色々教えてもらってるしな。
「ツユさんや、残念ながら本当なんだ。この方は女神リメア。本物だよ、残念ながら」
「ミツルまでそんな見え透いた嘘を」
「ちょっとミツル! 残念ながらって何よ! 私はれっきとした神様よ!」
「「あーはいはい、そうですねー」」
「テキトーに返事するなー!!」
リメアをいじめて楽しんでいると。
「あの……俺に説明の続きを……」
やべっ、この人のこと忘れてた。
***
「俺は九条影斗。ひとまずよろしくな!」
ということで、この男……クジョウカゲトはとりあえず俺達についてくることになった。
歳は十六で、実は同い年らしい。
身長が高いので、てっきり大学生くらいの人だと思っていた。
くっそ、羨ましい身長してんな。
「一旦引き返すぞ。ここまで来てなんだが、魔法を使えないカゲトの護送が最優先だ」
「なんかすまんな、俺のせいで」
この人、初対面でも割とフランクに話す人なんだな。
「気にするな。お主だって、突然知らないところに転移して来て、混乱しているのでは無いか?」
「そうだな、ありがとう」
ツユって、良い人だよね。
今更だけど、魔法をほとんど使えない俺達をむしろサポートしてくれてるし。
こうして俺達は出口へ向かおうとした……が。
「ガルルルル……ガァァァァァアア!」
出口方向。
背中から聞こえてきた咆哮に、肩を震わせる。
しんと静まり返ったダンジョン。
「召喚獣……!」
ツユが放った言葉に、俺は唾を飲み込んだ。




