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014 戦闘開始ぃ!

「ちょっと待て! お主一人では……。やむを得ん。ミツル、追うぞ!」


 え、ウソでしょ!?

 言うなり、ツユがリメアを追って走り出す。

 って、はっ……速い……! 自分の体くらいのサイズのバックパックを背負ってるのに、なんであんなに速く走れるんだ!?

 ツユはリメアに追いつくと、服の襟元を引っ張った。

 後ろから掴まれ、急停止するリメア。


「ふぎゃぁ! いったたた……」

「早とちりするでない! どんなのと戦っているかもわからぬ戦場に突っ込んだら、危ないだろう!」

「うう……確かにそうかもだけど……」


 は……速い……! 体力が……!


「ツユ……待っ……待って…………」


 五秒ほど遅れて、なんとか俺も合流した。


「まずはどんな魔物と戦っているのか、確認する必要がある。とりあえず懐中電灯の灯りを消して、私に着いてくるのだ」


 俺は言われた通り懐中電灯を消す。

 そして、ツユの服を掴んだ。

 リメアも俺の服を掴み、三人連なって進んで行く。

 音が近づいてきたところで、ツユが歩みを止めた。


「この魔力の流れ、召喚獣では無いな。スケルトン種……。戦っているのはおそらく我らより先に入った冒険者だろうか」


 ツユが淡々と状況を分析する。


「四人いるみたいだ。内二人は、魔力反応が微弱だが……」

「すごいねツユちゃん。そんなこともわかるなんて」

「空間把握を覚えていれば、こういう応用が効くのだ」


 へぇ……探検家の得意スキルって便利だなぁ。

 てか、今スケルトンって言った? うへえ、初っ端からアンデッドかよ。

 もうちょいマイルドな魔物にしていただけません? まぁどんな魔物でも嫌だけど。


「それで、私達はどうすれば良いの?」

「うむ、そうだな……」


 ツユは少し考えると、背中に背負ったでっかいバックパックを下ろして、何かを取り出す。


「何それ?」


 真っ暗で何も見えないが、音から察するに何かの容器に入った液体のようだ。

 もう片方の手にも、何かを持っている。


「アンデッド特攻のポーションだ。塩をたっぷり染み込ませている。こっちは閃光玉、一瞬だが眩い光を発する」


 出ました! 魔道具! ゲームの定番! 異世界御用達!


「おそらく相手はスケルトン・エクスプローラだ。奴らは暗闇でも機敏に動き回る。というわけで、リメア、ミツル、奴らの足止めは任せた!」

「えっ、ちょっ、待っ……足止めってどうすれば!」


 俺の言葉を聞くよりも前に、ツユは音の方向へと飛び出して行き、閃光玉を投げた。


「戦闘開始ぃ! 行くよミツル!」


 リメアはそう言うなり、両手にマジックボールを生成する。

 ツユの投げた閃光玉は地面に衝突すると、甲高い音を立てて強く発光した。


「捉えた!」


 その一瞬の閃光の間に、敵をロックオンしたリメアは、両手のマジックボールを勢いよく放つ。

 マジックボールは、キュルキュルと音を立てながら、スケルトン目掛けて飛んでゆく。


「キシャァァァァァ!!!」


 戦っていた冒険者のうち、一人に飛びかかっていたスケルトンは、突然の横からの攻撃になす術なく吹っ飛んだ。

 数は四。

 いずれもスケルトン。

 リーダー格だろうか。内一体は、帽子をかぶっている。


「皆さん! 早くこちらに!」


 リメアが、先に戦っていた冒険者達に声をかける。


「お、おう! 分かった!」


 リメアの声に、男女四人の冒険者が、こっちに走ってきた。

 俺も、俺も攻撃をせねば。

 マジックボールを生成し、四人を追っているスケルトン共に狙いを定める。

 食らえぇ!!


 ──バシュゥン。


 一体のスケルトンに命中するが、弱々しい音を立てて消滅してしまう。

 ……威力が、足りない。


「り、りり、リメア! リメア様! 俺の攻撃、ほとんど効いて無いみたいなんですが!?」

「アンタの魔力数値が低いからだよ! そんなことよりとにかく攻撃!」

「は、はいぃ!」


 なんだかリメアが頼もしいので、それに従う。

 閃光玉が、徐々に輝きを失っていく。


「皆! 端に避けるのだ!」


 ツユの声が聞こえる。

 俺達六人は、ツユに従って左右に避けた。


「これでも食らって……おけ!」


 ツユの右腕が赤色に淡く光り、その腕から、先程のポーションが投擲される。


「キシャァァァァァアアア!!!」


 先頭のスケルトンに命中すると、水飛沫が上がる。

 聖水がスケルトンの体を蝕む。


 「シャ……ギギギガァァアアア!!!」


 ジューと言う音と、スケルトンの断末魔が響く。


「スプレッドサンダー!」


 ツユが唱えると同時、スケルトンの周囲に、無数の電気を帯びた球体が出現。

 ツユに一番近い球から遠くの球へ、電撃が順に伝って行く。

 電撃は、けたたましい音と共にスケルトンの体をめぐり。


「グガガガ……ガァ……」


 スケルトンは感電すると、そのまま蒸発するように消えていった。

 リーダー格と思われるスケルトンがかぶっていた帽子だけが、ひらひらと床に落ちる。


「倒した……勝ったよね? 俺達、勝ったよね!」


 ウホホイ! 初勝利ウホホホ! と言うか!


「ツユ、さっきの魔法何!? かっこよ!」


 雷の魔法! ツユさんったら、あんなかっこ良い魔法が使えたとは!


「スプレッドサンダーのことか? 雷属性の高火力魔法だ。今の私が持てる限界火力だな」

「ツユすげぇ強いじゃん!」

「いや、聖水が無ければ倒しきれなかった。魔力消費量も大きい。やはりメイジのスキルは、無理に使うものでは無いな……」


 それでも凄いじゃないか!

 あれ超かっこいい!


「ツユちゃん! ミツル! ハイタァッチ!」

「あぁ!」

「イェイ!」


 ツユと俺はリメアとハイタッチを交わした。

 懐中電灯を灯す。

 あたりが再び、ほんのりと光を取り戻す。


「あ、そうそう。さっきツユがポーション投げる時に腕が赤く光ってたでしょ? あれってもしかして……」

「腕力増強の魔法を使ったからな」


 やっぱり!


「それってバフだよね!! ここを出たら是非とも教えて頂きたいのですが……」

「良いぞ。そういえばミツルはバッファーだったな」

「ありがとう!」


 やった! バッファーなのにバフ技を覚えていない問題、これで解決だぜ!


「いやぁお嬢さん達、助かったよ」


 と、ここで、さっき助けた冒険者四人がやってきた。


「別に構わないぞ」


 ツユが、スケルトンの落とした帽子を拾いながら返事をする。


「にしても凄かったなぁあの咄嗟の判断力」

「私だったら……怯んで……動けない、と……思います……」

「閃光玉の光には驚いたが、おかげで助かったよ」

「皆、疲弊してましたので、あなた方が助けてくれなかったらどうなっていたか……」


 四人の冒険者が、順に自己紹介をする。


「俺はこのパーティーのリーダー、ルクス。職業は剣士だ」


 まずは屈強な見た目で、背中に大きな剣を携えた男性。

 鎧などの装備は着ておらず、割と軽装だ。


「僕はミルドです。見ての通りメイジです」


 続いてメガネをかけた細身の男性。

 身長は俺と同じくらい。

 膝くらいまでのローブを羽織り、右手に杖を持っている。


「私は魔法剣士のヒスイだ」


 この人は……男の人? 女の人? うーん……どっちだ? 中性的な見た目で、髪はショート。腰に剣を下げている。

 服装はルクスさんと違い、頭以外に鎧を装備していた。


「…………ルナ……です」


 両手で杖を握っている女性。

 見た目的に、多分クレリックだろう。


「私は探検家ツユだ。こっちはリメア・オケノスにミツル・スズキ・デ・イイノカナだ」


 …………ん?


「ちょっと待て。ミツル・スズキ・デ・イイノカナって誰だ。俺はミツル・スズキだよ」

「ん? 自己紹介の時にそう名乗ったでは無いか」

「そんなこと言って無いよ」

「いいや、言ってたぞ」


 言ってたとしたら『で、良いのかな?』の部分は独り言だって!

 日本語で独り言を言ってたみたいで、ややこしいことになっている。


「改めて、さっきはありがとな!」


 ルクスさんが言う。


「あぁ。しかしお主ら強そうなのに、なぜあんなに追い詰められていたのだ」


 確かに。

 この四人、俺達より強そうだ。

 なんであんなに苦戦してたんだろう。

 そんなツユの質問に対し、ミルドさんが答えた。


「それがですね……。先程からスケルトンが湧き続けていて、あれでやっと最後の四体だったのですよ。僕もルナも魔力が枯渇してしまって」


 なるほど、だから道中魔物が出なかったわけだ。

 ミルドさんの説明に、ヒスイさんが続ける。


「ここから先は分かれ道でな。通路が五つ分かれているんだ」

「あのっ……通路を進んだ先、にも……まだ、分かれ道が……ある、ようなので……」

「僕達よりも先に攻略を始めた冒険者もいます。まだ魔法陣が残っているとすれば、右から二番目の通路でしょうか」


 これを聞き、ツユが考え込む。


「うむ……召喚元がいくつもあるなら、魔法陣設置型の召喚獣か……?」


 魔法陣設置型?

 と言うか、俺まだ召喚獣の説明も訊いてなかった。


「ツユ。その召喚獣って、なんなの?」

「召喚獣とはその名の通り、なんらかの形で魔物や動物を呼び出し、自分の配下として利用する、ダンジョンの主みたいな輩だ。まぁダンジョン以外でも湖やら草原やらに縄張りを張るのもいるがな」


 ふむふむ。


「それでツユちゃん、魔法陣設置型っていうのは?」


 今度はリメアがツユに問う。


「召喚獣と一口に言っても、さらに細かい組み分けがある。その場で呼び出す型だとか、呼び出す魔物も、眷属の場合もあれば、どっかから攫ってくる場合もある。まぁ、とにかく色々だ」


 ふうん……。異世界の生き物にも、何やら色々あるようだ。


「魔法陣設置型ってのは、魔法陣をいくつも設置するタイプ。本体を倒しても召喚が止まらないから、一番厄介な奴だな」


 魔法陣を設置しまくる、しかも本体を潰しても魔法陣は残り続ける、か……。


「俺達は少し休んでから行くよ。ミルドもルナも魔力が枯渇してるみたいだしな」


 ルクスさんが言う。

 ルクスさんとヒスイさんはピンピンしているが、ミルドさんとルナさんはキツそうだ。


「よし! じゃあミツル! ツユちゃん! 深部にレッツゴー!」


 リメアがそういうと、懐中電灯を持って右から二番目の通路へスキップで向かう。


「ちょっと待て!」


 ツユはスケルトンの落とした帽子をバックパックに突っ込むと、リメアを追いかけ走り出す。

 ……え、うそ、またこの流れ!?

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