122 れいじょってぃん!
ギルドでは、ツユの溜めていたドロップアイテムの売却、ポーションなどの魔道具の補充、オネエさん達へ明日帝都へと向かう事を伝えた。
その後は早めに宿に戻り、明日に備え眠りについた。
***
出発の日。
リメアの天界報告を待ち、集合場所である探偵社前に向かおうと宿を出たのだが……。
「オ、オネエさん? 師匠にロイも……」
「お主ら、何故ここに居るのだ」
俺とツユは、困惑の声を上げた。
なぜなら目の前に、色々な荷物を持ったオネエさん一行が立っていたからである。
「何故って……私達も、同行させて貰おうかしら、と思って」
平然とした顔で告げるオネエさん。
「俺は別に、ついて行ってやるつもりは無かったんだからな」
「嘘つきぃ。ロイ君、実はミツル君達のこと、心配だからついてきた癖にぃ♡」
「ち、違っ……や、やめっ! くっつくなメロエ! お、おい……」
でた、師匠とロイのおねショタ。
絶対需要あるよな、これ。
日本に戻れないので、これを供給できない事が悔やまれる。
「で、確かグロウディアスに行くんだったわよね」
オネエさん達には、昨日伝えた通りである。
「はい。あの、探偵社のお二人もいるんですが、大丈夫でしょうか」
「えぇ、もちろん大丈夫よ」
「金髪の女の子とぉ、茶髪の人だよねぇ」
「問題無い」
こっちは大丈夫みたいだ。
あとは探偵社の二人が良いって言ってくれればな。
まぁ多分大丈夫だろう。
断る理由もないし。
何より、これから何が起こるのかわからない今、戦力は多い方が絶対に良い。
「えっと、オネエさん、師匠、ロイ。ありがとう」
俺は三人に礼を述べる。
「お主らがいると、心強いな」
ツユも、そう答えた。
「また、ロイ君と一緒に行けるんだね! よろしくぅ!」
「お、おいくっつくな自称女神! 離れろっ!!」
「あらぁ、リメアさん、ロイ君が嫌がってるわよぉ? 私と一緒の方が、嬉しいんじゃない♡」
「や、やめろ! おいっ!!」
「ちょっとメロエ! ロイ君から離れなさいな!」
ロイの取り合いが始まりましたぁ。
「羨ましいぜ……」
カゲトさんや、心の声ダダ漏れですよ。
……気持ちは良くわかるが。
メロエ師匠、ぶりっ子みたいなとこあるけど、やっぱ可愛いもんな。
リメアも、それにツユも……。
「おい、ミツル。お主なにを考えてるんだ」
「ん、えっ、な、何も?」
えっ、俺が三人に取り合いされてるの想像してたの、なんでわかったんだ。
「本当か? 気色の悪い笑みを浮かべてゲヘらゲヘらとニヤついていたが」
ま、まじ? ちょっ、やめてくれツユ。
その目をやめてくれ。
オネエさんも、そのニッコリ笑顔をやめてくれ!
「うふふ、賑やかね。探偵さん達も合わせて、私達は九人。楽しい旅ができそうだわ」
オネエさん、ウッキウキだな。
旅行じゃ無いんだからね?
***
アイラさん、オーヴィムさんと、探偵社前で合流する。
オネエさん一行の同行も、快く許可をしてもらえた。
「戦力は多い方が良いですからね」
オーヴィムさん、さっき俺が思った事と全く同じ事言ってるな。
「良し、皆、準備は良いな」
ツユがそれぞれに確認を取る。
「もちろん」
「バッチリだぜ!」
「私も大丈夫!」
「私達も準備万端です! な、オーヴィム」
「はい! いつでも!」
「私達も、やる気十分よ!」
「頑張っちゃうぞぉ♡」
「……ったく、しょうがない奴らだな、全く」
各々から、そんな返事が返ってくる。
「では、向かおうか! グロードア帝国の帝都、グロウディアスへ!」
ツユを先頭に、意気揚々とディテクの西門へと向かう。
この街からグロウディアスまで、川に沿って下降。
一週間程で、帝都に到着する。アドベルンからディテクへの旅路よりも、少し長い時間を要す。
ただ今回は、徒歩ではなく船旅だ。
俺達にとっては、全く未知のものとなる。
気を引き締めなければ。
そんな感じで、身構えていたのだが……。
「止まれ!」
西の門を守る二人の門番の内一人に、道を阻まれた。
「身分を証明できるものをご提示願いたい!」
なんだなんだ、入国の時と同じ流れか?
俺達は言われた通り、それぞれのステータスカードを提示する。
「これは……」
しかし、俺、リメア、ツユ、カゲトのカードを見た時、そんな声をもらして。
「申し訳ないが、貴方がたの出国は許可できない」
と……。
「はぁ!?」
その返答に真っ先に食いついたのは、リメアだった。
「入国できたのに出国できないってのは、一体どういう事なんですか!」
「そうだぜ! おかしいじゃねぇか!」
その通りである。
俺もその門番に噛みついてやろうと、リメアとカゲトの隣に出るが。
「待て、お主ら。ここは私が」
ツユが俺達三人を制して、前に出た。
「どういう事だ? 我らは入国時にも、しっかりと審査を受けている。何も怪しいものなども持っていない。何故、ダメなのだ」
そうだそうだ、と、俺達三人も後ろから野次を飛ばす。
それに対して返答したのは、もう一人の門番だった。
「貴方達は客人として、丁寧にもてなすよう、ラー審査官より命令を賜っております」
「「「はぁぁ!?」」」
今度噛みついたのは、俺達ではなく、オネエさん達三人だった。
「意味がわからないわ! この子達を街に閉じ込める事のどこがもてなしなのよ!」
「大体ぃ、なんで門番の貴方達が、入国審査長からもてなしの命令なんて受けるわけぇ?」
「話が破綻してるな。しっかりとした言葉を話してくれるか?」
ツユ含め七人の追及にも、門番は動じない。
「仕方ない、こうなりゃ力づくで……」
カゲトがロングソードの柄に手を掛け、門番の二人も武器を構える。いよいよ一触即発か、そんな時。
「少し、良いですか」
今まで状況を静観していたアイラさんが一歩、前に出た。
「なんだ、貴様は」
突然出てきた少女に、門番の二人は戸惑いつつも高圧的に対応する。
「お、おいアイラ、お主……」
ツユが止めようとするが。
「まぁまぁ、ツユさん。ここはアイラさんにお任せしましょう」
いつもはアイラさんの暴走を止める係であるオーヴィムさんが、何故か俺達を静止させる。
……まぁ、オーヴィムさんが止めるって事は、アイラさんとオーヴィムさんには、何か策があるんだろう。
俺達八人は、アイラさんを見守る事にした。
しばらくすると、門番二人とアイラさんが、門外へと消えてゆく。
「あぁ、ちょっと……」
ツユが再び行こうとするが。
「大丈夫です。ツユさん。アイラさんを信じて」
……なんだ? 一体アイラさんは何をやってるんだ?
──それから更にしばらくすると、ドヤ顔のアイラさんと、申し訳無さそうな顔をする門番の二人が戻ってきた。
「も、申し訳ありません、皆様」
「ど、どうぞ、お通り下さい」
門番の二人の変貌に、一同驚く。
「ア、アイラさん? 一体、彼らに何を……?」
俺は、恐る恐る尋ねた。
「大した事はしてませんよ。ただ、伯爵れいじょ──」
「ん゛ん゛ん゛っっ!!」
「──れいじょってぃん!」
は?
「れいじょってぃんって、なんですか」
「ええっと、その……決めゼリフ! そう、私の決めゼリフです!」
随分と無茶苦茶な言い訳だな。
絶対、オーヴィムさんの『ん゛ん゛ん゛っっ!!』で言い直しましたよね?
そういや、初めて会った時も自己紹介でなんか言い直してたよな。
「ま、まぁ、とにかく皆さん、門兵さん達も通してくれるとおっしゃっていますし、行きましょう」
そう言って、俺達を促すオーヴィムさん。
なーんか怪しいが、俺達が探っても意味が無いので、今回はアイラさんの謎の力にあやかって、国を出るのだった。
***
ディテク公国東方 レイさん湖
鳥のさえずりや、穏やかな風のそよぎ。
そんな湖で、一頭のレイクサーペントが、動き出す。
「グルルル……キュキュキュ」
静かに一声鳴いたレイクサーペントは、どこかを目指すように川を下っていった。
これにて第二章完結です。
作品の完結設定については、活動報告を覗いて頂けると嬉しいです。
ここまで読んでくださった皆様、本当にありがとうございます!




