120 なりません!
「私達も、帝都まで同行させては頂けないでしょうか」
アイラさんから、そんな提案を持ち掛けられる。
「もちろん、お金はいただきません」
まぁ、ついてきて貰った方がありがたいかもな。
この人達、いろいろ頼りになるし。
そう思った俺は、返答をしようとするが。
「助かります。こちらとしてもその提案は──」
「なりません!」
俺の返答は、オーヴィムさんによって遮られた。
「皆さん、今回はご依頼頂き、ありがとうございました。私達と致しましても、とてもやりがいのあるお仕事でした」
「お、おいオーヴィム、勝手に終わらせようとするな」
あせるアイラさんに、オーヴィムさんは真剣な眼差しで向き直る。
「アイラさん、貴方はなぜ、ツユさん御一行について行きたいと?」
「なぜって、ここまで調べて知ってしまった以上、私達にとっても他人事には思えないじゃないか」
アイラさん、良い人だな。
いや、悪い人だった事無いけどさ。
依頼料も無しに着いてきてくれるなんて言ってくれるんだから。
「ダメです」
しかし、オーヴィムさんの返答は一貫している。
でも、無理もないよな。
絶対危ないじゃないかそんなの。
オーヴィムさんの事だ。アイラさんを危険な目に遭わせたくないって理由だろう。
「何故だ! 私は帝国民の一人として、間違った行いを正す必要が──」
「貴方は何も分かっていない!」
オーヴィムさんの怒号に、一瞬の静寂が訪れる。
初めて見たオーヴィムさんの姿に、俺達は息を呑んだ。
オーヴィムさんは息を整えると、冷静に喋り出す。
「良いですか、アイラさん。貴方は護られなければなりません。それほど、大切なんですよ」
「……父上か、また」
再びの静寂。
「ね、ねぇミツル、なんだか空気が張り詰めてるんですけど。アンタここは一つ、一発ギャグでも……」
「ちょっとリメアは黙らっしゃい」
珍しく空気を読まないリメアを制す。
張り詰めた空気の中、再びアイラさんが、口を開いた。
「父上は私の事なんて、道具としてしか考えてない……」
「そんな事はありません」
「じゃあなんで! なんで父上は、私の意思を問わずにあんな約束を……!」
「それでも! それでもお父上は! 貴方の事を大切に思われております!」
沈黙。
……なんだ、事情はよく分からんが、何やら訳アリっぽいぞ。
最初、自己紹介の時にアイラさん、名前を名乗り直してたし、やはり深い事情が……?
……いや、詮索するのはよろしくないよな。
俺達が今知るべきはそこじゃない。
クエスタとシルルだ。
「……なぁ、オーヴィム」
口を開いたのは、アイラさんだ。
「……お前は、私の事、大切か?」
おうおう、告白ですかなお嬢さん? そういうのは俺達四人のいない所でやっていただけませんかね?
「もしそうなら、私を帝都に行かせてくれ。なぁオーヴィム」
アイラさんは、オーヴィムさんに真剣な眼差しを向けている。
「…………」
オーヴィムさんは、暫くの思考ののち。
「……分かりました」
そう、口を開いた。
「但し!」
再び大きな声で、オーヴィムさんは告げる。
「私から、絶対に離れないでください」
「……わかった。約束する」
……終わったみたいだな。
「ゴホン!」
ちょうど良いタイミングで、ツユが咳払いをする。
「それでお主らは、我らに同行する、という事で良いかな」
「はい、お願いします」
ツユの問いかけに、アイラさんが返答した。
「すみません、お見苦しいところを……」
オーヴィムさんが頭を下げる。
それに追従して、アイラさんも頭を下げた。
「いえいえ、気になさらないでください。僕らとしても、お二人が同行してくれるなら、心強い限りです。な、皆!」
俺の問いかけに、リメア、ツユ、カゲトは大きく頷いた。
「アンタらが着いてきてくれれば、大きな戦力アップになるしな!」
「私達も、願ったり叶ったりですよ!」
カゲトもリメアも、元気よく答える。
その回答に、安堵の表情を浮かべた探偵と助手は。
「「よろしくお願いします」」
と、笑顔を見せた。




