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111/122

111 なんだ!? 魔力が……!

「ギグギャァギャギャギャラリャリャ!!」


 奇怪な叫びと共に、そいつは攻撃を仕掛けた。

 標的となったカゲトは、左手にはめた盾で攻撃を受け止める。


「ぐぅぅぉぉぉぉ!!」

「カゲト! そのままだぞ!」


 受け止めている間に、ツユが魔法を発動しようとする。

 ──しかし。


「なんだ!? 魔力が……!」


 ツユの手のひらに込められた魔法は、不発に終わった。


「ギャギャギャギャ!!」


 敵はカゲトを薙ぎ払う。


「うおわっ!!」


 こちらに吹き飛んできたカゲトを、俺とロイで受け止めた。


「大丈夫!?」

「おう。サンキュー、ミツル、ロイ」


 カゲトはすぐに体勢を整えると、敵に剣を向けた。


「ツユは一体どうしちまったんだ?」


 カゲトが疑問を呈する。


 俺は試しに、杖に魔力を込めマジックボールを生成してみる。

 しかし、すぐに魔力が離散して、形を保てない。


「これってぇ……」


 師匠が顎に手を当て、思考する。


「魔力が収束しない……ですか。ここまで強力な魔力の乱流、初めてです」


 オーヴィムさんが視線を敵に向けたまま、言った。

 一筋の汗が頬を伝っている。


「お、おいおい、いったいどういうこった」


 混乱しているカゲトに、俺は説明した。


「魔力が上手く扱えないんだよ。これは俺が、クエスタと対峙した時と同じ……」


 俺の言葉に。


「何か方法は無いのか……?」


 と、ロイが声を上げる。

 方法。クエスタと対峙した時は確か、自分に対してかける支援魔法は使えた。

 この魔力乱流が、クエスタのそれと同じスキルによるものだとすれば……。

 俺は自身に、筋力、脚力増強の支援魔法を展開し直した。

 両腕、両足が淡く輝く。

 次は杖に魔力を込める。

 魔力の流れた杖は、キュゥゥと音を立てながら光った。


「自分になら、なんとかかけられる……!」


 一筋の希望が見える。


「オネエさん!!」


 俺の叫びに、察したオネエさんがスキルを発動した。


「闘気解放!!!」


 いつもより出力は落ちているが、確かにスキルは発動している。


「私はできないぃ……」

「俺もだ」

「すみません、私も……」


 師匠、ロイ、オーヴィムさんは、自身を対象にしたスキルも発動しなかったようだ。

 魔法持久力の高い俺とオネエさんのみがスキルを発動できるらしい。


「滅殺闘拳!!!」


 オネエさんの右腕に、僅かながらに魔力が宿る。

 その一撃は、敵の胴に命中するが。


「ギャギャギャギャギャ!!」


 受け止められてしまった。

 反撃が飛んでくる前に、オネエさんは距離を取る。


「きゃっ……危ないわね全く……!」


 すんでのところで回避に成功したオネエさん。

 しかし、ツユが魔法の発動を封じられてしまっている今、我々のプロテクトは全員消滅してしまっている。

 しかも、体内魔力を循環させる魔法でない以上、この状況下で自身がプロテクトを発動しようとしても、すぐに魔力が離散してまともに展開できない。

 ──絶対絶命、か。

 今ここでスキルを発動できるのは、俺とオネエさんのみ。

 魔力無しでも武器として機能する刃物を所持しているのは、カゲトとオーヴィムさん。


「オーヴィムさん。魔力無しで、どの程度動けますか」

「そうですね……分かりませんが、奴の動きを牽制することなら、或いは可能かもしれません」


 オーヴィムさんは自信なさげに答える。


「充分です。カゲト、お前は行けそう?」

「おう! まだまだピンピンしてるぜ!」


 オーヴィムさんもカゲトも、問題なさそうだ。

 俺は、リメアが最初にマジックボールで仕留めたスケルトンのドロップした、一振りの剣を指差す。


「あれを拾ったら、僕がスラッシュを叩き込みます。二人にはあいつの牽制をお願いしたい」

「分かりました」

「おっけーだぜぃ!」


 俺の提案に、二人はすぐ動き出した。

 カゲトが盾を構えて敵の注意を引き、オーヴィムさんが敵に向かって走り出す。

 俺はその間に、自身にありったけの支援魔法と、姿眩ましの魔法ハイド・ザ・マジックを展開して、剣を拾いに向かった。

 オネエさんにもすれ違いざまに


「二人が注意を引いている間に、僕達で挟み討ちしましょう」


 と提案する。


「分かったわ」


 オネエさんの返答が聞こえた。

 俺は剣を拾い上げると、魔力を流し込む。

 ──うん、かなり魔力が漏れ出てしまっているが、発動はできる。

 俺はオネエさんの横に立つと、お互いに動きを示し合わせる。

 正直、かなり危ない作戦だ。

 だけど、一撃でも加えられれば勝機はある。

 ツユが俺達の動きを見て、ロイと師匠の元へと向かった。

 そのまま距離をとって、俺達を見守っている。

 ただ、ツユの両手には、魔道具が握られていた。

 バックパックに入れていたものだ。

 ツユならきっと、リメア達を守ってくれる。

 この作戦は連携が大事だ。大丈夫、上手くいく。

 オーヴィムさんが敵を翻弄し、カゲトが攻撃を受け止め注意を引く。

 その隙に、俺とオネエさんは敵を両側から挟み込んだ。

 隙を伺う。

 ……。

 …………。

 ……………………。

 ………………………………合図だ。

 ──今っ!!!


「闘気解放!! 滅殺闘拳!!!」

「スラァァァァッシュ──!!!」


 俺達の攻撃は、敵の両側面に命中する。


「ぬぉぉぉぉぉぉ!!!」


 オネエさんはスキルを継続し続ける。


「ギャリャリャリャァァァアア!!!」


 こちら側に押し出され、俺の突き立てる剣の刃に、敵の体が徐々にめり込んでゆく。


「なんのこれしきぃぃぃ……!!」


 俺は絶対に剣を離すまいと、グリップを握る両手に力を込めた。


「ギャァァ゛ァァァア゛アアガガガ!!!」


 敵が悲鳴のような叫び声をあげる。

 その体を大きく揺さぶり、この状況から脱しようと試みている。


「動くんじゃねぇぇ!!」


 カゲトが敵の正面から、ロングソードを突き立てた。


「グギャ!?」


 狙い通りに刺したロングソードは、弾き返される事なく体を貫通する。


「グリャギャキャギャキャキャキャァアアアア!!!」

「嘘だろまだ動けんのかよ!? 貫通してっぞ俺の武器!!」


 カゲトの驚く声。


「まだまだいきますよ!!!」


 続けて背後から、オーヴィムさんがナイフを突き立てる。

 ナイフは、一対の翼を繋ぎ止めるように突き刺さった。


「ギ……ギギギギ……」


 しかし、敵の動きは止まらない。


「ギャギャギャギャギャギャ!!!!!」


 体を激しく揺さぶり暴れ出す。

 この体勢も限界が近い。

 振り払われてしまう……!


「全兵突撃!! 総攻撃だ!!!」


 そんなピンチに響く、見知らぬ人の声。


「はぁぁぁぁぁぁ!!!!」


 大勢の人々を率い、その先頭をかける剣士は。


「ギャギャギャギャ……ギャァ!?」

「トドメだぁ!!」


 俺達が動きを封じている敵に対し、大きく剣を振り上げた。


「グギギギギ……」


 敵が、煙と化して消失する。


「ふぅ……大丈夫でしたかな?」


 そんな、おいしい所だけ持っていった剣士は、俺達を一瞥すると。


「ディテク公国騎士団副団長グレイ、ここに見参!」


 そう一言、言い放った。

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