104 大丈夫かしら、ホント
結局あのあと、お昼ご飯を抜いてまでして追跡を続けたが、特に変わった様子も無く。
「なぁ、ミツル。本当にあの綺麗な姉さんが犯罪者だと思うか?」
「正直言うと、そう言った風には全く見えないなぁ……」
辺りが薄暗くなり、流石に疲れた俺達は、尾行をやめてトボトボとギルドへ向かっていた。
「四人での尾行だと非効率だな……」
ツユ言う通りだ。
四人でつけているとなると、最早相手が気づいていないかどうかも怪しいところ。
ちょっとミスったか……?
「……でも…………やっぱり……」
リメアが顎に手を当てて、ぶつぶつと独り言を言い続ける。
「どう? 神聖術的な観点では何か掴めた?」
俺の魔法持久力がいくら高くても、あくまで魔力の異変に気付くことしかできない。
微量な神聖術や、そもそも神聖術か否かの判断は、女神であるリメアしか気づくことができないと思われる。
実際今回の尾行では、二足歩行の召喚獣と戦った時のような違和感は感じなかった。
「うん……やっぱりあの人、何かある。力を制御しきれてない」
リメアは何かを感じ取っていたらしい。
「そっか……明日はどうする?」
「宿に戻ったら皆で作戦会議だよ。それとミツル」
リメアは俺に指を指すと。
「アンタはまず早急にメロエのところへ行って、ハイドザマジックを教わってきなさい」
***
俺は一人、ギルドに赴く。
この時間ならおそらく、オネエさん一行は夕ご飯でも食べている頃だろう。
「あ、見つけた!」
俺は足早にメロエ師匠の元へと向かった。
「あら、ミツルちゃんじゃない」
「ど、どうしたのぉ」
「師匠、僕にハイド・ザ・マジックお願いします!」
「ん〜? えっと、りょうか〜い」
俺はメロエ師匠の魔法を受ける。
なるほど、体を包む感じで魔力の膜を張る感じかな。
「ありがとうございます。よし……ハイド・ザ・マジック!」
魔法を発動すると、全身が魔力に包まれる。
「よし、完璧!」
「ほんとぉ、呆れちゃうくらいの才能だねぇ」
メロエ師匠が頬を膨らませる。
「僕は覚えるの早くても、殆ど使い物にならないのが問題なんですよ……」
「はいはぁい、慰めはいいからぁ」
いやいや、本当だって。
だからこそ、威力を上げるためにメロエ師匠の元で特訓をしてたんだし。
「とにかく、ありがとうございます! それでは!」
「ちょ、待てよ!」
キムタクみたいな言い方で呼び止められたので、振り返る。
声の主はロイだった。
「ん、どうした?」
「どーなんだよ、事件の調査が云々ってやつ」
「あー……正直、成果は芳しく無いかな……。でも、足は掴めた感じだから、頑張るよ」
「ミツルちゃん、頑張ってね」
俺は三人にお辞儀をすると、ギルドを後にした──。
***
時は少し遡る。
ディテク公国ギルド内飲食店
ジェーン率いる俺達三人のパーティーは、クエストを済ませた後、それぞれが注文したメニューを食べていた。
「うーん、やっぱり心配だわ」
ジェーンがぼそっと呟く。
「ジェーンちゃん? 心配しなくてもぉ、きっと大丈夫だヨォ」
そういうメロエも、手の進みが遅い。
「…………なぁ」
俺の一言に、二人が疑問を浮かべる。
「あいつらの話、本当に信じてるのか?」
異世界人の話だけならまだわかる。
しかし、転移だ転生だとか、神や神聖力だと言うものは、御伽話でも聞いているのかと思うほど馬鹿げた話だ。
「あら、ロイちゃんは信じていないの?」
「そういうわけじゃねぇよ。あいつらが嘘つけるとも思えねーし」
「そうだねぇ」
信じないとは言っていない。
ただ、うん分かったとすぐに信じられる話でもない。
「大丈夫かしら、ホント」
いつも食べる時のマナーはきっちりしているジェーンが、今日は頬杖をつきながら飯を食ってる。
──少しの沈黙のあと、メロエが口を開く。
「ねぇ、やっぱり心配だしぃ、明日ミツル君達の後つけてみなぁい?」
「後をつけるって、ストーカーになれってか」
「あ、見つけた!」
突然聞こえてきたミツルの声に、俺とメロエはドキッとする。
「あら、ミツルちゃんじゃない」
「ど、どうしたのぉ」
「師匠、僕にハイド・ザ・マジックお願いします!」
「ん〜? えっと、りょうか〜い」
──こんなやり取りをした後、ミツルはすぐに去って行った。
「で、どうすんだ? ストーカーの話」
「全く、人聞き悪いなぁ。見守るって言ってヨォ。守護天使メロエちゃんってねぇ♡」
守護天使メロエちゃんか。
……って、ストーカーなのに変わりはねぇじゃねぇか!!
「それにぃ、ロイ君だってぇあの子達の正体、気になってるんでしょぉ? 何かわかるかもヨォ」
確かに、奴らが嘘をついているのか否か、はっきりするかもしれないが……。
「ジェーンちゃん? どうお?」
俺とメロエは、ほぼ同時にジェーンの方へと顔を向ける。
「…………よし!」
ジェーンはコップに入った水を飲み干すと。
「明日は彼らを見守るわよ! 題して『守護天使大作戦』!」
「良いねぇ良いねぇ! 守護天使メロエちゃん、しゅつど〜う!」
なんかはじまる雰囲気だ。
やれやれ、俺も付き合うとするか。
…………正直、俺も気になるし。
「おー」
俺は適当に返事をすると、コップの水を一口、飲んだ。




