103 必ず証拠を掴んでやる!!!!
浴場を出たあと、俺達は宿に戻り就寝した。
次の日の朝、雲一つない快晴の日。
リメアが定期報告を終えると、皆で支度をして宿を出た。
「よーし!! 行っくぞー!!! 必ず証拠を掴んでやる!!!!」
リメア、いつになく張り切ってるな。
「それで、これから俺達、どーすんだ?」
「昨日浴場から宿に戻る道中で話したではないか。カゲト、お主もう忘れたのか?」
「そうだっけか? んと……忘れた!」
忘れたんかーい。
「リメアが言ってたよ。騎士団長が怪しいとかなんとか……」
「ミツル! 声がでかいよ!!」
「あ、ごめん」
というか、そのリメアのツッコミの方が数倍デカいぞ。
「だが確かに、どうするのだ? その騎士……例の女を追うにしても、アテはあるのか?」
「勿論ありますとも。ミツル、出番だよ!」
「了解!」
リメアに呼ばれた俺は、パーティーの先頭に立つ。
「街の周りを一周する特訓、やってたでしょ? その時俺、結構な頻度でその人と遭遇してたんだ」
町の周りを一周する特訓だったので、町の中で会ったわけでは無い。
この町もディテクと同じく、東西南北に四つの入口がある。
その門を通り過ぎる時に、町内で巡回をする騎士団長と鉢合わせる事がよくあった。
その縁で、実は騎士団長とは顔見知りでもあったりする。
「だからちょうどこの時間には、多分あの辺りを通ると思うんだよね」
俺は皆に説明する。
「じゃあそこで待ち伏せすんのか?」
「そういうこと」
俺の説明にカゲトが腕を組んでうんうんと頷いた。
「ではそこへ向かおうか」
俺を先頭に、皆で騎士団長の出没予想場所へと向かう。
道中、リメアから幾つか説明があった。
この間騎士団長とすれ違った時に僅かに感じた神聖力。
勘違いかと思ったが、他に有力な手掛かりがない今、自身の感覚を信じてみる事にしたらしい。
というかそもそも、神聖力が無い世界で神聖力と勘違いするような力を感じた時点で怪しいのではないか、と思い至ったのだとか。
少し歩くと、やがてその場所が見えて来た。
町の正門からほど近く。南住宅街貴族区と呼ばれる場所に俺達はきていた。
彼女はこの時間、この辺りを巡回するはずだ。
貴族の住宅街というだけあって、家というより屋敷が立ち並ぶ。
その屋敷の影に身を潜めてから五分程。
「…………来た!」
「ミツル、声!!」
「ご、ごめん……」
視界に、美しい白銀の髪を持つ女性が現れる。
あの女性騎士が、騎士団長で間違いない。
「ミツル、ハイド・ザ・マジック頼んだ」
「え、やり方知らない」
「え!? あのぶりっ子から教わってないの?」
「うん」
メロエ師匠からは付与系統の魔法しか教わってない。
「全くもう、使えないなぁ」
「今俺の事使えないとか言った?」
「言ってないよ」
絶対言ったろ。酷いなぁ。
「仕方ない、このまま追うよ」
こうして俺達は騎士団長の追跡を開始した。
***
それから十分後 南住宅街貴族区
「アイラさん、本当にここでの張り込みで大丈夫でしょうか……」
私は不安を覚える。
張り込みというものは普通、見つかりにくい場所に身を隠すものだろう。
しかしまさか、住宅街の真正面にあるお店を選ぶとは。
「というかアイラさん。二つの事件、どちらも早朝の出来事ですよね? 早朝と呼ぶには少しばかり遅い気が……」
時刻は七時。
店が開いた丁度の時間に席を取ったのだ。
「うるさいぞオーヴィム。昨日は寝不足だったと言っただろう? だから今日は起きれなかったんだよ!」
昨日は丸一日使って、今日の予定を構想していた。
南区と北東区、どちらの方が次の犯行が行われる可能性が高いか、犯人はどのような風貌をしているのか、またどんな方法で犯行を行うのか、などだ。
そうして準備を万全を尽くし、あとは実行に移すだけだったのだが……
「まさかアイラさんが寝坊をしますとは……」
「う……うるさーーーい!!!」
アイラ様が顔を紅くして声を張りあげる。
「だいたい、なんで起こしてくれなかったんだ!! オーヴィムは起きてただろうに!!」
「起こしましたよ、何度か。ですがそのたびに『んーむにゃむにゃ……もうちょっと……』と言いますので、主人の仰せのままにと」
「何が仰せのままにだ!! と言うか、私の真似するなーー!!」
「ところでアイラさん、失礼ながら申し上げますと、寝癖が凄いですよ」
「っっっ!!!」
テーブルに乗り上げる勢いだったアイラ様は、再び着席し紅い顔のまましきりに髪を梳かしだす。
「オーヴィム!! 私で遊ぶんじゃないぞ!!」
再びテーブルに身を乗り出すアイラ様。
しかし。
「お客様、ホットコーヒーをお持ちしました……」
気まずそうに言うウェイトレスに、アイラ様は顔から蒸気が出るんじゃないかと言うくらい真っ赤になって、ついには縮こまってしまった。
「すみません、つい」
私はアイラ様に微笑み返すと、話を本題へ戻す。
「それで、これからどうしましょうか。昨日たてた予定からは大きく逸れてしまいましたが……」
「こらオーヴィム、予定の前に話を逸らすな!!」
アイラ様は言いながら、コーヒーにお砂糖をドバドバと投入し、かき混ぜる。
「まぁ……」
そして一口含むと、飲み込んで答えた。
「今日はここで張るしかないな……。今日、再び犯行が行われるとも限らん」
アイラ様は再びコーヒーを一口嗜むと、住宅街の大通りにどこを見るともなく目をやった。




