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101 探偵と助手②

 アイラ様は口いっぱいのトーストを、牛乳で押し流すと。


「プハー! ……コホン! えー、では気を取り直して……」


 机の上に広げた資料をまとめて、順番に並べた。


「オーヴィムが忍び込む瞬間の写真を撮った後、ついでにギルドや図書館に寄ったんだ」


 この国はギルドだけでなく、図書館も二十四時間いつでも入館できる。

 しかし私が仕事をしている間に、そんな事をしていたとは……。


「転移事件は二度あっただろう? 証拠が何一つ無い今、まずは共通点を見つけるのが第一だ」


 数多ある資料の中から、毎朝ギルドの掲示板に貼られるニュース記事。

 その中で、転移事件に関しての事柄が記載されているものが順番にテーブルへ並べられた。


「二つの出来事の共通点、それをここに書き出してみた」


 アイラ様はそういうと、テーブルに並べられた資料の中から一つのメモを取り出す。


「その中でも重要だと思ったのは、これだ」


 メモにずらりと書かれた項目の内、赤丸で囲ってあるところを注視した。


 ・特殊な残存魔力によって、追跡が困難である。

 ・転移は決まって早朝に起きている。

 ・どちらも住宅街での事件である。

 ・被害者はその殆どが貴族である。


「そして特に私が一番気になったのは……」


 アイラ様が、一際目立つ様に何十にも重ねられた、最後の赤丸印を指差した。


 ・攫われた貴族は、様々な悪い噂を持つ貴族である。


 そこにはそう書かれていた。


「私、ピンときちゃってな。絶対何かあるだろうと思って、それぞれの貴族の家系を徹底的に調べた」


 今度は図書館から借りた、幾つも付箋が貼られている本を何冊かドカンとテーブルに置いた。


「昨日の夜中、結構な時間調べてたんだ。お陰様で寝不足だよ」


 アイラ様は大きく欠伸をすると、残った牛乳を飲み干した。


「おかわりだ、オーヴィム」


 んっ、と差し出してくるコップを受け取って、牛乳を注ぐ。

 アイラ様は再び一口飲むと、牛乳ヒゲのまま説明を続けた。


「しかしまぁ、貴族っていうのは自分の事を自慢するのが大好きみたいだね。私も一応貴族だけど」


 私はナプキンを持って牛乳ヒゲを拭き取る。


「牛乳付いてますよ」

「ん……ありがと」


 アイラ様は少し顔を紅らめつつ、メモに視線を戻す。


「……誘拐された貴族の殆どは、遺族やそのご先祖に素晴らしい功績を残した者がいる。こいつらはその二世や三、四世ってわけだ」

「それが、例の事件とどう繋がってくるのですか……?」


 私の質問に、アイラ様はやれやれという表情を見せた。


「要は、だ。今のこいつらはなーんもやってないって訳。その癖、悪知恵は働くらしい」


 アイラ様は、トドメと言わんばかりに法律の本を取り出す。


「ここに国政についての掟が書かれている。これによると、貴族は一定の額以上を国から受け取ってはならないとある」


 アイラ様はページをめくり、続けて指をさした。


「だが最初のページには、『帝国はそれすなわち皇帝であり、皇帝こそが帝国である』と書いてある。これはまぁ、要は皇帝そのものが国って言ってる決まり文句的なやつだがな」


 アイラ様は本をパラパラと流す。


「元老院議会などは、後から制定されたものだ。それにここには、帝国の議会とは一言も書かれていない。拡大解釈すれば、皇帝以外は国じゃないと言ってもいい」


 該当のページを開くと、掌で叩いた。


「これが抜け穴。彼らの言い訳じゃないかな」



 私はアイラ様の推理に、度肝を抜かれた。

 これこそが、伯爵の探し求めていたものだ。


「ここまで調べてしまうとは……。このオーヴィム、感服いたしました。しかし……」


 私には気になる事がある。


「これは転移事件となんの関係があるのでしょうか」


 少し、話が逸れている気がする。


「鈍いな。オーヴィムの為に調べてあげたのに」

「私の……為に……?」

「お父様の事だ。どうせ妙な正義感に駆られて、ある事ない事調べ出したんだろうと思ったんだ。だからはっきりさせようと思って。でもまさか、本当にこういうのが見つかっちゃうなんてね」


 アイラ様は頬を掻きながら笑う。

 私は、そんなアイラ様に魅入ってしまった。


「な、なんだオーヴィム、じっと見たりして」

「いえ、すみません、何でもありませんよ」


 私は身なりを整えて、話を戻した。


「それで、転移事件の方は?」


 アイラ様は、貴族問題のメモを指で叩く。


「これが大きく関係してるんだよ。ほぼ確実に」


 アイラ様はニヤリと笑う。


「攫われたのは不当な貴族の住む住宅街ばかり。大方、犯人の同期は証拠を掴んで大っぴらにする事だろう。となると、次の犯行現場は自ずと絞られてくる」


 ディテクの街の地図を取り出すと、机に広げたアイラ様は、二箇所を大きく丸で囲う。


「北東貴族住宅街か、南住宅街貴族区だ」

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