表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/79

010 緊急クエスト、ねぇ……

 次の日の朝。

 結局上着を買っていないことに気づいた俺は、防具の上から学ランを羽織るスタイルになった。

 ダサい。

 ダサいのは分かってる。

 でもしょうがない。

 上着を買うまでの辛抱だ。

 はぁ。やっと学ランから解放されると思ったのになぁ。

 俺が起きると、リメアはすでに起きていた。

 水浴び場についている鏡を見ながら、歯を磨いている。


「おはようミツル」

「おはよぉ」


 あくびをしながら返事をする。

 硬いところで寝ていたからか、少しばかり体が痛い。


「そういえばミツル! 昨日防具屋に行く途中に見せた魔法あったでしょ?」


 昨日見せた魔法……あっ、あれか、紫の玉出すやつか。


「今さっきね、この魔法なんかに使えないかなぁと思って色々試してたの」

「うん」

「そしたらさ、玉、飛ばせるようになったの!」

「飛ばせるようになった?」

「うん、そうなの!」


 リメアはそう言いながら鏡の隣にある内開きのすりガラス窓を開け、紫の玉を生成すると。


「はぁ!」


 リメアが窓から放った玉は、見事に遠くを飛んでいたカラスのうちの一匹を仕留めた。


「うお、すげぇ!」


 これがいわゆる攻撃魔法というやつか!

 何気に攻撃魔法を間近で見たのは初である。


「ふふ〜ん、教えて欲しい? 食堂でなんか奢ってくれたら考えてあげても良いけど?」


 リメアがめっちゃドヤ顔で言ってくる。

 くそっ! 羨ましい! 教えて欲しい。

 てかこの女神様1ルンも持ってないはずだから、どちらにせよ俺が払うんだろう?

 是非教えて頂こう。


「是非是非教えて頂きたい!」

「ふふ〜ん! 良いヨォ! 教えてあげるヨォ!」


 テンション高いなリメア。


「因みに、その魔法、名前は?」

「あっ、確かに、これと言った名前、付けてなかったな……」


 リメアは少し思考したのち、こう名付けた。


「マジックボール! どう!?」

「ダサくね?」


 率直な意見である。

 魔法の玉。ダサい! 圧倒的簡素!


「わぁ酷いよミツル!」

「い、いやぁ、だって……」


 ──バサバサ


 ん? なんか今、変な音がしたような。

 ……気のせいか。


 ──バサバサバサバサバサバサ


 いや、やっぱ音がするぞ。

 なんだ? 羽音……みたいな……。


「ねぇリメア、なんかさ、羽ばたく音みたいなの聞こえない?」

「言われてみれば確かに」


 ──バサバサバサバサバサバサバサバサバサ


 少しずつ大きくなる音。

 俺達はお互いに、その方向へと目を向ける。

 

「ガー! ガー! ガー! ガー!」


 そこには、カラスが見た事のない数で群れていた。

 

「り、りりリメア! 窓! 窓閉めろ!」


 カラスの大群が凄い勢いでこちらに向かって来る。


「おっりゃぁ!」


 間一髪、窓を閉めるリメア。

 俺は両手で窓を押さえているリメアに代わり、すかさず窓の鍵を閉めた。

 刹那。窓に、大量のカラスがぶち当たる。


──ドドドドドドドド!!!


 凄い騒音ののち、やがて静寂が訪れた。


「ったく、どっからあんな数飛んできたんだ」

「ふぅ……本当にね」


 まさか異世界に来て、一番最初に敵意を向けられる相手がカラスの群れになるとは思わなかった。

 これは……カラスに顔覚えられたかもな。


 そんなこんなで、俺はその魔法を教えてもらった。

 ……あと結局、名前はマジックボールに決定した。

 リメアに1200ルンのバフフィッシュのムニエルを奢ったが、ただでさえ防具で金欠だったので、俺は一番安いスパイダーボイルで我慢する。


「んん〜〜!! おいしぃ〜!」


 くそっ! 俺だってまだ食ったことねぇのに! スパイダーボイルとの金額差700ルンである。

 おかげさまで財布が底を尽きてしまった。

 アンタ女神様だろう。

 チュートリアル分の資金くらいくれたって良いじゃ無いかぁ。

 贅沢しやがってぇ。

 まぁせっかくオケノス様からもらったお金を全部防具代で支払ってしまった俺もバカだった。

 次からはもっと計画的に使わなければ。

 食堂で食事を済ませた俺達は、一階へと向かう。

 ……あれ、なんか人少なくね?

 いつももっと賑わってるのに。


「ねぇミツル。昨日よりも人少なくない? 朝っていつもこんな感じなの?」


 リメアも疑問に思ったらしく、そう俺に訊いてきた。


「いや、いつもならもっといるはずなんだけど……」


 俺は受付で昼寝(時間的に二度寝?)をしているいつもの男のところに向かう。


「今日っていつもより人がかなり少ないと思うんですけど、何かありました?」

「ふぁ〜……んぁ? 皆さんあの緊急クエストに行かれたんじゃないすかねぇ」


 なんだそれ。


「緊急クエスト、ですか?」

「えぇ」

「ありがとうございます」


 俺はお礼を告げたあと、リメアと掲示板へ向かった。

 んんと……なになに……?


『緊急クエスト!! アドベルン郊外のベルン地下遺跡がダンジョン化。魔物が大量発生。クエスト成功の場合、参加者全員に10000ルン』


 と書かれている。

 アドベルンとは、今いるこの町の名前だ。

 というか、ダンジョン化ってことはダンジョンは"なる"ものなのか。

 初耳である。


「緊急クエスト、ねぇ……」


 いかにもゲームっぽくてワクワクする。

 でも、俺が行ってもほぼ確実に足手纏いor死だよなぁ。


「ねぇ、このクエスト参加しただけで10000ルンももらえるらしいよ、ダンジョン。行ってみない?」


 えっ。

 ダンジョン、行きたいの?

 確かに、魔物は薬草採取の時、遠目から見たくらいだから気になる。

 それにダンジョンなんて存在、興味をそそらない訳が無い。

 だがそんな興味よりも、もっともっと大事な事がある。

 それは……。


「俺は行きたく無い。危ない。行ったら絶対に死ぬ。痛いのヤダ」


 もっと言うなら、参加するだけで戦わなかったり、守られてばっかだと他の冒険者に悪いしな。

 とにかく、迷惑かけるのは必至である。

 リメアも、きっと納得してくれる。

 そう思っていたのだが。


「冒険者が危ないところに行かないでどうするの?」


 ……おや?


「興味があって、しかも参加するだけで稼げる! 一石二鳥じゃない。行きましょう! ゴーゴー!」

「えっ、えっ!? ちょっ、待っ」


 リメアは緊急クエストの紙を一枚ひったくると、俺を強引に引っ張り走り出した。

 待て待て待て、俺、剣術も魔法もろくに扱えない足手纏いだぞ!

 そもそも俺、冒険者になるつもりなんか無いって!!

 てかこの女神、意外と力強い!!!

 俺は腕っぷし女神に腕をがっちり握られ、なす術もなくダンジョンへと連行されるのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ