Prologue リスタート2
投稿遅くなってマジすんませんでした~~~!!
次からは早く投稿で切る様に努力します(早く投稿するとは言ってない)。
見捨てないで下さい。
「【シュネー】Threetime」
しかし、実際はリンデルバルドに至るまで奇麗に地面に亀裂が入り軌跡を描いている。
突如としてリンデルバルドの姿が笹木の目下に現れる。
まるでそこまでの過程が何も無かったかのように_______
加速の超常の力。一秒、否。零点一秒単位で細胞を操作する人智を超えた能力制御により行使できる力。一つでも体の細胞加速制御がブレればブレた部分が負傷する使い勝手の悪い力だ。
「なっ、何でありますかぁ?」
流石にマイペース過ぎる笹木も上ずった素っ頓狂な声を上げた。上半身を反射的にのけ反らせ攻撃を避けた笹木だが体勢が悪い、絶好の攻撃のチャンス。間髪入れずリンデルバルドは拳を叩き込んだが____
「くぅぅう。【パペット・ツーク】おりゃぁぁあ」
_____ギュルン。
突如として笹木の方を向いていた自分の拳が方向を変えリンデルバルドの方へと切り返してきた。
「なっ…ん、だぁ」
予想外の攻撃に必死で避けようと背中をのけ反らせたが顎に当たり脳震盪が起こる。リンデルバルドは千鳥足になりながら後退するが水平感覚を失い視界がぐらつく。
足に力を何とか地面に手をつき踏みこたえた。思いもよらぬ燕返し。
「何しやがった、変態女」
「変態じゃないでありますよ、リンちゃん。我は笹木ちゃんですよ~」
「馴れ馴れしいな本当、リンちゃんじゃねえ。質問に答えろ変態女」
飄々とした笹木の態度にむしゃくしゃする、この気が散るのも笹木の超常かもしれないと本気で思う。
一応体を操られた時に直ぐに確認したが何か付着したり糸が巻き付いているわけでもなかった。つまり、笹木の超常の条件、超常元は未だ分からないまま。
「でへへへ。我が答えてやる義理は無いでありますよ~」
笑い方気持ち悪いな。それにそのままノリで話してくれそうな雰囲気醸し出しているくせにコイツ喋らねぇ、腐ってもこの組織の人間だな。
腐っても。
「と言っても____もうさっきみたいな不意打ちはもう効かなそうでありますね………。だったら遠慮なく行くでありますよ~~~~!!とうっ」
「グガッ」
気付いたら笹木の拳が俺の目の前にある。なんなんだ、意味が分からない。
笹木が一歩踏み出した矢先のこと、何か俺の様に超常を行使したモーションも痕跡も無い。何故だ?笹木は他人に干渉する超常じゃないのか?
常人じゃありえな速さだ。俺とは七メートル程離れていたはずだぞ、それを瞬く間に詰めてきやがった。
ありえない。ありえない。超常は一人一つのはずだ。万に一つも複数所持はあり得ないはずだ。だけど実際に笹木は二つの超常を‘‘使い分けている”。それがリンデルバルドにとっての何よりの証明だった。
クソッ____二個持ちなんてありかよ!?俺は、俺はとことん平凡なんだな……。
なんでハーマンさんは俺の事を、何もない俺の事を未だに‘‘子供”でいさせてくれるんだ……何もできない俺を。
懐疑的な思考の陥ってしまうが戦闘が止むわけもなく笹木のハイキックが容赦なく叩きつけられる。得も言われぬ劣等感がリンデルバルドを苛む。
挙句。
リンデルバルドの超常より笹木の超常の方が使い勝手も良さそうに思える。
「なっ…クソが、人のアイデンティティを奪うんじゃねぇ!!」
「意外と面白いこと言うですね~。リンちゃん。我の蹴り易々と受けりやがるですし、やっぱり英雄?の子供というのは本当なのです?」
「リンちゃんじゃねえ。’’あの野郎”の事は聞くな!!」
目に見えてリンデルバルドの機嫌が悪くなり、笹木は攻撃の合間に針に糸を通すように俺の四肢を操ってくる。
クソ。過去の事なんて気にしそうもないコイツが何で義父に拘る。
「くらえ~。【ハリセンボン】」
笹木の能天気な声が耳に届いたかと思うと大量の何かがこちらに飛来してきた。
それは僅かに光を受け取り淡く輝き、目の前に在る。
「ちっ___【レーゾン・デートル】」
少しの影を残してリンデルバルドはその姿を消す。
リンデルバルドは部屋内を縦横無尽に駆け回る。正に水を得た魚であった。
部屋の天井から壁全てが今やリンデルバルドの足場であり即座に攻撃のできる発射台。
リンデルバルドは笹木の右半身側を通り抜ける。
リンデルバルドは笹木の左半身側を通り抜ける。
リンデルバルドは深く足を曲げ笹木の目下を通り抜ける。
リンデルバルドは笹木の背中側を通り抜ける。
「一分で片付けてやるよ変態女」
「うぅ~~。目が回るでありますです……。ふぇ~」
「ちっ」
こんな時ですらちゃらんぽらんな態度を崩さない笹木。
どうせ直ぐに今の様なぞんざいな態度は取れなくなる。今からはほんの一瞬のミスが命取り。
目にも止まらぬ高速移動で笹木の【ハリセンボン】を軽くかわす。
リンデルバルドの瞳からは絶えず血の混じった涙が止めどなく溢れている。
【レーゾン・デートル】は自爆技だ____脳への負荷が多き過ぎて今の俺では二分ほどで脳がショートしちまう……が負けるわけにはいかない。
俺にはもう後がねぇ。これで負けたら今度こそ本当に何もできない俺の言った通りの無能になっちまう。
それはあってはならない。絶対に。
[残り一分四十二秒]
**** ****
「ちっ_____【レーゾン・デトール】」
苦虫嚙み潰した様にリンデルバルドが呟いた。その瞬間まるで神隠しに会った様にその姿を消す。
なるほど……。明らかにさっきまでの超常現象と違う___これは相当な無理をしていますね。
よく見ると床に血が付着しているし今までの技では一回使うごとに超常の行使を辞めていた。
でも今回は連続。それも相当な運動量ですね。
「一分で片付けてやるよ変態女」
「うぅ~~。目が回るでありますです……。ふぇ~」
「ちっ」
リンさんがスンゴイきつく睨んでくるのですが。
もしかして私のかまととがバレてる?そんな様子は無かったのですが。
リンデルバルドが足場とした場所はクレーターの様な凹みを作り踏み込みの重さを表している。
最早この空間の秩序など存在しない。絵図らだけを見れば無法地帯そのもの。
管制室に映し出されているカメラ映像は本体の画面が砕け何の意味もなしていない。
【レーゾン・デトール】による大幅な身体強化のお陰でリンデルバルドの攻撃が幾度となく笹木の喉元に迫る__が一発たりとも当たることはない。
笹木もまた超常を‘‘常時”行使している。
【司令】。それが笹木の超常元。
笹木は自分が指定したありとあらゆる物を動かすことができ、その解釈は生物にまで及んでいる。
脈絡なくリンデルバルドへと向かってきた自分の拳。
超常でなければ何なのかと思えるほどの超加速。
物理に反した起動で後を追跡して来る数千本の髪の毛。
この全てが一つの超常で完結しているのだ。
笹木はリンデルバルドの足へと司令を出す。予想通りリンデルバルドは自分の足同士が絡まりうつ伏せ状に倒れる。
笹木は体をリンデルバルドの横側へと滑り込ませると俊足の蹴りを放った。
「グッ」
鈍く重い音を立ててリンデルバルドが壁へと蹴り飛ばされる。
耳に重鎮する様な鈍い音と共に煙幕がリンデルバルドの周囲に張られた。
笹木は瞬時にその超常でリンデルバルドの方へと薄肉し拳を振るうが_______そこには亀裂で引き裂かれた壁のみがあった。
「なっ__!」
何処だ。
音もなく巻き上げられるダストの中へとその姿を消したリンデルバルド。
ずっとむしゃくしゃしていた割に周りをよく見ているし応用力も高い。
不意に笹木に影がかかりその喉元に拳が迫る。管制室から喧々諤々が同心円状に伝播した____が直ぐに動揺が走り抜けた。
部屋中に響くバキバキッっと何かが砕ける音。リンデルバルドが驚嘆の声を上げ笹木に目をやると見るも無残に笹木の首は捩じ切れていた。首が百八十度真反対の向きであるはずの笹木の眼光はリンデルバルドを捕らえ首の向きの合わせるように笹木の体も旋回し首が正常な位置にも戻る。
背を下にして地面に手をつき笹木はリンデルバルドの首に足を絡め放り投げた。
「ふぅ~、危ないあぶないでありますね」
またやっちゃいました。この技は絵ずらがグロイから使うなって先生に言われていたのに……神経も使うから体力の消耗も激しい。
細胞の再生は体力の消耗と共にお腹が空きます。たしかHTPを消費して指令を出す_____今の私だと細胞の再生で多く消費し過ぎてしまいます。
まだ首が繋がりません。今までの指令で思ったよりもエネルギーを使い過ぎていたようですね____
両方の手で頭を支えながら笹木は指令を自分の細胞に切り替えると首回りの皮と肉が産声見たく膨れ上がり笹木の半場、捩じ切れている首をもとに位置に戻した。
「ぐうぅぅぅぅぅぅぅぅう~~~~~_____あっ///」
随分と間の抜けた音が室内を走り抜けた。
笹木の腹の虫が鳴りやむ事は無い。
笹木の超常使用限界まで大体三十二秒。
最後まで読んでいっていただきありがとうございます。
是非次の話も読んでいって下さい。