クズの処し方、意外と難しい?
今、いわゆる「ざまぁ」ものが大流行である。
主人公(主に悪役令嬢的存在)を徹底的にいたぶるクズと、ふとしたことから主人公と出会うヒーロー。ヒーローとの出会いをきっかけに強大な力を手にした主人公はクズに「ざまぁ」する。それが基本形。
一言でざまぁものと言っても、こういった物語はそれこそシンデレラの頃から創作の基本であり、別に否定するようなものではない。
しかし、「ざまぁ」されるべき「クズ」を書くのがどうにも苦手……
という悩みを、私は下記の↓エッセイで書きました。
私が「ざまぁ」系を書かない理由~クズキャラが書けない~
https://ncode.syosetu.com/n0770hm/
あの後も色々読んで色々なクズを見たけど、やはり人気上位の方々はクズキャラを書くのが上手い。
「こんなヤツ、やっちまえ!」と無条件に思わせてくれるクズが本当に多いです。
クズをクズとして書かないと、ざまぁに説得力がなくなるのは当然ですからね。
しかしそんなクズたちの顛末で、「ちょっとこれは……」と思ってしまうような作品もちらほらありました。
その中で気になったのが、「クズを徹底的に「ざまぁ」してくれない」作品。
つまり
・クズが最後まで改心もしなければ反省もしない
・過去のクズ行為に対して厳罰が下されない
・主人公が「ヒーロー様の手を汚させたくありません!」などと叫ぶ、もしくは「主人公を悲しませたくない」などの理由でヒーローが主人公連れてクズどもの前から立ち去るなどしてクズが助かる
・クズの罪がうやむやになっているうちに主人公が幸せを掴みましたで終了
というような結末の作品ですね。
主人公が幸せになっていれば、クズがどうなったかなんてどうでもいいでしょう?というタイプのオチ。
いや、まぁ、分かるんですよ。
この世は勧善懲悪で成立するものではない。クズにもクズの正義があり、クズたる理由があってクズになったわけで、誰しも赤ん坊の頃からクズだったわけではない(なろうでは、コイツら赤ん坊の頃からクズだったろ?と思うようなキャラ多いけど)
クズをこてんぱんにざまぁしたところで、主人公の心は晴れない。復讐とはかくも虚しいもので云々……というのは、古今東西様々な物語で書かれてきたことです。
クズにも一定の理があり、その正義を一刀両断するほどの権限は自分にはないと自ら退く主人公、潔いと思います。
主人公だけではなく、クズがクズに至る背景やクズに至る過去がしっかり書かれていれば。
主人公とクズ、両者がその結末に至る道筋が納得いくレベルで書かれていれば。
クズがほんの少しでも改心の兆しを見せていれば――
主人公との和解エンド、もしくは主人公がクズと縁を切って自分だけの幸せ掴むエンドも十分アリだと思います。
しかしですね。
私がなんか違和感を覚えたその作品は、非常に典型的なテンプレざまぁもの。
クズが徹底してクズでしかない。
これだけのクズを書ける技術が欲しいと心底唸ってしまうレベルのクズ。
クズに至った背景も何もなく、ただただ主人公をいたぶる為にしか存在していない。
改心の兆しなどなく、それどころか最大のクズに至っては最後まで主人公に抗おうとして、自分が悪いなどとは露ほども思っていません。多分今後も反省することなどありえないだろうと確信するレベルのクズです。
恐らく読者の多くは、そんなクズどもが豪快にざまぁされるシーンを心待ちにして読み進めていたことでしょう。
なのに、そのクズどもはざまぁされなかった。
いや、作者様的には恐らくざまぁしたつもりでいたのでしょう。しかし、クズのクズっぷりに比してざまぁのレベルが足りなかった、というべきでしょうか。
主人公が虐められるシーンは過剰なほどたっぷりと書いたのに、クズどもは代表格数名がちょっとボコられて終了。誰も死にもしなければ拷問もされない。豪勢すぎる生活レベルが今後それなりにつつましくなっていくんだろうな、と予測できる程度。
しかも最悪のクズに至っては、放置してたら間違いなくまた何かやってくるでしょ?という疑問が残る。
案の定、感想欄は結構な荒れ具合でした。
典型的なざまぁものでざまぁしなかったら、こうなるんだな……とちょっと怖くなりました。
それとは逆に、クズへのざまぁが酷すぎてイヤーな気持ちになっちゃうパターンもあったり。
主人公側の受けた被害を詳細に書かないうちから、加害者のクズのみならずその一族郎党、幼い子供まで全員殺っちゃうのはさすがにやりすぎでは?と思ってしまった作品もあります。歴史物ではよくあることとはいえ。
最後まで読みましたが、主人公側の被害の説明をされても、やっぱり納得いかない感はありました。確かにクズどももクズだけど主人公自体が一番のクズじゃ……いやこのクズどもに対抗するには主人公もクズにするしかなかったのか?とか思ってしまった。
そして、こういうやりすぎパターンは何故か感想欄拍手喝采だったりする。
まぁギアスとかもウケたし、こういうものは一定の需要があるのでしょうけれども……
少なくとも自分は不快感が残りました(一族郎党皆殺しが合わないだけかも知れない)
ざまぁを書くにもかなり高度なバランス感覚が必要なのだなと痛感した次第。
もしかしたら……
バランスの悪いざまぁ作品を読んで、「私ならこうする! 私ならもっと良いざまぁを書ける!」と思った作者様がさらなるざまぁ作品を生み出していく。読者側も、「もっと良いざまぁを読みたい! こんなざまぁじゃ物足りないor酷すぎる!」と思ってさらなるざまぁ作品を求める……という循環が発生しているのかも。
好循環か悪循環かは分かりませんが。
こういうことを考えると、自作品の「かいおし!」こと「解雇寸前だけど、推しに補佐されながら立ち直ります!」の展開が今更心配になってきた……
特に第2章、あいつクズ野郎でしかないんだけど、どう考えてもきちんとざまぁ出来てないよな……ヒロインを救出は出来たけど。い、いや大丈夫なはず! タグに「ざまぁ」はつけてないし!!
やはりこれは現実を舞台にした作品の限界ですね。現実の人間を現実で相手にするからには、現行法に触れない程度にやるしかないので。
第4章の化物どもは散々いたぶられた分、思う存分ぶった斬ってやりましたがw