隣の部屋の壁をぶち破って泣き喚きたかった
姉に
こういう妹がいると大体のことを文にされてしまうんだよ
でも今まで一度だって書きむしろうとは思わなかったな
血が出てきたら怖いし
殴られるのはもっとイヤ
夜中にドンドンうるさくしてさ
キリキリきりきり刃物も擦れて
女の悲鳴と癇癪が二人分 洗濯機みたいに家の中で混ぜられてるんだ
よくおかしくならなかったと自分を褒めてしまうな 頭がね
おかしくなってたのかもしれないけど
でも生きられてる
大体のことが隣の部屋で起こってて
壁なんてちっとも防音しないオブラートでさ
そのくせ爪を立てたって破けやしないんだぜ
開ければ良かったのに 弱虫
中に薬でも入ってたらもっと良かったんだけど
部屋の中は毒しかなくって
歩いていたら死んでいただろう
死ぬか死なれるか殺すか殺されるかみたいなところがあって
親父のことはどうでもいいんだけど
ただ母さんはいつでもあなたの味方で 一緒に病んでて あなたと死にたがってたから
寂しかったんじゃないかと思うんだ
楽しくもないのに大声を上げて笑ったりしてさ
今思えば自分の笑い声で掻き消そうとしてたのかも
洗濯機の中でね
もう服は乾いたんじゃない
お薬の時間だ