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異能科講師の指導要領  作者: 餅月
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新任教師、初の生徒指導

今回は前回の解決編だけになっております。すみません…。

生徒同士の一悶着があった日の放課後。

場所は生徒指導室。生徒指導担当の俺が1番に利用する場所だ。

「ささ、入りなさいな。あ、なんか飲む?お茶かコーヒーなら飲み放題らしいぞここ。さすが日本一の異能力者育成学校だなー」

ここは名の通り生徒の指導を行う場だ。

将来に対して不安を抱える生徒の相談に乗る、そして、問題を起こした生徒に対し、自分の行ったことをしっかりと理解させ反省させる、それが目的である。ちなみに、ここには緑茶紅茶のティーパック、コーヒーメーカー等が設置されており、利用する際は飲み放題となっている。

他にも、この学校では異能力者用の特設ステージの設置や、学校専用の医療センター、1Kの学生寮、など、学生に向けた手厚いサービスが多い。

生徒指導室のドリンクのサービスも同じものである。


そして本日、指導が必要な生徒が来ている。

初めての生徒指導である。最近初めての経験が多すぎて心労が。

生徒を招き入れ、何か飲むかと聞いたが、返答は一切ない。

その代わりに、黙ったままずっとこちらを睨んでいる。

「何も飲まんか。まぁいいや、そこ座ってくれ」

部屋の真ん中に設置された大きな机とオフィスチェア。それに座るように促す。

自分用のコーヒーを入れ、ミルクと砂糖を足してかき混ぜる。

完成したものを持ち生徒と向かい合うように座る。

「さて、悪いな。わざわざここまで来てもらっちゃって。えーっと、火山(ひやま)灯也(ともや)くん?」

それが俺の目の前の生徒の名前だ。


1年2組、火山灯也。

異能力は、「手から火を発生させる能力」。

火を纏った手での戦闘が行える。中々いい能力だ。

場合によっては、手から火を発生させるだけでなく、発生させた火を飛ばすことも出来るだろう。

いや、今後の成長次第ではそれ以上に大きく化ける可能性もある。

中学の成績表を見たが、案の定そこでも評価はそれなりに高い。


「・・・なんだよ」

相当イライラしているようだ。目が怖い。

「そんな睨まんでくれよ。こっちも仕事でやってたんだしさ。それに、そもそも君が校則を破ったからこうなったんだぞ?そこんとこちゃんと理解出来てるか?」

「・・・・・はい」

「それに、能力者、無能力者で差別して馬鹿にするなって、習ってきたはずだよな?異能力は現状、発現させる方法が分かってない。この学校だって、異能力を伸ばすことはできるが、発現させる方法があるとは言えない。この学校にいる過程で、何かしらのきっかけで、能力が発言したことはあるらしいけどな。つまりは偶然。たまたま能力が目覚めたってだけ。異能力者と無能力者の違いなんてそれだけだ。誰だって異能力者になれる可能性がある。それなのに、自分が能力者で、喧嘩してたあの子が無能力者だからって、馬鹿にして、挙句には手ぇ出そうとした。これがどれだけ間違った事だか分かってんのか?」


「・・・チッ、分かってますよ。だからこうやって、ここにいるんじゃないっすか。ちゃんと反省してますよ。だから早く俺の能力返してくださいよ」


全く納得してないが、とりあえずこの場は従っとくしかない。

そういった考えが露骨に現れていた。演技する気すらないとは恐れ入った。


「はぁ・・・。どうやら反省してねぇみてぇだな。」


脅す気はないが、舐められないようにと声音を低くしてみる。

効果があったようで、火山はビクッと体を硬直させる。

「半日無能力者でいれば分かるかと思って能力没収したが、全く分かってねぇみたいだな。どうする?このままずっと能力奪われたまま過ごすか?」

明らかに顔色が変わっている。能力が返ってこないとは想定してなかったのか。

「おい、聞いてんのか?このまま一生、お前が馬鹿にしてた無能力者として生きてくのかって聞いてんだよ。何とか答えろ」

まぁ一生ってのは無理なんだけどな。俺の能力で奪った能力は、最大で12時間しか保持できない。時間が経てば自動的に元の持ち主に能力は戻っていく。

しかし、そんなこと知る由もない火山は、顔をどんどん青くしていく。さすがに脅しすぎたか。

あんまやり過ぎると問題になるから注意しろって、教頭に口酸っぱく言われてたな。

でもこれだけはしっかりと分からせないとならねぇ。俺には教師ってのがまだ分からんが、そうするべきだと思う。

「はぁ。あのなぁ、何か言ってくれんと分かんないだろー?」

相当ビビってるのか、火山は俯いたまま顔をあげず固まっていた。

こちらの言葉も届いていないのかもしれん。

後ろに回り両肩に手を置くと、ビクリと身体を跳ねらせる。

「大丈夫?ちゃんと聞こえてるか?」

問いかけにも答えず、ただただ沈黙。

「まぁなんだ、能力はもう返すからそんな心配すんな。」

「っ!?」

俺の言葉に、勢いよく顔を上げ振り向く火山。何故だ?と目が語っている気がする。

「元々、お前がしっかりと自分の行いを反省してりゃ返す予定だった。今の時間でお前は反省こそしてないものの、後悔はしてたみたいだしな。だから今回はこれで許してやる。明日喧嘩してた彼に謝っとけよ?あと、別に全部チャラって訳じゃねーぞ?これからの行動次第じゃ、今度は許してやれないかもしれんからな?」

「・・・・・はい、すいませんでした」


これにて一件落着。完全にこちらを舐めきっていた火山くんが、最後にはちゃんと謝った。しっかりと改心してくれていることを祈ろう。

今回のことで、やはりこの学校の生徒が異能力をどのように認識しているかが少しだが分かった。

今まで異能力があるからこそ認められた経験も多いことだろう。というか、異能力が一般的になってきた時代に生まれた子達では、異能力で評価されてきた経験しかないのかもしれない。

認められ今の自分の大部分を作ってきたものが、1つの過ちによって誰とも分からん奴にいきなり奪われ、一瞬で手元から無くなるんだ。そりゃ死ぬほどビビるに決まってる。

そんな世界だからこそ、持たざる者は異能力を求め、持つ者はそれだけで自分は優れている、そう考えるのかもしれん。

能力なんざ、なけりゃみんな等しくただの人間だってのに。


はぁ、今日は色々あったし、火山の能力をずっと持ったままだったからすごい疲れた。

こんなん毎日続いたら死んでしまうぞ。

教師生活始めてまだ1ヶ月も経ってないが、この仕事選んでホントに良かったのか、という疑問が早々に湧き出てきた。

まだ本格的な授業すら始まってないっていうのに・・・。

前途多難過ぎる・・・。


ここまで読んでくださりありがとうございます。

次の話では本格的な話に入っていきたいなと思っています。

次回も読んでいただけるとありがたいです。

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