オオカミの友達の居る森
「──良かった。これで帰れるみたい」
風が作ってくれた道を見て、オオカミは安堵します。
「もう、……帰っちゃうんだな」
リスはオオカミに、一緒に居て嬉しかったと云われた事が忘れられず、彼と離れる事に名残惜しさを感じていました。
「……うん」
オオカミもリスと別れる事が名残惜しく、それでも旅立つ事に頷きます。
「帰り道探し。手伝ってくれて、どうもありがとう」
彼は改めて、逆さ虹の森の動物達にお礼を云いました。
「いいや、当然の事をしただけだよ。困った者は助けないとね」
クマは頷いて答えました。もう怖がりの影は見当たらなくて、クマ本来の頼もしさを感じます。
「とても楽しかった。またこの森に来たい」
オオカミは逆さ虹の森での冒険が楽しかったそうで、その森の世界を名残惜しそうに感じていました。
「……この森にまた来ても良い?」
オオカミは、逆さ虹の森の動物の皆に向けて云いました。
それに動物達は皆、笑顔で頷きます。
「いつでもお出で、オオカミ君。次に会う時はもう友達同士だ。一緒に何処へでも遊びに行けるさ」
彼の言葉にキツネが代表して答えました。
「何言ってるのさ、キツネ。オオカミ君とは、もう友達だろ!」
「……そうだったね」
リスの思いにもよらない言葉にキツネは少し驚きましたが、また笑って頷きます。
「友達……」
「そう! おいら達は友達、なんだよ!」
リスはその事に胸を張って云います。彼はオオカミと友達であると、本人がどう思っているか否かでも、そう思う事が嬉しいのです。
「良かった……。僕が、勝手に。そう、思ってた……だけだと、思ってたから……」
オオカミは言葉を震わせて、涙を流していました。
「おいおい、考えてた事がお互い様だったなんて、泣かせてくれるな!」
「あははっ!」
リスの言葉に、その場に居る動物達の皆は笑いました。
涙を流してたオオカミも、皆の笑いを自然と受け取ったのか、同じく笑いました。
「……じゃあ、そろそろ行くね。またね」
笑い疲れたところで区切りに、オオカミはそろそろ旅立とうとします。
「……またな!」
リスはオオカミに向けて、精一杯の声で別れの言葉を叫びました。
それにオオカミはリスの居る方へ一度振り向くと、笑顔で頷いて応えます。これから進む先へ向き直ると、逆さ虹の森に住む動物の皆に見送られながら、元の森へと旅立ちました──。
※ ※ ※
元の森に無事に帰り着くと、お父さんとお母さんにこれまでの冒険の話と、新しく出来た友達の事を沢山話します。
そして、その思い出という話に新しいページを書き加えに、また逆さ虹の森へ遊びに行く様になりましたと。