逆さまな虹の見える森
その昔、大きな森がありました。
森は沢山の木が生い茂っている為、空が中々見えにくいのですが、木々の隙間からは大きくて立派な虹が一つ架かっているのが見えるのです。
その虹が何故か逆さまで架かっている事から森は、
──"逆さ虹の森"と呼ばれたそうな。
※ ※ ※
森の細い獣道のど真ん中で、一匹の子供のオオカミが立ち尽くしていました。
オオカミは好奇心旺盛で、知らない事をよく知りたがる為に、知らない場所でもどんどん先に進んでしまう癖があったからです。
その為にオオカミは迷子になっていました。
「此処は何処なんだろう……?」
森の中なので左右どちらを向いても、それぞれ長さがちょっと違う木ばかりです。しかしそれだけで何処なのかを判別するのはとても難しいでしょう。
「……」
そんな彼を木の上から一匹の小さな動物が見ていました。
この森に住んでいる、いたずら好きのリスです。
見慣れないオオカミだ、どうしよう……と、リスはオオカミの様子を見守りながら、これからどうしようか考えます。
オオカミが子供であっても、他の動物からは恐れられている様でした。
イタズラしちゃおうかな? 何やっても相手はオオカミなんだから、いざとなればやっつけちゃっても大丈夫だろうと、リスは少し悪そうな笑顔を浮かべている事だと思います。
そう思いきや、意外にも勇敢な眼差しで見ているではありませんか! それは特に悪気がある訳でも無く、リスの様な小さな生き物にとっての正義からの目でした。
先ずは、森の皆に報せなくちゃ!
リスは早速オオカミより先回りして、森に住む他の動物達に彼が居るのを報せる事にします。